今年も2月9日(水)から「[座・高円寺]ドキュメンタリーフェスティバル」が5日間にわたって催されます。13回目になります。
テーマは「“忘却”について」。記憶することや記録することの意味が問われているドキュメンタリーにとっては、逆側からのテーマに思えますが、きっと「忘れないこと」「忘れてはならないこと」を、映画を通して考えていこうとしているのでしょう。
作品ごとのトークイベントも多彩です。
この「シネマde憲法」の欄に掲載した4つの作品も上映されるので、併せてご紹介させていただきます。
と き:2022年2月9日(水)~ 13日(日)連日11:30~
ところ:座・高円寺2(高円寺駅北口を出て5分)〒166-0002 杉並区高円寺北2-1-2 地下2階
1回券前売り¥1,300|当日券¥1,500
主催・お問合せ:「座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」実行委員会
TEL:03-5570-3551
MAIL:za.koenji.documentary@gmail.com
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【プログラム】
2月9日(水)
11:30 『阿賀の記憶』
13:40 『水俣一揆 ─ 一生を問う人々─』
16:30 『燃え上がる記者たち』
19:15 『NNNドキュメント’14「反骨のドキュメンタリスト大島渚『忘れられた皇軍』という衝撃」』
2月10日(木)
11:30 『荒野に希望の灯をともす』
14:00 『二重のまち/交代地のうたを編む』
16:30 『筑紫哲也NEWS23「沖縄の基地なんか知らないよ~ 東京・渋谷にて」
「詩人・山之口貘がよみがえるのだ」「きみはコザ暴動を知っているか」』
18:45 『抽象・家族』
2月11日(金)
11:30 『Happy Ainu/明日、声が溢れる/THE BUTTERFLY』
13:30 『記憶の戦争』
16:00 『尾崎豊を探して』
18:40 『ゲッベルスと私』
2月12日(土)
11:30 『現認報告書 羽田闘争の記録』
13:30 『いまはむかし 父・ジャワ・幻のフィルム』
16:10 『東洋の魔女』
19:00 『理大囲城』
2月13日(日)
10:00 コンペティション部門入賞作品上映
18:40 『きわめてよいふうけい』
20:00 コンペティション部門表彰式/閉会式
【作品解説】
2月9日(水)
11:30~ 上映 | 12:25~ 上映後トークイベント
『阿賀の記憶』
監督:佐藤真 2004年|55分|カラー
恒例のカメラマン特集は、故・佐藤真監督作品でカメラをつとめた小林茂。デビュー作『阿賀に生きる』から10年。二人は再び阿賀の地へと向かう。かつて映画に登場した人々の多くは世を去り、荒れた田畑や主を失った家屋が残されるなか、映画作りや人々の「記憶」や「痕跡」を求め、カメラは回り続ける。
上映後トークゲスト : オンライン参加:小林茂(本作カメラマン) / 山崎裕(プログラムディレクター)
13:40~ 上映 | 15:30~ 上映後トークイベント
『水俣一揆 ─ 一生を問う人々─』
監督:土本典昭 1973年|108分|モノクロ
1973年3月。熊本地裁判決で、水俣病におけるチッソの加害責任が明確にされ、慰謝料の支払いが命じられるなか、患者たちは生涯にわたる医療と生活の保証を求め、チッソ本社に乗り込んだ。人間と人間の向き合いを求めた息詰まる直接交渉の記録は、ジョニー・デップの主演の映画『MINAMATA』のモデルにもなった。
上映後トークゲスト : 山上徹二郎 (映画プロデューサー)
16:30~ 上映 | 18:05~ 上映後トークイベント
『燃え上がる記者たち』
監督:リントゥ・トーマス、スシュミト・ゴーシュ 2021年|93分|カラー|インド
インド北部で、被差別カースト「ダリト」の女性たちがニュースメディアを立ち上げる。覚えたてのスマートフォンを片手に粘り強く取材相手に迫り、大手メディアが取り上げない不正や性暴力の問題をウェブで発信し、影響力をつけていく様を、彼女たちのコミュニティや現場での奮闘を通して描いた話題作。
上映後トークゲスト : 望月衣塑子(東京新聞記者)
19:15~ 上映 | 入れ替え | 20:20~ 上映後トークイベント
NNNドキュメント’14「反骨のドキュメンタリスト大島渚『忘れられた皇軍』という衝撃」
19:15~ 上映 | 入れ替え | 20:20~ 上映後トークイベント
ディレクター:鈴木あづさ 2014年|46分|カラー|日本テレビ
