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平成24年衆議院議員選挙無効訴訟に対する平成25年最高裁判決の意義と問題点

2013年12月9日



黒田健二さん(弁護士・本件訴訟弁護団・黒田法律事務所代表)


 平成24年衆議院議員選挙無効訴訟に対して、最高裁は、平成25年11月20日に選挙の効力を無効とまではしないけれども、憲法違反の状態にあったとする、いわゆる「違憲状態判決」を下しました。この平成25年最高裁判決をよく読むと、以下の2点で意義のある判決といえます。

 第1に、平成25年最高裁判決は、従来の最高裁大法廷が踏襲してきた選挙区割りの合憲性判断の基本的枠組みとしての3段階の判断手法を維持しながらも、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っている旨の第1段階の司法判断、すなわち、「違憲状態判決」がされれば国会はこれを受けて是正を行う責務を負うものであることを、歴史上初めて明らかにしました。

 これまで、衆議院議員選挙における投票価値の格差問題について、最高裁は、いずれの判決においても、(1)選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているか否か(すなわち、違憲状態にあるか否か)を第1段階で判断し、(2)違憲状態に至っている場合に、憲法上要求される合理的期間内に是正がなされなかったとして区割り規定が憲法に違反するに至っているか否か(すなわち、是正のための合理的期間を経過したか否か)を第2段階で判断し、(3)区割り規定が憲法に違反するに至っている場合に、選挙を無効とすることなく選挙の違法を宣言するにとどめるか否か(すなわち、事情判決の法理を適用するか否か)を第3段階で判断するという、3段階判断の手法を採ってきました。

 平成25年最高裁判決は、このような3段階判断の手法が採られてきたのは、憲法の予定している「司法権」と「立法権」との関係に由来すると述べました。すなわち、裁判所は、選挙制度について投票価値の平等の観点から憲法上問題があると判断したとしても、自らこれに代わる具体的な制度を定め得るものではなく、その是正は国会の立法によって行われ、しかも、その是正方法について国会が幅広い裁量権を有することを理由に、国会が、上記の3つの各段階において裁判所が示した判断を踏まえて、所要の適切な是正の措置を講ずることが憲法の趣旨に沿うと判断しました。

 第2に、平成25年最高裁判決は、定数配分の0増5減の措置を含む平成24年改正法について、投票価値の平等という憲法上の要請に反する「1人別枠方式」の構造的な問題が最終的に解決されているとはいえないとしました。

 上記の2点で評価できるものの、平成25年最高裁判決は、以下の2点で問題があり、残念な判決と言わざるを得ません。

 第1に、(1)国が投票価値の不平等の合理性を基礎づける事実の主張・立証責任を負うこと、又は、(2)国会の裁量権の対象となる選挙制度の問題を、@選挙区制度の仕組みの問題とA議員定数の配分の問題とに二分化し、A議員定数の配分により投票価値の不平等をもたらすような国会による裁量権の行使が原則として認められないことを、明らかにしませんでした。

 第2に、可能な限りの投票価値の平等(人口比例選挙)の要請が憲法の定める国民主権の原理および代表民主制の統治機構から論理必然的に導き出されるという原告らの主張に対して、何の判断も示しませんでした。

 なお、原告らの主張は、すでに平成25年03月26日に広島高裁岡山支部(片野悟好裁判長)が「国政選挙における投票価値の平等は、国民主権・代表民主制の原理及び法の下の平等の原則から、憲法の要求するところである。」と判じ、憲法の定める統治機構から投票価値の平等が導かれることを明示的、積極的に認めています。

<法学館憲法研究所事務局より>
本判決の全文(PDF)
多数意見要旨(PDF)

◆黒田健二(くろだ けんじ)さんのプロフィール

黒田法律事務所・黒田特許事務所 代表弁護士・弁理士。
大学を1年で中退した翌年、独学で1983年度の司法試験に全国最年少の20歳で合格。1986年より日本及び香港で弁護士実務経験を積んだ後、中国(上海復旦大学法学部高級進修生課程)、デンマーク及び米国(デューク大学ロースクール)で中国法、EC法及び米国法を学ぶ。米国ニューヨーク州弁護士登録後、1995年に黒田法律事務所・黒田特許事務所を設立。司法試験直後から新しい分野(中国、コンピュータソフト、バイオ、環境保護)に特化した弁護士を目指し、中国案件を20年以上手がけている。中国語・英語に堪能で、国際案件および交渉の経験も豊富。
黒田法律事務所には、現在、弁護士・弁理士23名(内、中国弁護士6名、台湾弁護士2名)を含む合計約90名の所員が在籍。同事務所の顧客数は、3000社を超える。同事務所は、中国北京市、上海市、広州市の三都市に日本人弁護士と中国人弁護士を常駐させ、日本企業の中国ビジネスをサポートするとともに、中国における投資ビジネス、特許出願、知的財産権分野においては、長年の実績を駆使し、中国の法律事務所との強力な提携関係を活かして数多くの日本企業の中国ビジネスを成功に導いている。また、2009年6月には、日本の法律事務所として初めて台湾台北市に事務所を開設し、日台企業間の紛争解決に従事している。
日本経済新聞「活躍した弁護士ランキング」では2012年の外国法部門2位および知的財産部門5位に選出される。

主な著書:「インドネシア進出完全ガイド」、「台湾法Q & A」、「人治国家 中国のリアル」、「Q & A 中国進出企業の労務ハンドブック」、「中国進出企業のビジネス・法律実務トラブル対策事例」、「図解でわかる デジタルコンテンツと知的財産権」他論文多数





 
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