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今週の一言

 

「声をあげれば変わる」という感覚を取り戻すこと

2011年9月12日


河添誠さん(首都圏青年ユニオン書記長)


 個人加盟の労働組合の主な仕事は、解雇や賃下げ、賃金不払いなどの相談を受けて加入してもらった組合員の勤める会社に団体交渉を申し入れて交渉のなかで解決していくことだ。
 その多くは労働基準法など基本的な法律に違反したケースだ。ユニオンは、そうした違法行為をおこなっている企業に対して団体交渉などを通じて雇用を守り賃金を支払わせるといった成果をあげている。
 ただ、今の若い労働者の状況は、それにとどまらない失業や貧困にともなう困難も抱えている。
 2010年平均の完全失業率は5.1%、完全失業者数は298万人だが、15〜24歳の若年層でみると、2010年の完全失業率は9.4%となっている。若年層の方が4.3ポイントも高くなっている。また、2010年の非正規雇用労働者の比率は、全労働者の33.6%であるが、15〜24歳の若年層に限ると、男性労働者の41.6%、女性労働者の50.0%が非正規雇用だ。雇用環境の悪化は、すべての年齢層の労働者をおおっているが、若年層においては、その程度は甚だしく、失業率は高く、非正規雇用の比率もきわめて高い。この雇用破壊によって、若年層は深刻な貧困状態に追い込まれている
 現代日本で年収200万円以下しかない人は、2009年に1099万人となった。民間企業の給与所得者の24.4%だ。前年よりも32万4000人増えていて、1000万人以上を超えるのは4年連続だ。この10年間でみると296万人も増えている。多くの若年の非正規雇用労働者は、この層だ。
 ある20歳代の女性は、飲食店でパート店員として働いていたが、解雇され失業したために家賃を払うことが困難になった。一人で家賃を払うことが厳しい状況になってきたために、友だちとルームシェアしようと考えた。ルームシェアをすることで、家賃を折半して生活を楽にしようとしたのだ。しかしながら、引っ越しをする費用が手元にはなかった。そのために、彼女はサラ金から借金をして引っ越し費用を捻出した。貧困状態にある人が貧困から脱出するために借金をするという、なんとも奇妙で矛盾に満ちたことが起きている。
彼女は、その後、別の居酒屋で働いているが、次の給料日までの生活費が手元になかったために、月給制ではなく日払いで働くしかなかった。
 こうした場合、生活保護を活用すれば、生活を立て直せるのだが、若年で稼働能力のある人に対する生活保護の窓口対応は冷たく、生活保護の申請をさせないように誘導されてしまうことも少なくない。
 不安定な雇用の拡大と失業時の生活保障の弱さが、若い労働者の生活を脅かしている。
 こうしたなかで、若い人たちのなかに、自分自身を責めて孤独に陥ってしまう場合も少なくない。
 「自分たちが声をあげても何も変わらない」という無力感が若い人たちを覆っている。権利を主張すれば何かが変わるという感覚をどう取り戻すのか?これは大問題だ。原発問題が大変な状況だとしても、運動が活性化する回路が弱くなっているのが現状ではないのか? だとしたら、どうすればいいのだろう?それは単に机上の学習では取り戻せないと思われる。そうではなくて、ひとつひとつ不当解雇や賃金不払いなどの違法行為とのたたかいで小さくても勝つことを経験することが大切なように思う。そうした小さな経験の積み重ねがあってはじめて、声をあげれば変えられる」という感覚を取り戻すことが少しずつできていく。ともに支え合う仲間がいることで、自分の抱えている困難が自己責任によるものではなく、社会的な問題であるということに気づいていく。
 組合員が集まる会議では、いつも食事を一緒につくって食べている。みんなで作って、みんなでおしゃべりしながら食べながら会議は進む。みんなでワイワイと話しながら、次の活動方針を決めていく。この積み重ねの先に、きっと大きな運動の展望が開けていると確信している。

 実は、現在、首都圏青年ユニオンは財政危機に陥っており、その危機を突破するためのカンパを呼びかけています。また、首都圏青年ユニオンの財政を支えるための「首都圏青年ユニオンを支える会」という会もあります。詳細は以下のリンクを参照して頂きたい。若者の雇用、生活保障を打開する社会運動としての首都圏青年ユニオンの活動を支えて頂ければと思います。

首都圏青年ユニオン
首都圏青年ユニオン財政危機突破カンパのお願い(PDF)
首都圏青年ユニオンを支える会

◆河添 誠(かわぞえ・まこと)さんのプロフィール

首都圏青年ユニオン書記長。
1964年、東京生まれ。東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程中退。2000年、「ひとりでもだれでもどんな働き方でも入れる若者のための労働組合」首都圏青年ユニオンの結成に参加。2005年より、首都圏青年ユニオン専従者。2006年より現職。2007年、湯浅誠氏(NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局次長)とともに、ワーキング・プアのための互助ネットワーク・反貧困たすけあいネットワークの結成をよびかけ、現在、同ネットワーク代表運営委員。労働運動の情報ネットワーク・レイバーネット日本の共同代表。2011年より反貧困ネットワーク副代表。
若年非正規雇用労働者、失業者の支援活動を続けている。
著書は、湯浅誠と共編著『生きづらさの臨界』旬報社2008年11月刊、後藤道夫らとの共著『労働、社会保障政策の転換を—反貧困への提言』岩波ブックレット2009年1月刊、湯浅誠/一丁あがり実行委員会らとの共著『活動家一丁あがり!—社会にモノ言うはじめの一歩』NHK新書2011年3月刊など。




 
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