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映画「かすかな光へ」に携わって

2011年10月17日


森 康行さん(映画「かすかな光へ」監督)


大田堯さんとの出会い

 映画「かすかな光へ」の始まりは2006年、教育基本法改訂の反対運動が起きている真っ最中でした。
 教育研究者 大田堯さんが自宅で開いているサークル(サークルは教育関係者や市民、お母さん方、中国からの留学生、中小企業の経営者の方々など、それぞれ5つも行われている)の有志から「大田先生の映画を撮りたいのだが参加してくれ」と要請を受けた時から始まりました。
 当初、実行委員会の人たちと大田さんを交え、どのような映画を作るのか、さまざまな教育の実践を記録したらどうだろうかなど、試行錯誤の日々が続きました。
 しかし、ここで問題が。
 それは、どの教育実践も豊かな内容を含むものであり、とてもそれらを映画に納めることは無理があるということでその案は結局挫折したのでした。
そこで、誰もが考えたのは「折角大田先生が絡むのだから、大田先生の教育理念を映画にしたらどうだろうか」ということでした。

映画は大田さんと向き合う


(C)ひとなるグループ

 ここから映画の苦しみは始まりました。
 というのは映画というのは具象化された映像を見てそれぞれの方々が自分なりに抽象化して考え、更に自分の知識や経験で具体的なイメージを獲得していくという表現手段。
 それに対して、大田さんの表現手段は文章や言葉という抽象化されたもの。
 そこから私たちはやはり自分たちの経験や知識をつかって具体的なものにイメージしていくという映像とはまったく異なったものでした。
 当然、理念を映像化することなどできません。
 そこで私たちが考えたのは忌憚なく大田さんと直接向き合い、どこまで大田さんの語っていること、行動していることを映画として多くの人たちに観ていただけるかということでした。
 しかし、大田さんの自伝になってはいけません(大田さんもそれは望んでいません)。それと同時に自伝になってしまうと、ともすれば大田さんのこれまでの業績ばかり浮き上がってしまうおそれがあります(これまた大田さんが最も嫌う権威と受け取られるおそれもあります)。
 そこで大田さんの半生と現在の活動を描くことで、教育を見つめ続ける中で人間について考えてきた映画「かすかな光へ」の形となったのです。

いのちの特徴から見た基本的人権


(C)ひとなるグループ

 そのように撮られた映画は私に思わぬことをもたらしてくれました。
 それは前作の(前作と言っても8年前にもなるのですが)夜間中学を扱った「こんばんは」で描いた教育実践を大田さんの教育理論が補強し、普遍化してくれたことです。
 大田さんはこの映画の中で再三にわたって語っています。
 教育とはその人その人の基本的人権を尊重して行うものだ。決して"上から目線"で教え諭すものではないと。
 そして、大田さんは更に語ります。基本的人権とは人が生まれてきたときから有する権利。生まれてきた時から持っているもの―それは"いのち"。
 それには3つの特徴があるのだと。
 "一人ひとり違うこと""生き物はみな自ら変わる力を持っていること""他の人と関わらなければ生きていけないこと"そのことを互いに尊重して生きることに教育が生まれ、平和が生まれるのではないかと。
 それらは夜間中学で行われている教育の源となる考えでした。同時に幾多の学校でも行われている教育の原点でもあると思います。
 そして、それは教育の世界にはとどまらず、私たちが日常生活を送る中でも胸に刻んでいく大切な考えでもあると思います。
 3・11の大災害、原発事故以降、これまでのマネーやモノが優先する社会からいのちと暮らしを最高のものにするための価値観への転換が求められています。
しかし、いきなり変わるというわけにはいきません。
 一つ一つゆっくりではあるけれど、確実に変えてゆくことが必要です。
 「かすかな光へ」という題名は、今は小さな、かすかな光ではあるけれども、その光を確かなものにしていこうという思いを持って名づけられました。
 一人でも多くの方々に観ていただき、お年寄りも若者も、そして子どもたちのためにも少しでも自分たちの生きている社会が住みよい方向にいくためにこの映画が活用されることを願っています。

「かすかな光へ」公式HP
【上映日程】大阪第七藝術劇場他全国各地にて 詳しくはこちら
【自主上映団体募集中】
  問い合わせ:ウッキープロダクション(猿田)
  〒102-0074東京都千代田区九段南4-3-3
  シルキーハイツ九段南2号館606号室
  TEL:03-5213-4933 FAX:03-5213-4934
  Mail:yus@solid.ocn.ne.jp

◆森 康行(もり やすゆき)さんのプロフィール

1950年静岡県生まれ。1978年、短編の文化映画『下町の民家』(東京都の制作)で初監督。以後、数多くの短編記録映画を生み出すと共に、テレビ・ドキュメンタリーの演出をてがけている。主な作品は、1990年、被ばくの問題を現代の視点で考えようとする高校生を描いた 記録映画『ビキニの海は忘れない』(90年/キネマ旬報文化映画第10位・日本映画ペンクラブ優秀作品・日本映画復興会議奨励賞) 、1994年、郷土史をひも解く中で朝鮮人強制連行の足跡に出会う高校生が大きな歴史の流れを問い直す記録映画『渡り川』(94年/毎日映画コンクール『記録文化映画賞(長編)』・キネマ旬報文化映画第1位 )、2003年、夜間中学の学びをみつめた記録映画『こんばんは』(第9回 平和・協同ジャーナリスト基金 基金奨励賞/キネマ旬報ベストテン文化映画第1位、日本映画ペンクラブ賞 日本映画ノン・シアトリカル部門第1位 第58回 毎日映画コンクール 記録文化映画賞、第一回文化庁映画賞 文化記録映画大賞ほか)。




 
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