法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

想像力の翼を味方につけて
―秘密保護法ミュージカル「THE SECRET GARDEN―嘘の中にある真実―」によせてー

2014年9月29日



海渡 雄一さん(弁護士・「秘密保護法」廃止へ!実行委員会)

 

驚くような結末
 これは秘密保護法違反事件とその裁判を描いたミュージカルです。最初の舞台は原子力発電所です。私もトータルアドバイザーとして、スタッフの皆さんとシナリオ作成の討論に加えていただきました。
 ネタバレになるといけないので、詳しいことは記せませんが、このまま秘密保護法が施行されてしまうと、確実に近未来に起きそうなケースが描かれ、最後にはアッと驚くような結末が用意されています。

政府はウソをつく
 私たちは、あらためて市民の知る権利を奪い、民主主義を崩壊させ、戦争への途を掃き清める秘密保護法の廃止を求める署名を集め、広範な野党の共同による廃止法案の再提出を求めていきたいと考えています。
 私は、秘密保護法は戦争の準備のために政府が国民をだまし、そのウソを暴こうとするジャーナリストや市民を葬り去る法律だと説明してきました。
 1931年9月18日、柳条湖(りゅうじょうこ)付近で、日本の所有する南満州鉄道の線路が爆破されました。関東軍はこれを中国軍による犯行と発表することで、満州における軍事行動と占領の口実としました。しかし、この事件は、関東軍高級参謀板垣征四郎大佐と関東軍作戦主任参謀石原莞爾中佐らが仕組んだ謀略事件だったのです。
 アメリカ軍が本格的にベトナムに介入するきっかけとなった1964年8月の北ベトナム海軍による魚雷攻撃事件のうち、2回目に起きた8月4日の事件は、8月7日の議会の宣戦布告の理由とされたが、ペンタゴンペーパーズによって、アメリカ側が仕組んだ捏造された事件であったことが明らかになっています(『ベトナム秘密報告 米国防総省の汚い戦争の告白録』(1972年、サイマル出版会))。
 2003年2月6日、国連でパウエル国務長官が説明したイラクが大量破壊兵器を保有しているという説明は、CIAの情報に基づくとされましたが、長官退任後にパウエル氏自身がこの発言は間違いだったと認め、「人生最大の恥」とまで述べています(2004年4月3日、BBC)。

運用基準で浮かび上がる秘密保護法の欠陥
 秋の臨時国会は9月29日に開会します。7月に秘密保護法施行のための施行令と運用基準案がパブリックコメント(パブコメ)に付され、難解な内容にもかかわらず、2万4000件の意見が提出された。政府は情報保全諮問会議の委員の意見も聞き、施行令と運用基準案が9月10日に決められ、10月にも閣議決定と伝えられています。
 しかし、この運用基準の修正点の多くは些末なものに過ぎず、恣意的な特定秘密指定の危険性は何ら解消されていません。むしろ秘密保護法には、違法・不当な秘密指定を禁止する明文規定がないこと、多くの特定秘密が市民の目に触れることなく廃棄されることとなる可能性があること、独立した公正な第三者機関が存在しないこと、実効性のある公益通報制度がないこと、適性評価制度は評価対象者やその家族等のプライバシーを侵害する可能性があること、刑事裁判でも特定秘密は必ずしも提供されないこと、ジャーナリストや市民が刑事罰の対象とされるおそれがあることなど、法自体の深刻な問題点が浮き彫りになってきています。

「違法行為は特定秘密に指定してはならない」
 私たちは、パブコメ意見の中で、運用基準で法令違反の隠蔽を目的として秘密指定してはならないとしている点について、「目的」を要件にすることは不当で、違法行為そのものの秘密指定を禁じるべきだと主張しました。これに対して、政府は、運用基準案を改訂し、行政機関による違法行為は特定秘密に指定してはならないことを明記しました。このような基本的なことは、本来法や政令のレベルで決めるべきことですが、運用基準ではあっても、今後ジャーナリストや市民が違法秘密を暴いて摘発されたときには、無罪を主張する法的根拠となりうるでしょう。我々市民の強い批判の前にして、このような修正がなされたことは、この法の中核部分に根本的欠陥があることを浮き彫りにしたものといえます。この点は、このミュージカルのような事件で最後が有罪判決となるか、無罪判決となるかという点にもかかわる重大な問題なのです。

想像力を働かせ、私たちが議論を続けることが最大の歯止めである
 秘密保護法を克服し、私たちがこの劇に描かれたような未来を見なくてすむようにするためには、この法律がどのように適用され、事件を裁く法廷がどのようなものとなるのか、それが現実のものとなる前に、想像し、表現し、このような未来に「ノー」という意思表示をする必要があります。
 このミュージカルを一人でも多くの方々に楽しんでいただくことによって、秘密保護法の廃止を求める市民に想像力の翼が与えられることでしょう。秘密保護法のある社会に私たちが向き合うために、この劇を見て、話し合いましょう。


秘密保護法ミュージカル「THE SECRET GARDEN―嘘の中にある真実―」
ギルドq.第9回公演
<公演日・開演時間>
10月22日(水) 19:00
10月23日(木) 14:00 / 19:00
10月24日(金) 14:00 / 19:00
10月25日(土) 14:00 / 19:00
10月26日(日) 14:00

※上演時間 約2時間15分

中野区立野方区民ホール WIZホール
(東京都中野区野方5-3-1 野方WIZ)

専用サイト・チケット申し込み
http://musical-guild-q.com/09/

◆海渡 雄一(かいど ゆういち)さんのプロフィール

1955年生まれ。弁護士。東京大学法学部卒。東京共同法律事務所所属。
日本弁護士連合会(日弁連)秘密保全法制対策本部副本部長、監獄人権センター代表、脱原発弁護団全国連絡会共同代表などを務める。2010年4月〜2012年5月日弁連事務総長。憲法に保障された基本的人権を実現することが弁護士の役割だという信条のもと、長年、労働事件、監獄内の人権をめぐる訴訟、原発訴訟等に携わるほか、盗聴法、依頼者密告制度、共謀罪、特定秘密保護法などの問題にも積極的に取り組んでいる。




 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]