法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

核兵器はこの地球上のどこにでも使わせてはならない

2014年8月4日



山本英典さん(一般社団法人東友会 業務執行理事)

 

T 東友会の結成
 東友会は、東京に住む原爆被爆者の組織です。東京在住被爆者は、最高時は1988年の10,365人でしたが、2014年3月現在では6,261人です。全国では19万2719人です。
 被爆者運動は、1954年3月のビキニ水爆実験を契機に盛りあがった原水爆実験禁止・廃絶の運動の広がりに励まされて始まりました。日本原水爆被害者団体協議会=略称 日本被団協=が結成されたのは1956年8月。
 東京の被爆者たちが東友会=東京都原爆被害者団体協議会=を結成したのは1958年11月でした。
 東友会の結成宣言では「私達はあらゆる階層にわたっていますが、政治上、思想上、宗教上等の立場をのりこえて被害者であるという唯一の共通点に立って協力し、お互いの健康を保持し生活を向上させていき、ひいては原水爆のないほんとうの平和にする」「ために純粋に、素朴に、協力したいと決意する」と述べています。

U 被爆者運動の目標
 被爆者運動は、会結成当時から2つの運動の柱を立てています。
 1は、核兵器の廃絶です。
 2は、原爆被害への国の補償です。
 核兵器は人類と共存できない悪魔の兵器であり、人類の未来のためには廃絶しかないと、被爆者は国の内外で被爆の実相を語り、訴えてきました。被爆者の訴えで、国際世論が大きく核兵器廃絶の方向に向かってきたことを実感できます。
 国家補償を求める運動では、国家補償の法はまだできていませんが、生存する被爆者の健康と暮らしの改善に役立つ法律と条例を作らせてきました。しかし、原爆で殺された人びとには、国から、何のお詫びの言葉もなく、償いに関わる措置もなされていません。

V 立法運動
 結成以来56年間に、東友会は全国の被爆者組織とともに運動をつづけ、4つの法律と1つの条例を制定させました。
 1は、原爆医療法=1957年4月施行=被爆者の定義と被爆者健康手帳を交付
 2は、原爆特別措置法=1968年9月施行=被爆者に健康管理手当など手当を支給
 3は、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」=略称 被爆者援護法=1995年12月公布=現行法
 4は、集団訴訟終結救済基金法=2009年12月公布=集団訴訟の敗訴原告も救済
 条例は、東京都原爆被爆者援護条例=1976年10月施行=国施策に上乗せ、二世対策も
 これらの法律・条例は、被爆者運動によって毎年のように見直され、法改正が20数回にもおよんでいます。
 日本の民衆運動で、これほど多くの法律、条例を作らせた運動は他にないでしょう。

W 裁判運動
 原爆は無差別、大量に人命を奪い、身体に傷を負わせ、69年たってもなお、さまざまな後障害を発症させています。
 このような兵器は国際法違反であり、廃絶させるべきだとして、原爆そのものの違法性を問う裁判が、東京地裁に1963年に起こされました。「下田原爆裁判」と呼ばれるものです。
 判決は「原爆投下は国際法に違反する」と明示しました。これは後に国際司法裁判所での審理に生かされ、「核兵器の使用と威嚇は一般的には国際法違反」という判断につながりました。
 被爆者対策でいま焦点になっているのは、原爆症認定制度です。これは放射線の影響でがん、白血病などを発症した被爆者に「医療特別手当」を支給する制度ですが、国はこれを極端に厳しく審理・認定するため、10年前までは全被爆者の0.8%、2000人程度しか認定していませんでした。
 このため原爆症認定集団訴訟が提起され、被爆者側の勝訴がつづき、認定基準が4度も改正され、認定者が増えました。それでもまだ8793人、全被爆者の4%にすぎません。
 そのため、2010年「ノーモア・ヒバクシャ訴訟」がおき、原告109人が全国7裁判所で裁判をつづけています。これまでに大阪、熊本両地裁で勝訴、岡山地裁は国に国家賠償を命じました。原告34人が勝訴しましたが、厚生労働省は国敗訴の5人について不当にも控訴をしました。しかしその一方で、自庁取り消しで20人を認定する事態に追い込まれています。

X 今後の要求と課題
 私は12歳の時、長崎で被爆しました。爆心地から4.2キロですので、直爆線量はわずかだそうです。しかし被爆後4日以内に爆心地から800メートル付近に入市したため、残留放射線を浴びたと言うことで、2008年に胃ガンで認定されました。その後狭心症になり、完全房室ブロックでペースメーカで心臓をコントロールしなければならない状況になり、2012年9月には心臓バイパス手術を受けましたが、私の心臓疾患には「放射線起因性がない」と言うことで認定却下となりました。
 2014年1月には大腸がんを開腹手術で切除。7月に原爆症と認定されました。
 最近の研究で、遠距離であっても直爆放射線、残留放射線、放射性粉塵による人体被害が発生していることが明らかになっています
 私のように、被爆地点は遠距離でも、爆心地付近に立ち入った人は多く、いわゆる「科学的知見」では説明できない被爆の実態に苦しんでいる人が多くいます。
 69年たっても人体に悪影響をもたらす核兵器はこの地球上のどこにでも、使わせてはならないと、私は叫びつづけます。放射線被害をうけた人びとには国として十分な償いをするよう要求していきたいと思っています。

◆山本英典(やまもと ひでのり)さんのプロフィール

現在、81歳。
一般社団法人東友会 業務執行理事
東京都原爆被爆者団体協議会副会長




 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]