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今週の一言

 

平和と子どもの権利

2014年7月14日



児玉勇二さん(弁護士)

 

1、歴代内閣はこれまで、武力行使が憲法上認められるのは、自国を守る個別的自衛権のみで、他国を守るための集団的自衛権の行使を禁じてきた。しかし7月1日の第二次安倍内閣は公明党との協力ができたと閣議決定で、日本が武力行使の「新3要件」を満たせば、個別的、集団的自衛権と集団安全保障の3種類の武力行使が憲法上可能とした。
 アフガニスタン戦争やイラク戦争のような戦争をアメリカが引き起こした際、自衛隊が戦闘地域まで行って軍事力行使を、軍事支援を行うということになる。そのようなことはしないと、安倍首相は1日の記者会見で強調するが。
 ソウル大学日本研究所所長 朴x熙(パク・チョルヒ)氏は、『今回の決定は、戦後日本の安保政策の大転換だ。それなのに、憲法改正ではなく閣議決定による憲法解釈の変更という手法を使った。世論調査を見ると、日本でも過半数が反対している。憲法改正はできそうにないから、閣議決定で中身を変えてしまおうというやり方は、日本の民主主義にとって危険だ。
 国民的な理解、納得がないうちになぜ急いで決める必要があるのか、その説明も足りない。日本の民主主義は健全なのか、という疑問を国際社会から持たれても仕方がない。
 もう一つの懸念は、安倍政権がこの問題を「歴史修正主義」に基づく歴史の見直しと同時に進めていることだ。安倍晋三首相は靖国神社に参拝し、旧日本従軍慰安婦をめぐる河野談話の検証にも踏み切った。その中で防衛体制も強化することが、どれだけ周辺国の疑心暗鬼を生んでいるか、まったく気を使っていない。(中略)
 武力行使の新3要件には、『「密接な関係」にある他国への武力攻撃とか、「明白な危険」などの言葉が出てくるが、解釈次第でいくらでも広がる可能性があり、疑問や懸念は尽きない。』(7月12日朝日新聞)全くそうである。
 私は、今、東京大空襲裁判の結果に基づき、裁判の判決の中で、立法化を進めるべき旨の判示に依拠して援護法の立法運動を進めている。七生養護学校裁判も教育への不当支配禁止の判決に基づき、今、種々行われている国や自治体の教育への政治的不当介入支配に対する闘いと、東京都も国も、これを無視しようとしている中で、国連に申し立てを行なっている。そして、いじめを口実として安倍内閣は地方教育行政法の戦後の民主化に寄与した教育委員会制度を解体し、国や首長の教育への介入を強めようとした安倍教育再生のように海外で戦争できる国家主義教育と、世界中で大企業が活躍しやすい新自由主義教育を進めようとする法改正に対して、180人の呼びかけ協力者を募り、反対声明の会を作って種々の反対活動を行っている。また、「コスタリカに学び平和をつくる会」を市民運動としてやってきて、今こそコスタリカの真の積極的平和主義を、安倍の偽の積極的平和主義に対峙して、真に平和をつくる活動をしている。

2、東京大空襲裁判は、私自身、1歳半の時に浅草で大空襲に遭い、母親におぶされて火の粉をふり払いながら逃げ回り、ある防空壕に入ろうとしたら断られ、その後、母親は死体を踏みつけながら逃げ回り、入ろうとして断られた防空壕は空襲で全滅した体験をしていても、東京大空襲裁判に加わって初めて空襲のことを多く知った。
 今まで軍人軍属には54兆円も補償され、その補償の対象も拡大され、死亡者の兄弟姉妹まで補償され、戦争犯罪者も補償されるようになったりし、原爆被害者にしても沖縄戦地上戦の被害者にしても、平和憲法を掲げ闘って、金額は少ないにしても補償されているが、空襲被害者は全く一銭も補償されていない。
 ファシズム日本に対し正義の戦争をしたというアメリカは、早く戦争を終わらせることが正義という名の下で敵国の国民たちに恐怖感を味わわせ、民間無差別爆撃を実行した。
 隅田川に浮かんでいた死体は、子ども、女性、老人が殆どのように、国際法違反の民間無差別爆撃をアメリカが行った。
 このような空襲で被害を受けた障害者の人々のみならず、戦災孤児、そして、今も当時の戦争のトラウマで苦しんでいる人たちがいることを考えると、安倍首相は「イラク戦争、アフガン戦争のようなことはしません」と言っていたことが、いかに嘘で虚偽であることか、よく分かる。

