法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

憲法9条の立法壊憲=国家安全保障基本法案

2013年2月25日



井上正信さん(弁護士・日本弁護士連合会憲法委員会副委員長)

1 2012年7月6日自民党は国家安全保障基本法案(概要)(PDF)を総務会で承認した。国家安全保障基本法制定を先の衆議院選挙での公約に掲げたので、次期通常国会へ法案提出される可能性は否定できない。政権に復帰した自民党はこの法案を内閣提出ではなく議員提案すると公言している。なぜ議員提案か? 内閣提出法案では、内閣法制局の法案審査があり、この法案は内閣法制局の憲法解釈からも憲法9条に違反することは明白であり、法案審査が通らないことを見越しているからである。
では、この法案には憲法9条との関係でどのような問題点があるのか。字数の関係で3点に絞って説明したい。
2 第10条が集団的自衛権行使の条文である。国連憲章第51条に規定された集団的自衛権をまるごと行使できる規定となっており、平和主義による制約はなにもない。地域的限定もないのである。米国がアフガニスタンを攻撃した根拠は個別的自衛権行使であり、NATOはこれに対して史上初めて集団的自衛権により、軍事支援を行った。第10条により、日本は米国とともにアフガン戦争を戦うことが可能になる。
 集団的自衛権は、ハンガリー介入、チェコスロバキア侵略、アフガニスタン介入(以上ソ連によるもの)、ベトナム侵略、ニカラグア介入(以上米国によるもの)のように、大国による小国に対する侵略や国家主権侵害の正当化の口実に使われてきた。
3 この法案は、国内防衛法制の上位法と位置づけられている。国家安全保障基本法制定後は、自衛隊法第76条「防衛出動」の次に、第76条の2で「集団自衛出動」規定を新設し、そのための具体的な法制として、武力攻撃事態法と対をなす集団自衛事態法を制定しようとしている。その他、自衛隊海外派遣恒久法である「国際平和協力法」を制定しようとしている。これは2010年5月に自民党から衆議院へ議員提案されている。提案された法案は、武器使用の主体が自衛隊の部隊、任務遂行のための武器使用を認め、警護活動・安全確保活動・船舶検査活動という前線での危険な活動を行い、人の殺傷でも正当防衛の要件を外すなど、憲法9条で禁止されている海外での武力行使を事実上認めるものである。このように、国会の多数を利用して、憲法に違反する国家安全保障基本法を制定し、その次には国家安全保障基本法を実行するためと称して憲法に違反する国内防衛法制を次々に制定しようというのだ。内閣は国会で成立した法律を執行する責任がある。第5条は、政府に対してこの法律を実行するための法制上の措置をとる義務を課している。これにより、長年積み重ねてきた憲法9条に関する政府解釈を事実上変更させようというのである。憲法9条を破壊する巧妙な仕掛けと言わざるを得ない。
4 1954年に自衛隊が創設されて以降、積み重ねられてきた政府憲法解釈を、その時々の政府、国会の多数で、確立された憲法解釈とそれを元に作られてきた国内法制を、このような方法で変更することは立憲主義に反することでもある。
 この法案の危険性については未だ十分知られていない。多くの市民に知っていただきたいし、法案提出に反対を表明したいただきたいものだ。

◆井上正信(いのうえ まさのぶ)さんのプロフィール

1973年3月京都大学卒業。1973年4月司法研修所入所。1975年4月弁護士登録(27期)。1981年より尾道にて尾道総合法律事務所開設。日本弁護士連合会憲法委員会副委員長。同 有事法制問題調査研究委員会所属。日本弁護士連合会秘密保全法制対策本部副本部長。広島弁護士会平和・憲法問題対策委員会副委員長。
著書:かもがわ出版「徹底解剖秘密保全法」(2012年5月)「非核平和の追求 松井康浩弁護士喜寿記念」日本評論社(共著)。
憲法問題(特に憲法9条、安全保障、防衛政策)に関する論文を法律時報、法学セミナー、法と民主主義外法律家団体の機関誌などで多数執筆。
News for the People in Japan(NPJ通信)
で「憲法9条と日本の安全を考える」を連載中 






 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]