2013年1月に世を去った大島渚が、1963年、日本テレビの「ノンフィクション劇場」で手がけた『忘れられた皇軍』。補償なき在日韓国人傷痍軍人の街頭活動に強い憤りを持って迫る大島のカメラは何を告発しようとしていたのか。妻・小山明子や当時のスタッフの証言を軸に、是枝や田原総一朗らと検証する。
上映後トークゲスト : 是枝裕和(映画監督) 鈴木あづさ(本作ディレクター) 大島新(ドキュメンタリー監督)
2月10日(木)
11:30~ 上映 | 13:00~ 上映後トークイベント
『荒野に希望の灯をともす ~ 医師・中村哲 現地活動35年の軌跡~ 』
監督:谷津賢二 2021年|88分|カラー
2019年12月、突如凶弾に倒れた医師・中村哲。パキスタン・アフガニスタンで35年間、医療支援のみならず用水路建設にも取り組み、干ばつに苦しむ砂漠を肥沃な土地に変え、人々の生きる場所を作っていった。残された1000時間の映像記録や文章から、中村の現地での実践や思索を読み解く。
上映後トークゲスト : 谷津賢二(本作監督)
シネマde憲法『荒野に希望の灯をともす ~ 医師・中村哲 現地活動35年の軌跡~ 』
14:00~ 上映 | 15:20~ 上映後トークイベント
『二重のまち/交代地のうたを編む』
監督:小森はるか+瀬尾夏美 2019年|79分|カラー
2018年、岩手県陸前高田市を訪れた4人の若者たち。津波が壊したかつての町を知らない彼らは、人々の声に耳を傾け、対話を重ね、嵩上げされた2031年の陸前高田に暮らす人々を想像して描かれた物語「二重のまち」を朗読する。他者の話を聞き、伝え、語り直すことで立ち上がる、新たな“継承”の試みの記録。
上映後トークゲスト : 小森はるか(本作監督) 瀬尾夏美(本作監督)
16:30~ 上映 | 入れ替え | 17:30~ 上映後トークイベント
「筑紫哲也NEWS23『沖縄の基地なんか知らないよ〜東京・渋谷にて』」
1998年|18分|カラー|TBS 取材:金平茂紀 映像提供:TBSテレビ
「筑紫哲也NEWS23『詩人・山之口貘がよみがえるのだ』」
1998年|13分|カラー|TBS 取材:金平茂紀 映像提供:TBSテレビ
「筑紫哲也NEWS23『きみはコザ暴動を知っているか』」
1997年|12分|カラー|TBS 取材:金平茂紀 映像提供:琉球放送
平成を代表する報道番組であり、金平も8年にわたり編集長をつとめた「筑紫哲也NEWS23」から、とりわけ筑紫や金平が関心を寄せた沖縄関連のVTRを特別に上映。沖縄出身の詩人・山之口貘の特集をはじめ、問題の表層のみならず、沖縄出身者の心情や本土と沖縄の意識の落差にも斬り込んだ3本。
上映後トークゲスト : 金平茂紀(ジャーナリスト)
18:45~ 上映 | 20:35~ 上映後トークイベント
『抽象・家族』
監督:田中功起|2020年|110分|カラー|日本・シンガポール
共に海外にルーツを持つが、出自も性別も年齢も異なる4人が、ひとつ屋根の下で「家族」を形成し「外国人」とみなされる日本で生活する悩みを打ち明ける。スタジオでは抽象絵画を制作し、フィクションとリアルが交錯する空間で協働する彼らが問うものは?2020年のベルリン国際映画祭でも上映された意欲作。
上映後トークゲスト : 諏訪敦彦(映画監督) 田中功起(本作監督)
2月11日(金)
11:30~ 上映 | 12:20~ 上映後トークイベント
Happy Ainu/明日、声が溢れる/THE BUTTERFLY
監督:山田裕一郎 2020年|11分|カラー(Happy Ainu)
監督:高島太士 2019年|10分|カラー(明日、声が溢れる)
監督:深田志穂 2019年|11分|カラー(THE BUTTERFLY)
※他、3分の短編ドキュメンタリー3本を併映
若手を中心に、様々な映像作家が結集する短編ドキュメンタリーの配信フォーム「Yahoo!JAPAN CREATORS Program」からセレクトした3本。アイヌの集落で育った娘の伝承をめぐる葛藤や、元妻と育てた3人の子供を想うトランスジェンダーの女性、生きづらさを告白する若者たち…彼らの姿から、日本の“いま”が見える。
上映後トークゲスト : 山田裕一郎(本作監督) 高島太士(本作監督) 深田志穂(本作監督) 金川雄策(Yahoo!JAPANCREATORSProgram短編ドキュメンタリー部門責任者)
13:30~ 上映 | 14:50~ 上映後トークイベント
『記憶の戦争』
監督:イギル・ボラ 2018年|79分|カラー|韓国
ベトナム戦争下の1968年、中部フォンニィ・フォンニャット村で、派兵された韓国軍兵士により発生した民間人虐殺事件。その生存者たちに、ベトナム参戦経験のある祖父を持つ韓国人監督が向き合う。生々しい記憶や心の傷に耳を傾け、“加害の歴史”をどう受け止めるのか。冷静なカメラワークが光る。
