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デモ行進のための日比谷公園の使用を制限ー民主主義に対する重大な問題

2012年12月10日



小島延夫さん(弁護士) 

 首都圏において原子力発電所の再稼働の反対等を訴える抗議行動やデモ行進等を主催する集団や個人の連絡組織である首都圏反原発連合(毎週金曜日夕方に官邸前抗議を実施等)が、日比谷公園から国会周辺まで脱原発を訴えるデモ行進を2012年11月11日に行うことを企画し、東京都に対し、日比谷公圏内の霞門とその周辺を本件デモ出発のために同日午後1時から3時までの間一時的に使用することの承認を求める許可申請をした。
 日比谷公園には、日比谷公会堂と日比谷野外音楽堂という2つの集会施設があるが、これまで、デモ行進の集合場所・出発地としては、この2つの集会施設を使用しない場合でも、園路あるいは広場などを利用することが広く認められてきた。実際、同組織も、本年3月11日と7月29日の2回にわたり、一時使用届出書を提出し、デモ行進の集合場所・出発点として、日比谷公園を使用してきたが、いずれも、日比谷公会堂や日比谷野外音楽堂を使用せず、園路のみの使用であった。
 ところが、東京都は、本年8月中旬以降、日比谷公会堂や日比谷野外音楽堂の使用料を支払わなければ、園路のみをデモ行進の集合場所・出発地点として使用することはできないという扱いとし、そのことを理由に、10月31日、本件デモの集合場所・出発地としての使用を、公園管理上の支障となるため許可しない旨の処分をした。
 上記の不許可処分については、東京地方裁判所に対し、仮の義務付けを求める申立てがなされたが、この申立てに対しては、11月2日にこれを却下する決定がなされた。さらにその後なされた即時抗告に対し、東京高等裁判所は、11月5日に抗告を棄却した。これらの裁判所の決定においては、「本件デモは、特定の組織化された団体によるものではなく、広く一般市民に参加を呼びかけて行われるものであるから、その参加者の人数をあらかじめ相当程度の確度をもって把握することは容易ではな」いとした上で、11月11日の日比谷公園の空いているスペースでは、デモの参加予定者である1万人を収容する能力はないとし、他の公園利用者の利用との間に競合を生じ、混乱を生じる具体的危険があるとし、行政事件訴訟法第37条の5第1項の「本案について理由があるとみえるとき」 の要件が満たされていないとした。
 しかし、日比谷公園は、典型的な公共用物であり、一般公衆による公共用物の使用は当然に自由である。そもそも、公園は、伝統的に、集会やデモ行進の集合・出発地点として用いられてきた典型的なパブリック・フォーラムであり、その利用は原則として認められるべきであって、これを正当な理由なく制約することは、憲法の保障する表現の自由及び集会の自由の不当な制限となる。したがって、公園の一時使用申請について許可をするに当たっては、その公共用物、地方自治法244条所定の公の施設及びパブリック・フォーラムとしての性質に鑑み、原則としてこれを許可しなければならず、申請を拒否することができるのは、利用者の希望が競合する場合のほかは、施設を利用させることによって、他の基本的人権が侵害され、公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られる(最判平成7年3月7日民集49巻3号687頁参照)。
 しかも、これらの裁判所の決定は、東日本大震災以降の原子力発電所の再稼働の反対等を訴える抗議行動やデモ行進は、多くの市民が自発的に参加し、しかも、整然と平和的に行われており、これまで混乱を来していないという重要な視点が看過されている。また、裁判所の論理に従えば、自発的に多くの市民が集まるデモであり、参加者の人数の把握が困難だとして、今後もデモ行進の集合場所・出発地点としての日比谷公園の使用が認められないことになる恐れがあり、市民の国会への請願行動などへの深刻な障害となりかねない。

◆小島延夫(こじま のぶお)さんのプロフィール

1959年生まれ 埼玉県川越市出身
1981年 司法試験合格
1982年 早稲田大学法学部卒業
1984年 弁護士登録(36期)
1995年 東京駿河台法律事務所設立に参画
日本弁護士連合会法科大学院センター委員(2010〜)
日本弁護士連合会公害対策環境保全委員会委員
東京弁護士会公害環境特別委員会委員(2000年4月から2002年3月まで委員長)
環境法政策学会理事(1997〜)
早稲田大学大学院法務研究科教授(2004〜2009、民事弁護実務、民事公益弁護活動論、臨床法学教育(民事)、行政過程論、行政紛争処理法、都市と法、行政法応用演習を担当)
早稲田大学大学院法務研究科講師(2010〜、行政法応用演習を担当)
立教大学大学院法務研究科講師(2011〜、環境法特別演習を担当)
上智大学法学部講師(2010〜(隔年)、環境法特殊講義を担当)





 
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