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社会問題としての「ブラック企業」について

2014年1月13日



佐々木亮さん(弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表)

 

■労働者を「使い潰す」企業
 昨年、言葉として一気に広まった「ブラック企業」。では、「ブラック企業」とはどんな企業を指すのか、とたびたび聴かれます。元々ネットスラングから始まったものですので、定まった定義があるわけではありませんが、ごく簡単に言えば、「働く者を使い潰す企業」がブラック企業の典型であると言っていいと思います。

 ブラック企業が人を使い潰す典型的な手法は長時間労働です。しかも、残業代を払わないで長時間働かせることが少なくありません。また、パワーハラスメントやいじめなども多く、これは精神的な嫌がらせやいじめにとどまらず、本当に暴力をふるうケースも少なくありません。このような、ふつうの人間同士だったら到底起こらないような人格侵害が行われています。

■非正規雇用の増大がブラック企業を生んだ
 ブラック企業の問題には、近年の非正規雇用の増大の問題が深く絡みます。

 かつて日本では、多くの労働者が正社員として働き、長く働けば賃金が上昇するという、安定した雇用が当然でした。ところが、今の雇用情勢は、非正規雇用が35%であり、特に若年層ではその割合はより高くなっています。そして非正規雇用の収入は上昇しないことが多く、正社員の収入に比べると格段に低いという現実があります。

 労働者は雇用の安定を求めます。それは、安定した雇用によって、安定した給料をもらい、それにより安定した生活を送れるからです。安定した生活が、結婚・出産・育児へと社会を時代へ繋ぐ営みにつながり、そうでなくても、安定した生活だからこそ自分の好きなことをやれるという自己実現につながります。

 そして、ブラック企業は、労働者を正社員で雇います。たとえブラック企業でも、いったん正社員として入社すると、そこを辞めることは決断が必要となります。なぜなら辞めた後、次の職は非正規雇用かもしれないからです。先ほど述べたとおり、非正規雇用は拡大し続けています。労働者としては、辞めた後の不安がつきまとうのです。そして、この不安につけこんで、ブラック企業は過酷な労働条件を押しつけてくるのです。

 これについて、「ブラック企業は辞めればいいだけ」と言う人もいます。たしかに、対処法として辞めることは間違いではないかもしれません。しかし、先ほど指摘したような今の雇用情勢では、ブラック企業なのに辞められない事情を理解する必要があります。安易な「辞めればいい」という考えは、「辞めない方が悪い」という考えにつながります。そして、この考えは、ブラック企業の存在を肯定した上にその責任を労働者に押しつけるとても残酷な物言いなのです。

■他人事ではないブラック企業
 ブラック企業は社会問題です。社会問題ですのでブラック企業に勤めていない人にも関わりがあります。

 まず、ブラック企業は、ルール違反をしながら利益を上げています。これに対し、ルールを守る企業は勝てません。自らもブラック企業化するか、もしくは競争に負け消えていくか、いずれかしかありません。結果として社会に残るのはブラック企業ばかりとなります。このようにブラック企業を対岸の火事だと放置しておくことは社会の害でしかないのです。

 さらに、ブラック企業の被害者は若者が中心だということも深刻です。言うまでもなく、若者は未来の日本の社会を担う存在です。しかし、ブラック企業は、その若者の心身を破壊してしまいます。ブラック企業に使い潰された労働者の中には生活保護などによってしか生活できなくなる方も多くいます。当然、その費用は国民の税金から出ています。労働者を使い潰して利益を上げたブラック企業は何の責任も取らず、そのツケを社会に押しつけているのです。

■ブラック企業をなくそう!
 被害にあっている多くの労働者の泣き寝入りをなくすことが、まずは第一歩です。その場合、労働組合や弁護士など、専門家がサポートします。
 また、中期的にはワークルール教育について、経営者、労働者ともによく知ることも大事です。
 そして何より、労働組合が大切な存在です。労働組合が強ければブラック企業は勝手なことはできないのです。組織率が低くなる一方ですが、もう一度、その存在意義・価値を見直し、団結の再生を図ることが一番のブラック企業対策となると思います。

◆佐々木亮(ささき りょう)さんのプロフィール

弁護士(東京弁護士会)、旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団代表。ブラック企業大賞実行委員。





 
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