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さっしーが博多の街にやってきた! 〜指原莉乃のHKT移籍問題から憲法の私人間効力を考える〜

2012年7月30日



春田久美子さん(弁護士)

 「さっしー」とは今をときめくアイドルグループAKB48のメンバーだった指原莉乃のこと。先日7月5日、いよいよ私の地元、博多でHKT48のメンバーとしてデビューを果たしました。
 
 今年6月6日に行われたAKB48の「第4回選抜総選挙」は今年とうとうNHKニュースでも取り上げられ、今やまさに国民的行事ともいえるでしょう。NHKでは、なぜ、若者たちがそこまでこの総選挙に熱中するのか、投票率が下がり続ける大人の選挙の実態との比較の視点で、その理由を分析したりしていました。総選挙の中継番組で瞬間最高視聴率を叩きだしたのは、まさに、その「さっしー」が一躍4位に躍り出た瞬間だったとのこと。大分市長も番組の中でさっしーを応援している画面が映っている、そんな絶頂期にあったさっしーが10日も経たないうちに何故、どうして、突然、博多HKT48に移籍することになったのでしょうか。理由は、「恋愛禁止のルール」に違反して、ファンの男性と交際していたことが元カレによって週刊誌にぶちまけられたから。
 
 AKBのアイドルたちが"先生"と呼ぶ秋元康総合プロデューサーの反応は素早いものでした。「どうなの?本当のところは。」さっしーは素直に認めたのでしょう、速攻で、HKT48に行くよう指示を出したらしいのです。
 この一連のニュースをみて、私は突然思い立ちました、よし!三菱樹脂事件にとって替わる事例として、これを憲法の教材にしてみよう、と。
 
 ご存じのように、三菱樹脂事件は、憲法(の人権を保障するという規定)が、私人間においても効力を有するのか、という問題で採り上げられる判例です。大学を卒業した若者が企業に就職する際、学生時代に学生運動などに関わっていたことを正直に申告していなかったとして、企業が、試用期間満了の直前、本採用を拒否したことから、社員になりたかった学生側の「思想・良心の自由」と企業側の「経済活動・営業の自由」のどちらが優先するのか、企業が学生運動に関わった人を雇わないことが憲法違反にならないのかが争われた事件です。
 私たち福岡の弁護士有志と法教育に興味のある学校の先生方とで集まる法教育研究会で、高校の授業の教材作りを話し合っていたとき、「三菱樹脂事件は、ちょっと古いですよね…」と皆で頷きあったものの、かといって、他に何かテキトーな例を探すのも難しいね、と煮詰まっていた、そんなタイミングでこの指原莉乃の移籍問題のニュースが日本中を駆け巡ったのです。
 
 さあ、ここからは中・高校生の皆さんに質問ですよ。
 「恋愛禁止のルールに違反したのは事実として、さあ、このルールについて皆さん、どう思いますか?…さっしーファンだったキミはショックで何も考えられないか…。じゃあ、あなたは?うんうん、アイドルだったら仕方ない、裏切られた気分…なるほどね、怒りがこみ上げるんだね。他の意見はありませんか〜。あっ、はい、そこの元気な女子。どうぞ意見を聞かせて。…秋元康は酷すぎるって?19歳で恋愛禁止ってナンセンス?お隣のあなたは?元カレが男としてサイテー、やり方が許せない?!なるほどね、そういう意見もあるよね〜。」
 
 アイドルであれば恋愛禁止は仕方ないのでしょうか。確かに夢を売る仕事、そういうルールがあることも承知の上でメンバーになったのだから仕方ない、そうとも言えますね。メンバーにとって、秋元先生は絶対に逆らえない存在であることもその通りなのでしょう。そういうルールが適用されること、受け容れることを前提にメンバーになった以上、違反をすればペナルティもある意味当然なのかもしれません。恋愛を優先したいのであればみんなのアイドルはやめて、カレだけのアイドルになるって途もあるでしょうし。他方で、人を好きになったとき、どうしても気持ちを止められないのも人として自然なことでしょうね。
 
 さあ。アイドルを統括してドンドン斬新な営業戦略を繰り広げる秋元先生の決断、皆さんはどのように考えますか?「恋愛禁止のルール」はどういう根拠で正当化されるのでしょうか。『それでも好きだよ』って、歌だけにとどめられず、感情を抑えられなかったさっしーがアイドルとして軽率だったのでしょうか。さっしーと秋元康総合プロデューサーが、もしも、法廷で、HKT48への移籍問題について争うことになったとしたら、みんなは、どちらに一票を投じますか。

◆春田久美子(はるた くみこ)さんのプロフィール

平成元年     九州大学法学部卒業
平成元年     住宅金融公庫に就職
平成4年     司法試験受験に専念するため住宅金融公庫退職
平成5年     司法試験合格
平成8年〜    裁判官任官
平成18年〜   弁護士登録(福岡県弁護士会所属)
         九弁連法教育に関する連絡協議会委員,福岡県弁護士会法教育委員会副委員長
平成23年3月  法教育推進協議会募集の法教育懸賞論文にて優秀賞受賞(論文は法務省HPに掲載)。
平成24年2月  法教育推進協議会募集の法教育懸賞論文にて法教育推進協議会賞受賞(論文は法務省HPに掲載)。


TV番組‐NHK『ぐるっと!8県九州沖縄』の法律解説コーナーにレギュラー出演中。サガテレビの子ども向けサイト「さがっこレッスンナビ」に『くみこ先生の「ほう!」の授業がやって来た!』とのタイトルで「法教育」のコラムを12回に亘り連載。平成24年8月10日には、『集まれ!九州のこどもたち!"幸せな国"ってどんな国?』のタイトルで法教育イベント(こどもサマー法律教室)に初めて取り組みます!

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<法学館憲法研究所事務局より>
・2012年3月、小学6年生を対象に実施した春田弁護士の法教育授業が西日本新聞で報じられました。こちら
・春田弁護士は以前WEBサイト「憲法を観る」の「憲法教育を考える」に「AKB48の総選挙を題材に憲法の授業を考えてみたら 〜一票の持つ価値を子どもたちと一緒に考える〜」を寄せられました(2011年7月11日)。



 
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