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「軍事力ムラ」にメスを入れよう〜武器輸出拡大と宇宙の軍事化に抗するために

2012年8月27日



杉原浩司さん(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)

 私は、ここ10年ほど「ミサイル防衛」反対などの軍縮運動に取り組んできましたが、「3・11」の東京電力福島第一原発事故以降は、脱原発運動にのめり込んでいます。この瞬間を、日本の政治や社会を変える転換点としなければとの思いからです。そこで見えてきたのは、「原子力ムラ」と呼ばれる強固な利権共同体の姿です。民主主義の対極にあるこの構造を解体しない限り、脱原発は不可能です。同時に、こうした構造が原子力分野だけではなく、そこかしこに存在することにも気づかされました。

 この間、野田政権のもとでなし崩しに進む軍事化を、歯がゆい思いで見てきました。決して強い基盤を持たないのに、自民党政権がなし得なかったことを次々と実現しています。昨年12月27日には、武器輸出禁止3原則の大幅緩和を行う閣議決定を行いました。「友好国」との武器の共同開発・生産や「国際協力」のための武器供与に道を開き、軍需産業の宿願をかなえました。憲法9条の理念を具現化し「国是」とされてきた平和原則の決定的な形骸化です。4月10日、野田首相は、来日した英国のキャメロン首相と武器の共同開発を進める合意を交わしました。

 さらに、6月20日には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)法が改悪されてしまいました。JAXAの活動目的から、「平和目的に限る」との規定を削除するものです。これにより、JAXAの研究者・技術者が軍事研究に動員されることになります。「国是」の一つだった宇宙の平和利用原則の瓦解を意味するものです。野田首相自身が、2008年の宇宙基本法制定(「安全保障」目的の宇宙利用に道)を主導した「宇宙族」の1人であることも背景にあります。

 原子力の分野においても、「安全保障」をめぐる分野においても、問われているのは民主主義なのだと思います。民主主義の真価は、「誰が決めるのか」をめぐって計られます。安全保障政策において、主権者である市民は決定権を奪われたまま、「原子力ムラ」ならぬ「軍事力ムラ」が、揺らぐことなく権力をふるっています。例えば、昨年末の武器輸出の拡大は、立法府が何ら関与することなく、「副大臣会合」という密室協議がレールを敷いて決められました。その点を指摘するメディアは皆無でした。また、御用学者を集めた審議会に政策変更の下書きを書かせるお決まりの手法がまかり通っています。

 防衛省の守屋武昌事務次官の汚職事件の際に、軍需利権の構造にメスが入ったものの、その解明は中途半端に終わりました。この間、スパイ衛星の主契約企業である三菱電機による水増し請求事件が発覚したものの、市民による追及は不十分なままです。「軍事力ムラ」=日本版「軍産学複合体」の構造をえぐり出し、それを解体する具体的なビジョンを提示することが必要です。同時に、JAXAや民間企業の技術者・研究者に対して、軍事への関与をボイコットするように呼びかけるべきでしょう。

 ニューヨークで開かれていた武器貿易条約(ATT)をめぐる交渉は決裂しました。大国が輸出した武器によって、市民が殺傷され続けています。グローバルな視野に立って、憲法9条を具現化してきた原則への攻撃をはね返す知恵を集めるときだと感じています。

◆杉原浩司(すぎはら こうじ)さんのプロフィール 

1965年生まれ。PKO法制定やフランス核実験、「邦人救出」名目で軍用機を海外に送る自衛隊法改悪などへの反対運動に取り組んだ後、2000年秋より「核とミサイル防衛にNO!キャンペーン」の事務局として、ミサイル防衛(MD)導入への反対運動を継続している。『宇宙開発戦争』(ヘレン・カルディコット他、作品社)の日本語版解説を執筆。「福島原発事故緊急会議」などのメンバーとして、脱原発運動にも積極的に参加している。





 
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