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自衛隊が9条に還る道 〜自衛隊を災害救助隊へ〜

2012年9月10日



新倉裕史さん(非核市民宣言運動・ヨコスカ、ヨコスカ平和船団))

 私たちは、横須賀で「自衛官−市民ホットライン」という活動をしています。1992年、自衛隊のカンボジア派遣時にスタートした運動です。それ以前から、基地の町で反基地運動を行なっていますが、自衛官だけではなく、米兵も含めて兵士に語りかけることを、平和運動の重要な柱として考え行動してきました。

 東日本大震災では自衛隊が大活躍しました。私たちは今、自衛隊を災害救助組織に変えていく提案を、平和運動がすることが必要ではないかと考えているのですが、「危ない」という批判も多く頂いています。そうした提案は結局のところ、うまく利用されるだけで終わる。軍隊としての自衛隊存続に手を貸すだけだと。

 私たちにその心配がないわけではありません。しかし2012年1月に内閣府が行った世論調査でも明らかですが、東日本大震災での自衛隊の活躍は、圧倒的な国民の支持(97.9%)を得て、「自衛隊によい印象を持っている」も過去最高の79.7%となっています。

 私たちは東日本大震災で「活躍」した自衛隊が、そのことによって軍隊では無くなったから、災害救助隊へ横滑りさせよう、と言っているのではありません。むしろ逆です。私たちの問いは、圧倒的な認知を受けた自衛隊が、より強固な軍隊へと向かわないために、いま何をすべきか、です。

 そのための歯止めが、ほかでもない「災害出動」です。
多くの自衛官が災害出動を動機として入隊していることが、自衛官の問題を取り上げた多くの書籍が指摘しています。国民の自衛隊認知の理由も、ずっと災害出動が1位です。

 10万の自衛官が、かつてない規模の救援活動に従事し、力を発揮し、そして多くの被災者から感謝された、この経験を大事にしたい。過酷な任務の中で、日々命の尊さを実感しただろう自衛官が、災害救助と本務である戦闘行動の違いに何かを感じた時、私たちの言葉は、案外近くまで届くのではないでしょうか。

 救助隊へのシフトが非現実的というのなら、せめて今回の経験が、自衛隊が海外に展開する軍隊への脱皮を加速させることに使われてしまうのではなく、ブレーキとなるよう組み立て直す努力は、平和運動の重要な仕事ではないのかと思うのです。その努力をしないまま、自衛隊の出動をただ批判するだけでは、社会運動としての信頼は得られないのではないか、とも思います。

 自衛隊は憲法違反です。憲法違反の自衛隊を憲法違反でなくするためには、自衛隊そのものを無くすというのが平和運動の答えでした。しかし、その答えは、現実の壁の前で立ちどまったままです。だから、たとえば平和基本法のような中間的な考え方が提案されてきました。しかしそれも、多くの「現場」からは受け入れられてはいないようです。結局は自衛隊容認につながってしまうという警戒心の中で、9条問題は理念と現実の間で動きが止っているように見えます。

 だからその縛りから離れ、災害出動という、現実的な接点を生かして、自衛隊が9条の下に還る道を考えよう、というのが私たちの提案です。

◆新倉裕史(にいくらひろし)さんのプロフィール

1948年生まれ、印刷所勤務。1972年、空母ミッドウエイの横須賀母港に反対する「ヨコスカ市民グループ」に参加。運動名は「非核市民宣言運動・ヨコスカ」と変わり、1976年からスタートした月例デモは2012年8月で440回となる。16年目となる「ヨコスカ平和船団」のメンバー。「自衛官-市民ホットライン」など、兵士の人権問題にも取り組む。共著「周辺事態法Q&A」(岩波ブックレット)、「基地の読み方、歩き方」(明石書店)、私達の非協力宣言〜周辺事態法と自治体の平和力〜(明石書店)など。モットーは「理想を高くもたない」。

 <法学館憲法研究所事務局から>
 9月15日(土)、「平和と憲法―"武力なき平和"のリアリティ」と題して水島朝穂氏(早稲田大教授)が講演し、当研究所の浦部法穂顧問(=神戸大学名誉教授)と対談します。こちら。日米同盟の「深化」や自衛隊の機能強化などが問題になっている中で、日本国憲法第9条を活かす道が語られます。多くの方々にご参加いただきたいと思います。



 
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