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今週の一言

 

フォーの店「ハノイのホイさん」渋谷にオープン!
〜世界の人たちと大いに語り合おう(後編)

2011年6月20日


佐藤安信さん(東京大学教授) 伊藤真さん(法学館館長・法学館憲法研究所長) カオ・ミン・ティさん(弁護士/長島・大野・常松法律事務所) グエン・ティ・ホアイ・トウさん(大学生・アルバイト) グエン・クォク・フイさん(大学生・アルバイト) 蛭田忠文さん(株式会社法学館)


前編からの続き)

◆「人間の安全保障」プログラム

―――このお店は、法学館が理念として掲げている「憲法価値の実現」、すなわち「人権の尊重」を実践する場でもあります。留学生、あるいは難民・移民というマイノリティの基本的な権利を保護し、能力開発を支援すること。これは「人間の安全保障」という考え方によるものですね。東京大学では、佐藤先生が「人間の安全保障」プログラムを担当しておられます。これはどんなプログラムなのでしょう。

(佐藤)固い話で恐縮ですが、ベトナム戦争のとき、弾薬を積んだ米軍機が沖縄の基地から飛び立ちました。ベトナムの人にとって、沖縄は「悪魔の島」でもあるのです。日本はベトナムに軍を派遣した韓国を非難できる立場にいられるわけではありません。第2次大戦の際には日本軍はベトナムに侵攻して1年ちょっとの間支配しました。あまり知られていないことですが、その間に2百万ものベトナム人が餓死したともいわれています。日本兵の食糧を調達するために、農民から強制的に食糧を徴用したからです。馬の世話をちゃんとしないで死なせたということで、日本兵がベトナム人の馬の世話係の人夫を、その死んだ馬の腹を切り裂いて内臓を取り去り、そこに入れて縫い合わせて殺したという話もベトナムの友人から聞きました。しかし、ベトナム人は一般には日本人を非難することはありませんね。その後ベトナム戦争というもっとひどい戦争があったので日本人の蛮行はかき消されている面もあります。むしろ、日本の戦後復興などで日本人を尊敬し、今はとびきりの親日国ですらあります。でも、このような事実があったということは、日本がベトナムと付き合う時には記憶して配慮すべきことだと思います。
 「人間の安全保障」というのは、決して外に向かって言うことだけではなく、日本がしてしまった過ちをきちんと考えたうえで平和を創っていくということだと思います。日本人を一等国民として「大東亜共栄圏」をアジアに建設し統一しようとしたメンタリティと決別しないとアジアの民衆には信用されないでしょう。今の中国にも言いたいことですが、経済発展したからといって他の国の人たちを下に見るような形でやっていくのは、その国の人たちにとっても決していいことではありません。
 「人間の安全保障」という言葉は、国連が、冷戦後の軍事費削減を当て込んで、その予算を貧困削減のための開発に回すべきだという議論から使われ始めました。日本政府が「人間の安全保障」という言葉を特に使い出したのは1990年代末のアジア経済危機の時からです。当時は開発援助ならばODAからお金を出せたのですが、経済危機のために資金を提供することは開発援助ではないので、税金を使ってアジアの国々を緊急支援するために新しく「人間の安全保障」という言葉を使い始めたというのがきっかけでもあります。つまり、日本にとっては、「人間の安全保障」は、そもそも、アジアの人々を貧困と紛争から解き放ち、人権を保障し国境を越えた人々の協力を推進するための非常に大切な価値概念として始まったのです。

―――佐藤先生はベトナムからの留学生に対する日本法教育にも携わっておられます。

(佐藤)私は弁護士をしていた1992年から93年にかけて1年あまりの間カンボジアにいて国連の平和維持活動(PKO)である暫定統治機構(UNTAC)に参加し、この国で起こった大虐殺を繰り返すことなく平和を創るためには、法律や法律家が必要であると確信して日本に戻ってきました。その後、金融を使って経済活動をしていくことがこの時点では大事だと思いビジネス法務にも携わり、名古屋大学では商事紛争処理を教えました。名古屋大学にはベトナムやカンボジアなどからの留学生が多く、日本法教育研究センターの立ち上げにも関与しました。その後東大に移ってからは、ベトナムやカンボジアなどの特に教え子を個人的にバックアップする形でコミットしています。