上映後トークゲスト : イギル・ボラ(本作監督)
シネマde憲法『記憶の戦争』
16:00~ 上映 | 17:35~ 上映後トークイベント
『尾崎豊を探して』
監督:佐藤輝 2019年|95分|カラー
1992年26歳で夭折し、30年近く経った今もなお聴き継がれている歌手・尾崎豊。“十代の教祖”と呼ばれた彼の歌は何を伝えようとしていたのか。尾崎とも親交のあった伝説の映像作家・佐藤輝が、1981年の初ライブから何気ない日常まで、400時間にも及ぶ尾崎の映像の断片を丹念に拾い集め、放った執念の一作。
上映後トークゲスト : 佐藤輝(本作監督)
18:40~ 上映 | 20:35~ 上映後トークイベント
『ゲッベルスと私』
監督:クリスティアン・クレーネス、フロリア・ヴァイゲンザマー、オーラフ・S・ミュラー、ローラント・シュロットホーファー
2017年|113分|モノクロ|オーストリア
第二次世界大戦中、ナチスの宣伝相ゲッベルスの秘書として3年間働いたブルンヒルデ・ポムゼルが、終戦後69年の沈黙を破って当時を語る。“ホロコーストについては何も知らなかった”と言葉を選んで語るポムゼルの証言に様々な資料映像が重なり、全体主義下で抑圧された人々の人生が浮き彫りにされる。
上映後トークゲスト : オンライン参加:クリスティアン・クレーネス フロリアン・ヴァイゲンザマー (本作監督) / 有田浩介(本作配給)
シネマde憲法『ゲッベルスと私』
2月12日(土)
11:30~ 上映 | 12:30~ 上映後トークイベント
『現認報告書 羽田闘争の記録』
監督:小川紳介 1968年|58分|モノクロ
1967年10月8日、時の首相・佐藤栄作のベトナム訪問を阻止しようと、羽田空港周辺で機動隊と学生らが衝突、京大生山崎博昭が死亡する。彼の死は「事故死」か、権力による「殺人」か?証言や検証で真相に迫る作品を、昨年山崎と仲間のその後を描いた映画『きみが死んだあとで』を監督した代島治彦と共に観る。
上映後トークゲスト : 代島治彦(映画監督) 北井一夫(写真家)
13:30~ 上映 | 15:00~ 上映後トークイベント
『いまはむかし 父・ジャワ・幻のフィルム』
監督:伊勢真一 2021年|88分|カラー
伊勢真一の父であり、記録映画の名編集者として知られた伊勢長之助は、第二次世界大戦中、「文化戦線」の一員としてジャワ島に派遣され、プロパガンダの国策映画を作っていた。父の足跡や製作した幻のフィルムを娘や息子と共に辿りながら、戦争を撮ることと、それを受け継ぐことの意味を探る。
上映後トークゲスト : 伊勢真一(本作監督)
シネマde憲法『いまはむかし 父・ジャワ・幻のフィルム』
16:10~ 上映 | 17:50~ 上映後トークイベント
『東洋の魔女』
監督:ジュリアン・ファロ 2021年|100分|カラー|フランス
1964年、1回目の東京オリンピックで金メダルを獲得した女性バレーボールチーム「東洋の魔女」にフランス人監督が迫る。猛特訓で鍛え抜かれた彼女たちに、なぜ日本中が熱狂したのか?当時の記録映画やアニメ『アタックNo.1』など、膨大なフッテージに彼女たちの現在の姿を織り交ぜ、その秘密を解き明かす。
上映後トークゲスト : オンライン参加:ジュリアン・ファロ (本作監督)
19:00~ 上映 | 20:30~ 上映後トークイベント
『理大囲城』
監督:香港ドキュメンタリー映画工作者|2020年|88分|カラー|香港
2019年11月の香港。民主化を求める若者と当局の対立が激化するなか、香港理工大学のキャンパスが警察に包囲され、デモ隊は籠城を余儀なくされる。長期化する封鎖に学生は疲弊し、やがて白旗を挙げる者も現れる。銃口を向けられ緊迫するデモ隊を内部から捉えた匿名の映像が、息苦しい香港の現状に重なる。
上映後トークゲスト : 森達也(映画監督、作家)
2月13日(日)
10:00~ 上映 │20:00~ 表彰式
「コンペティション部門入賞作品上映」
18:40~ 上映 | 19:25~ 上映後トークイベント
『きわめてよいふうけい』
監督:ホンマタカシ 2004年|43分|カラー
1960-70年代、先鋭的な作品や評論で時代の先端を駆け抜けた写真家・中平卓馬。1977年、酒が原因で昏睡状態に陥り過去の記憶を失うが、再び写真を撮り始め、2015年に亡くなるまで精力的に活動を続けた。2000年代の中平の日常を穏やかに映し出したポートレート・ムービーを、追加ショットを加えたバージョンで上映。
上映後トークゲスト : ホンマタカシ(本作監督)