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憲法問題に「客観」「中立」はありえない

2013年6月3日



日比野敏陽さん(新聞労連委員長、日本マスコミ文化情報労組会議議長)

 「新聞報道は客観的で公正中立でなければならない」。日本の新聞社では記者教育の基礎としてまず、こう教えることになっている。私も新人記者のころ、デスクに繰り返し指摘された。「当事者の双方の言い分を聞いたか」「意見の違う2人の識者に当たれ」などと厳しく言われたものだ。
 韓国の新聞記者によると、日本の記者は数値や実名へのこだわりが強いと見えるそうだ。「客観報道」は日本の報道の伝統的な特徴なのだろう。
 幅広く意見を聞くことは報道の基本だ。だが、「客観報道」に対する批判もある。特定の事件や出来事を取り上げるという行為そのものに主観が入らないわけがない。客観報道が結局、「当局報道」になっている実態もある。だが、いま問題なのはそこではない。憲法問題でもこれまで通りの客観報道や中立報道が可能なのか、ということだ。
 自民党改憲案は21条に第2項を新設し「公益及び公の秩序を害することを目的とした」活動や結社の自由を抹殺しようとしている。「公益及び公の秩序」は国が決め、それに反する表現や結社は取り締まるとなれば、政府や政権政党への批判が困難になることは確実だ。警察や防衛、外交などの分野で権力を告発するスクープも生まれなくなるだろう。新聞や雑誌には提灯記事ばかりがあふれかえることになる。そんなメディアに商品価値はないから私たちはたちまち読者を失ってしまう。
 自民党改憲案はメディア、ジャーナリズムと相容れる要素はまったくない。それでもこれまで通りの両論併記、客観報道に徹しようとするなら、それは自殺行為にほかならない。私はいま、新聞労連やマスコミ関係の労組でつくる「日本マスコミ文化情報労組会議」(MIC))などの集会では必ずこう呼びかけている。
 新聞労連は全国の新聞社、通信社、新聞販売会社の労働者でつくる産別組織で、現在87単組、約2万2000人が参加している。私たちにとっていま、最重要課題は改憲と秘密保全法、国家安全保障法を阻止することだ。新聞労連はこれらについて新聞人が中立であり続けることはあり得ない、不可能だと繰り返し訴えている。
 権力が情報を隠したがるとき、表現に口を出そうとするとき、その背景には必ず戦争への意図があった。イラク戦争を振り返れば、現代でも同様のことがいえるだろう。
 新聞労連は連合などのナショナルセンターには属さない積極的中立の立場を守っている。中立とは、どことでも連帯できるということだ。憲法問題では、この立場を積極的に活用していくつもりだ。私たちと同様に中立で活動している農協連、航空連、全建総連、出版労連などの産別組織とともに「憲法改悪反対労組連絡会(憲法労組連)」を作っている。民主党政権時代は事実上、活動が停止していたが安倍政権の誕生で憲法労組連も活動を再開。5月28日には若手の弁護士3人を招いて立憲主義についての学習会を開催した。
 憲法労組連は今後も運動を拡大したいと考えている。憲法改悪は各産業の労働者に直接影響する。国防軍の設置など、戦争ができる体制になれば航空労働者や建設労働者の動員を可能にする法整備もされるだろう。新聞や出版規制も当然行われるだろう。改憲がそれぞれの労働者の日常をどのように直撃するのだろうか。そんな想像力を働かせ、問題意識を共有する輪を広げて行きたい。

◆日比野敏陽(ひびの としあき)さんのプロフィール

京都新聞記者。新聞労連委員長。日本マスコミ文化情報労組会議議長。


<法学館憲法研究所事務局から>
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