◆日本とベトナムの懸け橋に

―――カオさんは、どんなお仕事を目指していらっしゃるのですか。


(カオ)私の両親とも庶民の出身で奨学金で日本に留学に来ていました。日本に来る前のベトナムの生活は大変厳しかったようです。私が小学生のときはベトナムは世界の最貧国で、夏休みなどに両親に連れられてベトナムに行くことが多かったのですが、そのたびにショックを受けていました。当時の日本ではベトナムに必ずしもよいイメージはないようでした。しかし、その後ベトナムではドイモイが始まり経済発展し私もベトナム人として自信が持てるようになりました。私が高校生くらいの時にベトナムに行ったら活気が感じられました。人間が幸せになり成長するためには、ある程度の物的な豊かさが前提になると思います。経済活動がしっかりするためには、法の支配や法治主義、つまり法的安定性、公正な法律による予測可能性などが必要です。私は、将来的には日本とベトナムのビジネスに関わる法律問題に携わり、法的安定性を高めることに寄与し、経済発展に役立ちたいと思っています。それによってベトナムと日本の双方が豊かになり日本とベトナムとの関係も深まることに貢献して行きたいと思います。
 法律家を目指したのは、専門性を生かした自分の確固たるコアを持ちたかったからです。

―――留学生の皆さん、日本での生活はいかがですか。


(フイ)日本語が難しいのに困っています。日本人同士が話している際に聞き取れなかったりして、疎外感を感じることがあります。
ベトナムでは、中国や韓国の映画などは多いですが、日本の情報やニュースはあまりありませんでした。日本のイメージとして一番強いのは、商品の品質が良いことです。私が日本に来たのは、日本で経営の勉強をして、ベトナムで証券アナリストの仕事をしたいと思ったからです。

(トウ)日本語は本当に難しいです。私が日本に持っているイメージはマンガです。ドラえもんが好きです。私は日本で日本語の他、中国語、英語を学び、将来は日本で「ハノイのホイさん」のような飲食店で働きたいと思っています。

◆夢はふくらむ―食の文化を通して世界の人たちと大いに語り合おう

―――蛭田さん、開店して10日余りたちましたが、店頭に立っての実感はいかがですか。


(蛭田)毎日大勢の方にご利用いただき、ものすごく忙しいです。これは、ベトナムの文化と日本人の感覚が近いことを証明しているのではないかと感じています。相性が非常にいいんでしょうね。ベトナムが好きだというお客さんが多く、マッチングがうまくいっているのではないでしょうか。日本とベトナムはきっとうまくやれるという、将来性を感じますね。日本とベトナムとの文化交流という趣旨は実現しつつあると体感しています。渋谷界隈はアメリカ人も多いためか、アメリカ人のお客様もけっこう来店されます。西洋文化との融合も期待できます。そもそも、食というのは人類共通のものですし。

(佐藤)留学生の方は、アルバイトの際も含めて友達をたくさん作ってください。言葉の問題で一番大切なのは、使って慣れることです。言葉とは単に文法等だけでなくて文化の理解ですから、食べ物を通じて輪を広げるということは非常に素晴らしいですね。
多文化を目指しているわけですから、ミャンマー(ビルマ)やカンボジア料理などを含めて、イベントをやりたいですね。

(伊藤)食の文化を取っかかりにしながらお互いに学び合えることって、たくさんあると思うんですよね。自分が生活している世界と違う世界のことを知るということは楽しいことだし、平和的に共存していくうえで極めて重要な出発点かと思っています。カオ弁護士は塾生でしたが伊藤塾でスタッフとして働いていたことがきっかけで今の事務所でベトナム関係の仕事につくことができました。彼が指摘してくれたように、経済的な基盤を確立して、お互いのメリットになるような形で経済的な発展を進めることは、共存していくうえで極めて重要なことです。相手がいなければやっていけない、というネットワークをもっともっと張りめぐらして相互依存の関係ができれば、軍事力で脅して自国の安全を守る必要はなくなります。国家と国家の関係というのは非常に厳しい面があって当たり前ですが、人間同士というのは、食の関係を通じながら、もっと理解し合えると思います。多様性を認め合って相互理解をしていくものを、この店からいろいろ発信できたらいいな、と思っています。ベトナム料理のフォーのお店、という小さな取組みではありますが、夢は大きく可能性は無限にあるのだという気がしています。この店をきっかけにしながら、当初の目的であるベトナムや日本だけでなく、アジア、そしてもっと多くの人たちがここで交流し合い相互理解を深めて、ITとか法律とか、自分の専門分野を持って活躍する人たちが、一人でも多く増えてくれるといいですね。日本の若者たちは内向きの傾向がありますので、世界、特にアジアに出かけていって活躍してもらえるきっかけにもなると嬉しいです。おいしいフォーやベトナム料理を提供しますので、お近くにお出での際には是非、お寄りください。渋谷駅から2,3分で来れます。

―――皆さま、今日は大変ありがとうございました。

 (本座談会は、6月4日に実施されました。)

ハノイのホイさん」のご案内


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営業時間
月〜土  (毎週日曜日定休)
ランチ 11:30〜15:00
    ラストオーダー 14:30
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    ラストオーダー 
      フード  22:00
      ドリンク 22:30
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  海鮮のフォーガー
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  サイゴンスペシャル(ベトナムビール)
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