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『憲法大好き』−全ての条文を読む

2014年7月21日



吉田豊さん(愛知・憲法学習研究会代表)

 

 この本は「愛憲派」がつくった一冊です。
 愛知・憲法学習研究会は、高等学校に勤務する社会科教員が20年以上前から、その時々に集まって、「日本国憲法の今」について学び合いながら、どう授業の中で取り上げていくのかを交流してきました。断続的な研究会ですが、それなりに教育活動の励ましになりました。今では全員が50代と60代で、教育現場からだんだんと遠ざかっています。それでも、高校や大学、あるいは地域の社会教育の講師などでそれぞれに憲法学習にかかわっています。(本当にささやかな努力を重ねています。)
 私たちの世代は、戦後生まれですが、戦争体験者に囲まれた世代でもあります。また、ベトナム戦争を通じて、日本が間接的にせよ加害者になっているという意識を持った世代でもあります。沖縄や安保を通じて、主権を考えた時代を過ごしてきました。社会のなかで生起するさまざまな差別や排除・抑圧にも目を閉ざすことはできませんでした。それらは、すべて憲法とどこかでかかわっています。たまに集まるだけでしたが、研究会の場は、こうした経験知をそれぞれに深めるものでした。
 第二次安倍内閣の成立を機に、改憲の動きが強まっているという意識が高まり研究会も再結集しました。あらためて憲法のすべての条文をきちんと読み、現実生活の中でどんな「憲法問題」があるかを学ぶ素材を提示しようと、『憲法大好き』の執筆にとりかかりました。6人が、それぞれの章を分担して報告し、討論をする。自分が持っている資料を提供しあう。また、地域の9条の会などの関係から学んだ皆さんの疑問も出ました。そんな報告・討論を繰り返してきました。また、自民党の改憲草案(2012年)についても検討素材にして、憲法の値打ちをより鮮明にするようにしました。自民党の改憲草案は、憲法のどこを壊そうとしているのかが大変に分かりやすく、参考材料になりました。これまでは、「高校生の社会科学習のため」の研究と教材開発でしたが、今回は「市民のための憲法学習」教科書になることを意識した研究会になりました。そして、たまたま代表があいち労働学校にかかわっていることもあり、学習の友社から『憲法大好き』(PDF)の書名で出版させてもらいました。学習の友社のこれまでの出版物とは趣が異なるという意味では注目を集めているのですが、宣伝・普及はまだまだ限定的です。なんと言っても、最近は憲法関係の書籍が次々に発行あるいは再版されています。争点だけを深く解説する本も全条文を扱う本もあります。諸団体が出している憲法読本もいくつもあるようです。
 そうした中、『憲法大好き』は条文とテーマごとに読み合わせて、語り合えるような本をめざしてきました。同時に、ワン・コインにこだわって、定価500円プラス税という価格に設定しましたが、それほど目立つ本にはなっていません。
 幸いなことに、長野県下伊那郡の喬木村9条の会では『憲法大好き』を使用しての学習会が継続的行われています。また、三重県の鳥羽市などの9条の会でも普及をしていただいています。また、愛知・労働者学習協でもこの本を使った連続学習会をやろうという提案があります。閣議決定で解釈改憲が強行される中で、安倍内閣への憤りとともに憲法そのものに対する学習への意識も高まってきています。私たちは、とにかく「憲法条文そのもの」の全てを読んで、9条にとどまらず、一人ひとりが好きな条文を発見してほしいのです。『憲法大好き』は、その名の通り、愛憲派が広がることを願っています。
 研究会では、解釈改憲という方法は立憲主義に反するものであり許されない、と本の中で批判しています。同時に、明文改憲がなされるまでは、現行憲法が国民の人権を保障する最高法規ですから、解釈や法律・命令が憲法に反するかぎり無効であり、この憲法を学び続け、憲法を活用する人を増やし続けたいと思います。改憲に向かう空気や慣れが起きないように、憲法意識を磨き続けるために、研究会として今後何ができるのか。『憲法大好き』への反応も受けとめて、私たちも学び続けたいと考えています。研究会が教員の集まりであるということで、それぞれに「教え子」への責任のようなものを感じています。教育現場での実践は、生徒の前に立つ者が誠実であることを求めています。「学び」の一里塚として『憲法大好き』という本が生まれたのですから、私としては、次の一里塚を見据えて歩みたいと思います。(研究会代表 吉田豊)

◆吉田豊(よしだ ゆたか)さんのプロフィール

1951年1月11日、愛知県一宮市生まれ。
名古屋大学文学部哲学科卒。
名古屋市立大学大学院経済学研究科(修士課程)修了。
愛知県立旭丘高校、緑丘商業高校で社会科担当。
愛知労働学校校長。同朋大学講師。
著書/『世界の平和と友好』『経済開発と生活改善』(筑摩書房)、『拘泥講座』(共著、汐文社)、『世界の憲法』『憲法の解説』(共著、一橋出版)




 
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