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『憲法が教えてくれたこと』

2012年4月23日


熊田亘さん(筑波大学附属高等学校教諭)

 私が担当している週2コマの「政経」では、教えたいことは山のようにあるのに授業時数が限られているので、日本国憲法の学習にも十分な時間を割くことができません。どうしても摘み食い的な扱いになってしまいます。
 その点、『憲法が教えてくれたこと』は、第13条[個人の尊重]から出発して、基本的人権や平和主義の部分はほぼカバーされているので、本書を読んでもらうと、(統治機構の部分を除き)日本国憲法の全体像がつかみやすいかなと思いました。
 私自身は、日本国憲法の学習を、とにかく前文から第103条まで一気に読んでもらうことから始めます。ただ、ひたすら読むだけというのはつらいので、「日本国憲法のすべての条文の中で、自分が大切にしたい条文を5つ選ぶ」という課題もあわせます。条文の価値を評価してもらう作業を入れるわけです。
 この「憲法条文総選挙」で、昨年度の3年生が「大切にしたい」と考えた条文ベスト5は、次の通りでした。
   第1位 第9条(戦争の放棄)        
   第2位 第11条(基本的人権の享有)
   第3位 第14条(法の下の平等)      
   第4位 第25条(生存権)
   第5位 第97条(基本的人権の本質)
 こういう結果をみると、高校生の意識が垣間見えて「なるほどなあ」と思います。
 もうひとつ。『憲法が教えてくれたこと』では、第5章で立憲主義が正面から論じられますが、これまで社会科・公民科の授業では、民主主義については丁寧に、かつ、それがあたかもパーフェクトであるかのようなトーンで教えられてきたのに対して、立憲主義そのものも、民主主義と立憲主義の(時には対立する)関係も十分には扱われてこなかったように思います。私は憲法の権力制限規範という特徴を授業でかなり強調しているつもりだったのですが、今回の読書会で「憲法は自分たちを縛るように思っていたけれど…」というような発言があったりして、「まだまだ十分伝えきっていなかったな」と反省することしきりです。
 高校生うたこ、その家族や部活仲間の物語は良くできていると思いました。陸上部で頑張っていた卒業生の顔が浮かんだりします。この本を、『もしドラ』のようにAKB48主演で映画化するとしたら、うたこたち6人には誰がふさわしいかなどと考えるのも楽しいですよね。

【『憲法が教えてくれたこと』の筑波大学附属高等学校での読書会】

―――今日、皆さんには『憲法が教えてくれたこと』を読んできてもらいました。率直な感想から聞かせてください。

(Sさん)
 これまであまり憲法の本を読んだことはありませんでしたが、この本は読みやすかったです。憲法の条文が物語の中に出てきて、条文の意味がイメージしやすかったです。そこがいい、と思いました。
(Iさん)
 私も読みやすかったです。いろいろな出来事との関連で条文が出てくるので、なるほどと思うことが多くありました。ただ、読み終わった後に、あらためてどういうことだったかを考えてみると、モヤモヤする感じもあります。「あとがきに代えて」に、結論は出していない、自分の頭で考えよう、とあるので、そういう本なんだと思いました。
(Wさん)
 私は物語自体が楽しかったです。そして、物語に出てくる日常のこととの関連で憲法のことが出てくるので、頭に入りやすかったです。憲法の考え方が素直に頭に入りました。結論が出てなくて、自分の頭で考えることになり、いい勉強になりました。

―――それでは章ごとの感想も聞かせてください。第1章には有害図書のこととか、校則のこととか、自由や権利そして、それを規制する話も出てきましたが、どうでしたか。

(Sさん)
 第一章は身近な問題なので、わかりやすかったです。
 ただ、実際に東京都でも有害図書を規制する条例がつくられた話は知っていましたが、それが憲法に関連することなんだという認識はありませんでした。規制がよいのか悪いのかは、もう少し考えてみたいと思います。

―――第2章は社会権のことなどでした。いかがでしたか。

(Iさん)
 リストラされてしまった人の権利も憲法によって守られるということがよくわかりました。また、最近はお金がなくて餓死する人のニュースをよく聞きます。そういう人たちの生活を守ることがいま重要だと思います。

―――第3章は人身の自由のことやえん罪問題でした。いかがでしたか。

(Iさん)
 自分や家族が被害者になったら加害者を許せないと思うのかもしれないけれど、でも無実の人が濡れ衣を着せられるようなことはいけないと思います。「疑わしきは罰せず」という原則は必要だと思います。

―――第4章は地方自治でした。

(Sさん)
 原発の問題が出てきました。過疎地域には地域の振興のために原発を受け入れざるを得ないところがあるように思います。
(Iさん)
 地方自治は国政よりも身近というけれど、率直に言って、あまり実感できません。原発事故の被害者の方々はお気の毒だとは思うけれど、まだ、自分にとって身近な問題として考えるに至っていません。

―――第5章は、民主主義ということ、立憲主義ということ、などでした。

(Sさん)
 民主主義は大事なんだと思いますが、多数意見が必ずしも正しいとは限らない、ということはよくわかりました。
(Iさん)
 法律が憲法違反かどうかを裁判所が判断できる、ということが憲法に書かれていることで少数の人たちの人権も守られることになっている、というところは発見でした。
(Wさん)
 憲法は民主主義というものを良いものと捉えていると思っていたので、民主主義にも「歯止めをかける」という考え方は新たな発見でした。

―――あらためて全体を通して、この本を読んで学んだことはありましたか。

(Sさん)
 憲法っていうと、9条のことは頭にあって、それを変えるか変えないのかという問題を考えてみたことはあったんですが、憲法には9条以外にもいろいろなことが書かれているんだということが、あらためてわかりました。
(Iさん)
 憲法に「公共の福祉」という言葉がところどころに出てきますが、私は「公共の利益」のためには国民の自由が制限されることもある、というように理解していました。ところが、自由が保障されるのは「自分以外の誰かの自由」を侵さない限りでのこと、というような説明があって、それは印象的でした。

―――物語ですからそれぞれいろいろな感想を持つことになったでしょうし、ちょっと突飛だとか現実離れしていると感じる部分もあったかと思いますし、しかし、憲法に規定されたいろいろな価値について自分なりに考えてみる機会にはなったのではないでしょうか。皆さんはこれから大学に進学します。これからも大いに学び主権者として成長していってください。期待しています。




 
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