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今週の一言

 

区域外避難者のたたかい〜福島原発被害東京訴訟

2013年9月2日



吉田悌一郎さん(弁護士・福島原発被害首都圏弁護団事務局長)



1 東京での集団提訴
 あの東日本大震災・福島原発事故から丸2年になる今年の3月11日、福島県から関東に避難している3世帯8名が、東京地方裁判所に集団提訴した(1次提訴)。続いて、今年の7月26日、同様に福島県から関東への避難者14世帯40名が同じく東京地裁に集団提訴した(2次提訴)。いずれも、原発事故の加害者である東京電力と国を被告とし、損害賠償を求める裁判である。

2 被害の分断と切り捨て
 これらの原告のほとんどは、いわゆる政府による避難指示のあった区域以外の区域からの避難者(区域外避難者)である。
 政府は、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告に基づき、1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトを超えると推定される箇所を避難指示の対象区域とした。だが、放射線被ばくの人体への影響、特に低線量被ばくの健康影響は未解明な点が多く、20ミリシーベルトを超えない地域であるから安全だとは到底言い切れない。しかも、この基準は、大人よりもはるかに高い子どもの感受性や内部被ばくは考慮されていない。また、避難指示区域以外の地域でも、いわゆるホットスポットと呼ばれる放射線量の高い地域がまだたくさんある。
 こうしたことから、政府による避難指示区域以外の地域であっても、特に幼い子どものいる世帯などは、放射線被ばくを恐れて避難している人が相当数いる。
 ところが、加害者である国や東電は、こうした区域外避難者に対してあからさまな差別的扱いを行っている。原子力損害賠償紛争審査会における中間指針においても、避難指示区域内からの避難者と比較して、区域外避難者の賠償額は極めて低額である(もっとも、区域内避難者に対する中間指針の賠償額も極めて不十分であるが)。そして、東電も、基本的にこの中間指針の枠内での賠償にしか応じようとしない。
 さらに、区域外避難者に対する差別的取扱いは、賠償問題だけではない。たとえば、住宅支援、医療費免除、義援金の支払い、避難先での行政サービス、避難先の児童生徒の就学拒否、高速道路無料化措置の打ち切りなど、様々な場面で区域内の避難者よりも劣後に扱われたり、区域内避難者は当然に利用できる制度を利用できなかったりなどした。
 その上、区域外避難者は、自主的避難者などと呼ばれ、いわば避難する必要もないのに、自分の勝手な判断で避難生活をしている者というレッテルを貼られる。そして、インターネットなどでは、いわゆるエセ避難者扱いを受け、避難生活をしていること自体を誹謗中傷する投稿などがなされた。
 こうしたことから、区域外避難者は、その苦しい避難生活の実情を表立って訴えることもできず、避難先での孤独な避難生活に耐えながら、ひっそりと身を潜めた避難生活を送ることを余儀なくされている。
 このような区域外避難者の差別的扱いは、被害者同士を分断(同じ原発事故からの避難者であっても、区域内と区域外で分断する)し、被害の矮小化、被害の切り捨てを図るものである。そして、このような手法は、過去の様々な公害事件や薬害事件などにおいて、国や加害企業が行ってきた常套手段であり、決して許されてはならない。

3 立ち上がった区域外避難者たち
 私たちは、このように切り捨てられようとしている区域外避難者の救済を目指すべく、福島原発被害首都圏弁護団を立ち上げた。区域外避難者も、様々な事情からやむにやまれず避難を選択せざるを得ない状況に追い込まれているのであり、決して「自主的」に避難を行っているのではない。その意味で、私たちは、残念ながらすでにマスコミ用語となってしまっている「自主的避難者」という言葉はあえて使わず、「区域外避難者」という言葉を用いている。
 区域外避難者の中には、当初裁判を起こすことに抵抗を感じる人も少なくなかった。それは、上記のように心ない者からのバッシングなどを恐れたためである。それだけに、上記の集団提訴は、原告たちの大変な勇気を振り絞っての提訴であった。
 しかし、不思議なもので、誰かが提訴に踏み切ると、周りの人々も勇気が出てくる。上記の提訴後、それに勇気づけられたのか、私も裁判に加わりたいという避難者の方々が増えてきた。今後は、こうした避難者を原告として、第3次提訴も行う予定である。
 さらに、福島原発被害東京訴訟サポーターズという支援団体が自主的に立ち上がり、法廷傍聴や動員などを積極的に行ってくれている(下記参照)。

4 今後のたたかい
 裁判は、本年9月11日(水)午前10時より、東京地裁103号法廷にて第2回期日をむかえる。そこでは、原告本人及び代理人による意見陳述がなされる予定である。
 今後は、裁判の中で加害者である東電と国の責任を追及するとともに、被害の実態を明らかにしていく。
 ようやく裁判というたたかいの火ぶたが切って落とされたが、たたかいはまだ始まったばかりである。被害の線引きや被害者の切り捨ては決して許してはならない。今後もこのたたかいを大いに盛り上げて行きたい。

 弁護団のブログ→http://genpatsu-shutoken.com/blog/
 東京訴訟サポーターズのブログ→http://311himawari.seesaa.net/
 (なお、サポーターズには、どなたも無料でご登録いただけます。ご登録いただきますと、今後の裁判の情報などをお伝えしますので、是非ご登録下さい!)

吉田悌一郎(よしだ ていいちろう)さんのプロフィール

渋谷共同法律事務所。東京都出身。2004年弁護士登録。
福島原発被害首都圏弁護団事務局長。
「3.11 福島から東京へ 広域避難者たちと歩む」山吹書店、2013年、編著






 
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