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裁判員裁判と死刑制度

2012年9月17日



櫻井光政さん(弁護士)

 裁判員裁判が実施されて3年が過ぎました。当初から賛否両論ありましたが、私は裁判員裁判の制度が導入された意義は大きかったと思っています。
 裁判員裁判の導入によって変わったことはたくさんあります。公判前整理手続が新設されたことで、捜査官が抱える膨大な証拠の多くを、弁護人が公判前に閲覧できるようになりました。また、公判中心主義の考えが強まり、調書偏重の姿勢が改められるようになりつつあります。そのような変化は制度的な面に止まらず、刑事裁判全体に対する裁判所・裁判官の変化として現れています。
 ひところの刑事裁判官の仕事ぶりは、弁護人から見ると、検察官の主張立証にお墨付きを与えるだけのように見えました。象徴的なのは検面調書のほぼ無条件の証拠採用です。密室で検事に脅されながら作られた供述調書と衆人環視の法廷での供述とを比較して検面調書の方が信用できるという判断は、検察不祥事が次々明らかになった今ではいかに馬鹿らしいかがわかりますが、当時はその馬鹿らしい証拠採用がまかり通っていました。しかしそんなことは市民の目から見たらおかしなことです。裁判官は中立性、公正性を疑われないような判断をしようと気を遣うようになりました。その結果、裁判員裁判だけでなく、刑事裁判の全般にわたってそうした努力が見られるようになってきました。身体拘束に対する判断も、かつてのめくら判を押すような状態から相当の改善が見られます。言い換えれば、刑事裁判官が、刑事裁判の法廷の主宰者としての意識を取り戻し、検察に対するチェックを行うようになったということです。これこそが、市民の目を入れる裁判員裁判の真の眼目だったというべきでしょう。
 裁判員裁判にも改善すべき点はあろうかと思います。今あちこちで見直しの議論がなされていますが、私はそれと関連して、1日も早い死刑の廃止、せめて執行停止が実現されるべきだと考えています。
 裁判員が死刑の判断をしなければならないことは、裁判員裁判の反対論の1つの大きな根拠とされたほどの問題です。私も、国家による殺人に、市民を加担させることには反対です。とりわけヨーロッパ先進諸国では既に「不正義」とされている刑を科すことに、市民を参加させるべきではありません。
 被害者の感情は十分に酌まれるべきだと思います。犠牲者の遺族が犯人を殺したいと思う気持ちは誠にもっともなもので、その感情も含めて私たちは尊重すべきだと思います。ただ、そのことと、国がその感情のままに刑を科すことは別のことです。たとえば残忍な方法で両目をつぶされた人が、加害者の目をつぶしてくれと言っても、国はそういう刑罰を用意しません。目には目、歯には歯、という極端な応報はとうの昔に残虐だとして捨て去れて、命には命という応報も、先進国では前世紀に捨て去られました。わが国の正義も、たとえ刑罰のためであっても殺人は許されないという高みに達してほしいものだと思います。それでこそ、国も社会も生命の尊重をより強く訴えることができるし、裁判員の仕事もますますやりがいを感じられるものになるでしょう。

◆櫻井光政(さくらい・みつまさ)さんのプロフィール

1954年東京生
1977年中央大学法学部法律学科卒業
1979年司法試験合格
1982年弁護士登録
1998年桜丘法律事務所開設
2003年〜2011年大田区教育委員
2008年〜2009年第二東京弁護士会裁判員裁判実施推進センター委員長
2009年〜2010年第二東京弁護士会副会長
2010年〜日弁連日本司法支援センター推進本部スタッフ部会部会長
2012年〜日弁連死刑廃止検討委員会委員

<法学館憲法研究所事務局から>
 法学館憲法研究所は10月8日(月・祝)に「裁判と憲法 −裁判員制度・死刑制度を考える」を開催します。村井敏邦教授が講演し、その後浦部法穂・法学館憲法研究所顧問(=神戸大学名誉教授)と対談します。詳細はこちらからご確認ください。
 刑事法と憲法の基本理念から裁判員制度と死刑制度を学び考える機会になります。多くの方々のご参加をお待ちしています。



 
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