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「名ばかり店長」の告発―普通に働けば健康な生活ができる社会を!

2011年12月26日


清水文美さん(「SHOP99」裁判原告)


――「店長は名ばかり管理職 残業代など支払いを命じる」。今年の6月1日、こんな見出しの短い新聞記事が各紙に載りました。働く人たちの権利を守る、今年の大変重要な裁判でした。原告として奮闘された清水文美さんにお話しを伺います。清水さんは、コンビニエンスストア「SHOP99」に正社員として入社されたのですね。
(清水さん)はい。高校3年生の就職活動の時期に交通事故に遭って仕事を得られませんでした。アルバイトをしながら正社員の仕事を探し続け、06年9月、25歳のときに「SHOP99」に就職しました。正社員として自立して働きたいという夢がかなったと思いました。

――どんな職場でしたか。
(清水さん)生鮮食品や弁当、惣菜、日用品などをほぼ全品を99円(税込105円)で扱い全国展開しているローソンの子会社のコンビニです。2000年に創業しましたが薄利多売で急成長し、今は「ローソンストア100」と改称して1000店を超えています。
5か月目に勤務していた店の正社員は私だけになりました。1店舗には正社員が1名、パートとアルバイトが約20名います。異動が多かったですね。店に慣れたと思ったら、翌月にはまた異動という感じでした。離職も多く、新入社員の離職率は3年以内で95%です。
入社して9か月後に店長になりました。

――店長としての仕事や待遇はどうでしたか。
(清水さん)休憩時間がほとんど取れませんでした。パートさんたちの休憩を優先しますから店長は昼食を取る時間がなく、野菜ジュースを飲みあとはおやつ程度ということが多かったです。
 それまでも作業量は多かったのですが、勤務時間がめちゃくちゃ長くなりました。例えば、07年7月から8月にかけての1か月間で休みは1日だけ。8月7日は7時45分に出勤して翌8日の7時24分に退勤しましたから23時間40分働きました。それから1時間半後の8時55分から23時間働き、さらに10分空けて17時間こなしました。
 たまに公休をとっていても、アルバイトが来ないときなど携帯電話で呼び出され、深夜の場合は1時間自転車で行きそのまま日勤をこなしました。電話が怖くなり熟睡できなくなりました。
賃金は、それまで手取りが月30万円くらいありましたが、22万円へと減りました。年収換算では300万円くらいになりました。

――他に店長として辛かったことがありましたか。
(清水さん)営業中は薄利多売で忙しいこともありよくお客様からのクレームが来たりして従業員に必要以上に厳しくものを言ったりするなど人間関係がギスギスしてくることです。私は、仕事は忙しい中にも皆で楽しくするものだと思っていますが、それができなかったことです。

――会社には疑問に思っていることや実情を話しましたか。
(清水さん)話しましたが「店長は管理監督者なのだから残業代はない」とのことでした。休みが取れないことや勤務時間が長過ぎることにつても、「お前の管理能力がないからだ」「健康管理も自己管理の問題だ」として取り合ってもらえませんでした。

――それでは身体をこわすでしょう。
(清水さん)はい。「疲れている」という感覚もなくなって来ました。07年の7月にうつと指摘され、9月には専門医から即時仕事を止めるように勧告されました。結局10月には休職しました。私はモノ扱いどころか燃えカスにされたのです。1年2か月の正社員生活でした。

――その後、会社に対して裁判を起こされたのですね。
(清水さん)首都圏青年ユニオンの方々に相談して会社と団交しました。「店長」とはいっても労働実態からみると労働基準法41条2号で規定している管理監督者には当たらない、従って残業代を支払って欲しいという要求です。しかし、取り合ってもらえないので、裁判を起こしました。

――多くの方が裁判の支援に参加されたそうですね。
(清水さん)はい。裁判していた3年間、人と人のつながりを実感しました。心の底から支援してくれているのが分かりました。出会った方々に本当に恵まれました。普通にはできないことであり、支え方が尋常ではありません。私の気持ちも「裁判で闘う」という強いものになって行きました。

――今年の5月31日、東京地裁立川支部で勝訴判決が出ましたね。
(清水さん)はい。職務内容、権限、勤務態様、賃金等の待遇から「管理監督者」ではないと認定されました。会社の全正社員の3分の2が「店長」を占めていたこと、日常業務はパート・アルバイトと大差がないこと、仕事が増えたのに受け取った賃金は大幅に下がったことなどからです。従って残業代は請求額どおり44万円余支払えと。また、うつ病になったのは業務と因果関係があり、かつ安全配慮義務の違反があったとして慰謝料100万円の支払いも命じられました。
 裁判は私1人だけのためのものではないと思っていました。

――それはどういう意味ですか。
(清水さん)会社は利益を出すためだけに、経営の効率化、合理化ということで、本来支払うべき残業代を支払わず、かつ長時間労働を増やし休日を減らすために、名前だけの管理職を大量に作りました。私が働いていたとき、上司が2人倒れ、うち1人は入院しました。過労死してもおかしくない異常な長時間労働をこの会社からなくしたいと思いました。事実、判決の後、会社の長時間労働はかなり改善されたようです。また、この会社だけの問題ではないと思って闘いました。

――今のお気持ちを聞かせてください。
(清水さん)私は自立して普通に働き、会社や社会に貢献したかっただけです。しかし、実際には「普通に働くこと」はできませんでした。実際に闘ってはじめて「生存権」の意義が良くわかりました。私の闘いが次の闘いにつながればいいと思っています。
 今は、人間を安くモノのように扱って経営を合理化、効率化する企業が利益を上げ勝ち残る競争社会です。私たち若者もそのような中でバラバラになって競争に勝とうと必死になって少しでもいい仕事を探しています。でも、これからは大多数の若者は仕事をみつけてもスキルを身に付けることは難しいです。マイホームを持つのも夢だけで終わることを知ってしまいました。
 コンビニは地方にも進出して地元のなじみの店と地域住民とのふれあいや地産地消を奪ってきました。地方で得た富の多くは本社に持って行かれ法人税で都市部が潤い、経営者が大儲けしています。
 若者、地元の店、地方を犠牲にして資本は巨大になり益々強い力を持ってきました。どうしたらこのような仕組みを変えられるのか、真剣に考えるべき時です。

――長時間、どうもありがとうございました。ご健康を回復され人間らしく働ける職場に復帰されることを切に祈っております。

◆清水文美(しみず ふみよし)さんのプロフィール

1979年生まれ。1998年高校卒業後アルバイトを経て2006年6月「株式会社九九プラス」入社。2007年10月同社休職。現在職場復帰を目指して療養中。




 
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