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「族譜」再演に寄せて −歴史が伝えること

2011年5月9日


船津基さん(青年劇場・俳優)


 東日本大震災から50日が過ぎた時にこれを書いています。全国の演劇人達はこのタイミングで演劇をやるべきなのか、周囲を伺いつつも自分達なりに考えていました。しかし早い段階で「こんな時だからこそ文化を、演劇を」と次々に演劇公演に乗り出しました。青年劇場でも5月13日の『族譜』(梶山季之=原作/ジェームス三木=脚本・演出)の上演を、被災した方々を招待する形で支援していく事を決め、「東日本大震災復興支援公演」と位置づけました。

 『族譜』は、原作者の梶山季之が朝鮮で過ごした体験を元に書かれた作品です。2006年に初演、その後東京では2回の再演を行い、さらに08年からは全国巡演も行ってきました。昨年からは新たなキャスティングを配し、作品の完成度を高める工夫をしてきました。その甲斐あって、子ども役たちの溌剌とした朝鮮舞踊や遊び等、ジェームス三木さんならではのユーモアあふれる脚本改訂によってメリハリのある作品になったという評価と同時に、統治下における虐げられた民族性がより印象づけられる舞台になったとの感想もいただいています。とくに「日韓併合100年」であった昨年に、多くの方々にこの舞台をご覧いただけた事は非常に有意義であったと思います。

 舞台は1935年、日本(大日本帝国)が統治していた頃の朝鮮半島。京畿道庁の役人、谷六郎は朝鮮総督府が掲げる内鮮一体政策の名の元に、朝鮮人に対する"創氏改名"を推し進めていきます。しかし大地主、薛鎮永(ソル・ヂニョン)は700年間続いた姓を自分の代で変えることは出来ないと言い、改名を拒み続けます。二人の葛藤がこの作品の軸の一つになっています。私は谷の上司で課長の平田という役人を演じています。平田は谷とは違い、威圧的に改名させようとする人物です。

 思えば私は、"俳優"という職業を通して、様々な人々、偏見や差別といった存在を知る機会を与えられています。例えば私は『弁護士・布施辰治』という映画作品に出演していますが、その時に演じたのは朴烈という無政府主義者の朝鮮人の役でした。俳優は、役作りの上でその時代背景を勉強し調査するという、文字通り〈歴史を学ぶ〉ことが欠かせません。『族譜』を観た方の中には、過去に「そんな事があったとは知らなかった」という感想を述べる方が多くいます。若い人達だけでなく、戦時中に生まれた世代の方ですら時々います。現在においても、通名と呼ばれる日本名を持つ在日朝鮮・韓国人の存在を知った時、そしてその裏で様々な差別の存在を知った時、更に自分自身もその社会の中にいる一人なのだと気づいた時、改めて歴史は、現在と未来の自分に常に「何故」を問いかけているのだと気づきます。
 結局、歴史を学ぶということは、同時に〈現代を学ぶ〉ことでもあるのです。「歴史を振り返らない者に未来はない」。この言葉の持つ意味を、役づくりを通して、そして舞台を通して、考え続けていかなければならないと思っています。

 谷六郎はごく普通の日本人です。心の優しい、善良な日本人が精一杯の優しさで、朝鮮人を日本人に「変えてあげよう」と努力するわけです。僕の演じる平田も、言ってみれば役人としての仕事を真面目にこなしているのです。これが怖いところなのだと思います。国家の政策を鵜呑みにし、または不本意のまま流されていく事は本当に怖い事なのだと、この作品を通して実感しました。現代においてもその流れを感じることが多々あります。言論の自由が封殺され、思想信条の自由が脅かされそうになった時、歴史は「もっと声を出せ」と我々に伝えているように思えてなりません。

【東日本大震災復興支援公演】
☆『族譜』
 【原作】梶山季之
 【脚本・演出】ジェームス三木= 
 【日時】5月13日(金)14時/19時 
 【会場】前進座劇場
     アクセス
 【お申込み】こちらから 
       詳しくはこちら
 【青年劇場】こちら
 【お問合せ】TEL03-3352-7200
       info@seinengekijo.co.jp
                    
○観劇料金の一部を義援金として日本赤十字社等へ送ります・
○都内近郊にて避難生活を余儀なくされている被災者の方を各ステージ50名ずつご招待致します。

◆船津基(ふなつもとい)さんのプロフィール

東京都あきる野市出身。日本大学芸術学部演劇学科卒業後、1993年青年劇場入団。
特技・殺陣。
青年劇場での主な出演作品「シャッター通り商店街」榎昇、「銃口−教師・北森竜太の青春」北森竜太、「GULF−弟の戦争−」アンディ。他にドキュメンタリー映画「弁護士・布施辰治」朴烈、NHKドラマ「堀部安兵衛」佐次兵衛、など。





 
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