3、中南米の小国コスタリカは、日本の憲法9条と同じように、第二次世界大戦直後、軍隊を憲法上放棄した規定を置いている。しかしながら、日本の場合は、この規定を置いていながらも戦後、警察予備隊から保安隊、自衛隊へと軍隊が作られ、もはや現在軍事費は世界上位となるまでに至っており、アメリカと共同でむしろアメリカの指揮のもとで直ちに戦争がすぐできるような訓練が行われている。軍隊としての装備も肥大化・近代化し、武器輸出禁止三原則もかなぐり捨てられて、もはや完全にアメリカの核戦争の体制に組み込まれ、この備えこそが抑止力として平和が保たれるとしている。
 一方のコスタリカは、国家予算の30パーセントを、軍隊を捨てた部分を教育費に回し、小さいときから、紛争は徹底した話し合いで解決する、選挙は国民の民主主義の訓練として、小さいときから実質的に参加する。そして、まわりに紛争があれば周りの国に対して、紛争を平和的解決できるよう働きかけをし、何人かの大統領がノーベル平和賞を受賞された。教育も日本の前の教育基本法と同じような規定を置いて、人格の完成を教育の一番の目標とし、国内には、武器も軍隊も未だおかず、国境は警察力によって守られている。
 第二次安倍内閣は、積極的平和主義をとると国民に説明し、積極的にアメリカとともに戦争をする国として、話合い解決より積極的に武力を備え、極めて危険な道を歩もうとしている。
 しかしながら、真の積極的平和主義は、コスタリカのように戦争がないことが積極的平和主義でなく、戦争を起こさないこと、そして、生活のあらゆる場面で戦争を起こさない国に作り上げること。そのためにも当然軍隊は必要ないことのみならず、生活も福祉も教育もあらゆる場面で平和を作り上げる。そのことが国民の平和の国家に対する信頼感も生まれ、しかも、国際的にも信頼感がうまれ、このことが戦争を起こさない基本原則として、これが普通の国としている。
 コスタリカがまわりの国から信頼されていることが戦争を起こさない大きな力となっている。
 これが真の積極的平和主義であり、これこそが戦争を起こさない力であり、最近の集団的自衛権解釈改憲反対の多くの方の中にも、9条があったからこそ、海外でも戦争参加・武力行使を阻止してきたものであり、外国から日本が平和国として信頼されている大きな力で、これこそがコスタリカの積極的平和主義と同じであると考えている。もし、第二次安倍内閣のような、間違った積極的平和主義となるならば、まさしく、まわりの国々からも信頼されなくなり、戦争参加によって反撃され、原発大国として福島の原発の経験から、簡単に空爆を受ければ直ちに核戦争と同様に日本は滅亡することになってしまうものと私は懸念している。

4、わたしは昨年全国学校事故弁護団を作ったり、今年、地教行法改正反対声明の戦いを起こしたり、また、ここ30年の間に、たとえば世田谷で生まれたチャイルドラインを全国化する活動にも加わり、いじめ体罰虐待で悩む子どもに傾聴というカウンセリング方法で安心して相談できる体制を作り上げた。また、七生養護学校という障がい児の学校での障害ゆえの性に関する悩みを解決するために、教師・父母・生徒一体となった性教育を、石原都知事下の都教委が、海外で戦争する国を目指している都議・政治家が人形・教材を取り上げた事件で、一審・二審・最高裁で勝訴し、戦前の軍国主義の反省のもとで作り上げた旧教育基本法5条の政治的不当支配介入は許されない規定を判決に判示させ、そして教育委員会は政治家が不当介入したときに教師を保護しなければならないという重要な司法判断を導きだした。いま教育委員会を解体し、国、首長の権限を強化しようとする動きの中、教育委員会こそ政治家の不当支配を阻止する役割を有しているという判断・判示をもって、これを武器として、教師たち弁護士ともに、第二次安倍教育再生に対し戦っている。
 そして最近いじめ自殺が社会問題となっており、いじめの原因がまさしく70年代からの新自由主義教育、すなわち一部のエリートをつくりあげ、その他の多くの国民はエリートに従うという受験競争という教育の中で、国連からも3回勧告があったように、過度の教育競争こそが子どもたちのイライラや成長発達を妨げる、これがいじめ自殺の本質的原因である。しかも、これに対応するためには最高裁学テ判決がいう、教育は生徒と教師、子どもと父母との人格的接触こそがもっとも教育の重要な本質・要素であり、ところが今の日本の教育はこの人格的接触を失わしめようとし、家庭においても貧困化が進み、父母と子どもとの向き合う関係を失わしめ、国連の子どもの権利委員会からもこの貧困化を解決しなければならないという勧告が出されている。そして教師は70年代以降の教師へ生徒への管理主義が進み、ますます教師に余裕がなくなり、これを解決することがいじめの近道であるにも関わらず、このような近道が実現できず、いじめが解決しないことを明らかにし、このことがいじめの本質的な解決方法であることを提示しようとしている。これらも前述した教育の国家主義化、新自由主義化の表れから起きている。

5、このような積極的平和主義を掲げ、平和憲法、旧教育基本法、子どもの権利条約を生活教育現場に生かすことが、今日の集団的自衛権解釈改憲の閣議決定への今後の戦いとして子どもの権利を守り、保障する意味でも重要であることを最後に述べて終わりにする。

◆児玉勇二(こだま ゆうじ)さんのプロフィール

・1943年   東京生まれ
・1968年 中央大学法学部卒業
・1971年   裁判官就任
・1973年   弁護士となる
東京弁護士会 子どもの人権と少年法に関する委員会委員
日本弁護士連合会 障害のある人に対する差別を禁止する法律に関する調査研究委員会委員
チャイルドライン支援センター監事
元立教大学非常勤講師「人権論」

主な著書に
『子どもの人権110番』(共著) 1987年6月 有斐閣
『子どもの人権ルネッサンス』 1995年8月 明石書店
『障害を持つ子どもたち』(編) 1999年2月 明石書店
『ところで人権です』 岩波ブックレット490 日弁連編 (共著)1999年9月
『少年犯罪と被害者の権利』(共著) 2001年4月 明石書店
『障害のある人の人権状況と権利擁護』(共著) 2003年6月 明石書店
『テキストブック 現代の人権』(第3版)川人博編 (共著)2004年4月「子どもの人権」
『岩波ブックレットNo.765 性教育裁判〜七生養護学校事件が残したもの〜』2009年9月(岩波書店) などがある。




 
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