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安倍自民党のおそるべき教科書政策

2013年2月18日



吉田典裕さん(出版労連教科書対策部長)

 第二次安倍政権の教育についての「政権公約」は「日本を、取り戻す」であった。「取り戻す」ものの一つに「教育」が挙げられている。ここでは教科書にかかわる問題に絞って論じてみたい。具体的には「政権公約」、「自民党教育再生実行本部中間とりまとめ」(2012年11月16日)、「教育関連法の改正案(義家議員試案)」(2012年10月31日)の3つの文書から該当する部分を検討する。
 「とりまとめ」に掲げられたスローガンは「日本の伝統文化に誇りを持てる教科書を」である。現在の教科書は、「日本の伝統文化に誇りを持てる」内容になっていないというわけである。これをもとに「とりまとめ」はこう述べる。

 『教育基本法』が改正され、新しい『学習指導要領』が定められてから、初めての教科書の採択が、小・中・高等学校で行われたが、多くの教科書に、いまだに自虐史観に立つなど、問題となる記述が存在する。

 「新しい歴史教科書をつくる会」が使い始めた「自虐史観」などという言葉が使われていることにまず驚かされる。「など」の部分は、政権公約では「自虐史観や偏向した記述の教科書が多くあります」(「自民党政策BANK」)となっている。社会科、とりわけ歴史教科書を念頭に置いた文言だが、大部分の教科書、要するに「つくる会」系以外の歴史教科書は、自民党から見れば怪しからぬものだということになろう。
 このような認識に基づいて「とりまとめ」は教科書検定制度の「改善」を提言する。字数が限られているので、一部の紹介にとどめるが、それでも重大な改悪案であることはご理解いただけよう。なお同趣旨の内容は「政権公約」でも述べられている。

@『教科書検定基準』につき、文部科学大臣が、各教科書共通で記載すべき事柄を具体的に定める方式に改める(現在は、多くが「〜でないこと」との形式となっている)。
 あわせて、大綱化が進んでいる『学習指導要領』の記述についても詳述化する。
 共通で記載すべき事柄の例としては、例えば、歴史教科書における事件や人物など。

 学習指導要領による教科書記述への縛りを抜本的に強化せよということである。だが「義務教育諸学校教科用図書検定基準」では、「〜いること」が62か所、「〜ないこと」は26か所である。事実ではない根拠に基づいた提言と言うべきである。

C『教科書検定基準』における、いわゆる「近隣諸国条項」に関しては、見直す。
 「教科用図書検定調査審議会」及び教科書調査官の役割・責任については、透明性と公平性を徹底する。

 「近隣諸国条項の廃止」は、「河野談話」見直しと連動したものであり、日本政府の侵略戦争への無反省という強烈なメッセージとなることは明白である。
 検定合格を決定する「審議会」と教科書検定を実際に担当し審議会に報告する「教科書調査官」の「役割・責任を透明性と公平性を徹底する」というのだから、あたかも教科書制度の「改善」のようである。だが、「義家試案」には、このことの真のねらいが述べられている。「新たに「教科書図書検定法(仮称)」を制定する。概要は以下の通り」とし、教科書検定調査審議会委員を国会同意人事とすること、「審議会の議論の過程を公表し、国会等によるチェックを可能にする」ことなどを要求している。つまり教科書検定への国会の介入を可能にせよということにほかならない。
 教科書採択制度についても教育委員会制度を首長に従属する機関に変質させることを目論んでいる。これが何をもたらすかを先駆的に示したのが、昨年起こった東京都教育委員会による高校日本史教科書採択妨害事件であったと言えるだろう。

◆吉田典裕(よしだ のりひろ)さんのプロフィール

1958年 福島県生まれ。
早稲田大学政治経済学部卒業。出版社勤務。
出版労連副委員長。教科書対策部で『教科書レポート』の編集に携わる。「子どもと教科書全国ネット21」常任運営委員、国際人権活動日本委員会幹事。






 
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