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特定秘密保護法案の成立は国会の自殺行為だ!
だれが切望している法律なのか

2013年10月28日



清水勉さん(弁護士・日本弁護士連合会情報問題対策委員会委員長・秘密保全法制対策本部事務局長)


 去る10月25日、政府は、特定秘密保護法案(「法案」)を閣議決定し,衆議院に提出しました。
 法案の骨格は、官僚が、一定の情報を「特定秘密」に指定して、これを適正評価制度で適性と判断された者だけを取扱者とし、それ以外の者に内容を知らせることを漏えいとして処罰し、「特定秘密」を「著しく不当な方法」で取得したり、取得しようと計画したりすることも処罰するというものです。
 この法案に対する国会議員の態度はとても不思議です。
 民主党政権のときから法案の準備が始まっていましたが、どのような法案が作られようとしているのかを知っている国会議員はほとんどいませんでした。自民党・公明党政権になってからも同じです。ですから、積極的に賛成と言えるはずなどなかったのです。しかも、最近になって明らかになった法案の内容によると、「特定秘密」を国会議員に見せるかどうかは官僚の裁量。見せてもらった国会議員が他の人に見せたり話したりしたら5年以下の懲役刑という罰則が用意されていました。これでは、国会(議員)は行政機関の不正などを追及することはできません。そのことがはっきりしているにもかかわらず、法案の内容もはっきりわからない時点から、与党の国会議員のほとんどが、さらには野党議員の一部も賛成するだろうと予想されています。国会(議員)が自ら国権の最高機関性(憲法41条)を放棄してしまおうというのですから、驚きです。まるで、行政監視は自分たちの仕事ではないと言わんばかりです。小選挙区制のゆえ公認候補、政党助成金がほしいばかりに、思考停止になって考えないようにしているとしか思えません。

 我が国にはすでに秘密保護法はあります。国家公務員法、外務公務員法、自衛隊法、MDA法、刑事特別法などです。処罰されることになれば、懲戒免職になるでしょうから、経済的困窮は必至です。それを更に広く重く処罰する必要があるのか疑問です。

 法案では、「出版又は報道の業務に従事する者の取材活動」を尊重するような規定が設けられていますが、「業務」にしていない人の取材活動は尊重されませんし、取材する側が処罰されなくても、取材対象者が重く処罰されるのでは、取材の自由、報道の自由が守られたことにならないのではないでしょうか。
 そもそも法案の第1条によれば,「高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される」ことが立法の動機になっています。そうであれば,情報管理システムの適正化こそが法案の中心になるべきです。ところが,法案ではこの点に関する基本構造や管理ルールなどの規定は全くありません。取り扱う者の監視や処罰の強化ばかりを強調する規定内容になっており,第1条の目的にまったく適合していません。
 このような乖離が起こるのは,なぜでしょう。この法案を作った官僚たちの目的が,そもそも「高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性」に対抗することにないからです。「特定秘密」を指定する官僚たちにしてみれば、自分たちが秘密指定した情報に国会議員も国民も近づけさせないことこそが目的なのです。

 かつての国家秘密法との対比で見ると、法案の特徴は、公安警察が扱う情報が広く「特定秘密」にできることになっていることです。「特定有害活動」の定義には、「公になっていない情報のうち・・・その他の活動であって、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全を著しく害するおそれがあるもの」という無限定なものが含まれ、「テロリズム」の定義には、「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要するための活動」が含まれており、反原発活動や反TPP活動も含まれるようになっています。公安警察が様々なこじつけをして、様々な人々の様々な個人情報を勝手に収集し、勝手に利用し、これに疑問を抱く人が公安警察活動を暴こうとすると、逮捕され、家宅捜索をされ、携帯電話やパソコンなどを押収され、中の情報をすべて見られ、すべてコピーされ、何に利用されるかわからないという事態が、平然と起こります。検察が起訴猶予にしてくれれば、公安警察は特定秘密の内容を公開法廷に出さなくて済みます。
 公安警察の強化が必要な時代なのでしょうか。そのことからまず考えるべきです。

 

◆清水 勉(しみず つとむ)さんのプロフィール

1953年生まれ。弁護士。東京弁護士会所属。さくら通り法律事務所所属。
日本弁護士連合会情報問題対策委員会委員長・秘密保全法制対策本部事務局長。「明るい警察を実現する全国ネットワーク」代表。
共著:「住基ネットとは何か」(明石書店)、「秘密保全法批判—脅かされる知る権利」(日本評論社)、「『マイナンバー法』を問う」(岩波ブックレット)
民主主義社会の情報の流通の仕方(情報公開とプライバシー保護)を継続的な課題としている。


<法学館憲法研究所事務局から>
当研究所は10月から「2013年憲法フォーラム — 主権者として社会への向き合い方を問う!!(全3回)」を開催しています。その第2回(11月11日(月))では「憲法感覚の培い方」をテーマに、当研究所の伊藤真所長と水島朝穂客員研究員(=早大教授)が参加者の質問や問題提起に回答・コメントし、参加者とともに憲法についての認識を深めます。多くの方々にご参加いただきたく、ご案内します。



 
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