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今週の一言

 

「我が国の安全保障に資する」ための原子力利用は、国益を害する危険な火遊びだ

2012年8月6日



小沼通二さん(世界平和アピール七人委員会委員・同事務局長)

 2012年6月15日(金曜日)の国会に、民主・自民・公明3党が、前日の14日に合意した原子力規制委員会設置法案を提出した。265ページの法案が配布されたのは本会議の10分前だった。この日のうちに、衆議院で可決されて参議院で審議開始。6月20日(水)に原案のまま可決成立した。原子力規制庁設置を目指した内閣提出の法案(2012年1月31日提出)に対抗して、自民党が作り、公明党とともに4月20日に提出した原子力規制委員会設置法案(2012年)をもとにしたものである。3党以外の意見を聞く気は全くなかった。

 法案には97条の附則がついていたが、その中に原子力基本法の基本方針の変更が入っていた。1955年の制定以来、「平和の目的に限り」、「公開」の下で進められてきた原子力の研究・開発・利用に、「我が国の安全保障に資することを目的として行う」ことが含められたのである。

 世界平和アピール七人委員会は、この原子力基本法改正案に6月17日に初めて気が付いた。「我が国の安全保障に資することを目的として行う」原子力利用は、軍事目的の原子力開発を可能にする。七人委員会は、1955年に設立されてから今日まで、世界の平和のために不偏不党の立場で、国内外にむけて発言を続けてきた。現在の委員は、武者小路公秀、土山秀夫、大石芳野、池田香代子、小沼通二、池内了、辻井喬の7人である。たまたま開かれることになっていた18日の委員会で検討した結果、欠席委員にも連絡して、19日朝、撤回を求めるアピールを急きょ発表した。

 このアピールは、19日と20日の参議院環境委員会でとりあげられて、質疑が行われた。提案3党と政府は、「安全保障」は、原子力安全規制、核セキュリティ、核不拡散の保障措置を意味すると答弁した。これは、国の安全保障のための原子力という法律の説明になっていない。実際、法案にこの文言をいれた自民党のプロジェクトチームの座長だった塩崎恭久議員は、自民・公明2党案の筆頭提案者でもあるが、「核の技術を持っているという安全保障上の意味はある。」「日本を守るため、原子力の技術を安全保障からも理解しなければならない。・・・」と改正案可決成立の日に発言している。

 日本ですぐに核兵器が作れる状況ではないが、「国の安全保障に資する」といえば、必ず秘密保護が登場する。これは研究開発に取り返しのつかないひずみを与える。

 これは杞憂ではない。2008年の宇宙基本法制定、2012年6月20日の「独立行政法人宇宙航空研究開発機構法」の改正で、具体的に起きていることである。

 今回の原子力基本法改正は、国外にも波紋を広げて、すでに国益を害している。次の国会で原子力基本法と原子力規制委員会設置法から、「我が国の安全保障に資する」という表現を削除させなければならない。

 アピール全文、その他関係文書がこちらとプロフィールの最後のリストに載せてあるので、ぜひご覧いただきたい。多くの発言が続き、再改正によって削除されることを願っている。

◆小沼通二(こぬま みちじ)さんのプロフィール

1931年東京生まれ。物理学者。現在、神奈川歯科大学理事、慶應義塾大学名誉教授、武蔵工業大学名誉教授、明治学院大学国際平和研究所研究員、世界平和アピール七人委員会委員など。日本学術会議原子核特別委員会委員長、日本物理学会会長、アジア太平洋物理学会連合会長、パグウォッシュ会議(1995年ノーベル平和賞受賞)評議員などを歴任。

 1971年3月18日の参議院文教委員会において、国立大学共同利用機関「高エネルギー物理学研究所」設置にかかわる「国立学校設置法の一部を改正する法律案」審議に政府説明員(日本学術会議原子核特別委員会委員長)として、研究者の立場から法案を説明

本稿に直接関係する著述:
●『「原子力基本法改正の背後には核保有を目指す勢力」、「安全保障に資する」という文言を追加した改正内容を初めて確認した小沼名誉教授インタビュー』朝鮮日報日本語版chosunonline  : 2012年6月23日 11:49
●『原子力基本法の基本方針に、「我が国の安全保障に資する」という表現が加わった。これからどうするか。』、「科学・社会・人間」2012年7月号、121号3―16ページ

●『混乱続き国益損なう 「安全保障」の文言削除を』、高知新聞2012年7月4日;『混乱招く「国の安全保障」』、中国新聞2012年7月8日ほか各紙(PDF)
OPINION: Remove security clause from Atomic law to avoid Japan's interests, Kyodo News 18 July 2012
●巻頭エッセイ 『これでいいのか! 原子力基本法に加えられた「安全保障」』、「科学」2012年8月号815ページ
●座談会「疑惑の原子力基本法:「我が国の安全保障に資する」のたどる道」、(出席者:海渡雄一、小沼通二、新藤宗幸)、科学 2012年9月号(岩波書店)
その他



<法学館憲法研究所事務局から>
 9月15日(土)、「平和と憲法 − "武力なき平和"のリアリティ」と題して水島朝穂氏(早稲田大教授)が講演し、当研究所の浦部法穂顧問(=神戸大学名誉教授)と対談します。こちら。尖閣諸島などをめぐる緊張関係の中で、日本国憲法第9条を活かす道が語られることになります。多くの方々にご参加いただきたいと思います。
* 水島朝穂教授の「平和憲法のメッセージ」



 
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