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今週の一言

 

女性の声を政治に反映させる

2014年12月15日



金繁典子さん(グリーンピース・ジャパン)

 

 衆議院議員選挙が終わりました。一票の格差と、もうひとつ民主主義にとってとても大切な、解決されるべき深刻なねじれはまたも解消されませんでした。ジェンダーバランスです。

 日本では政治の意思決定の場に女性の割合が極端に低く、国会議員(衆議院)で約8%、世界188カ国(地域)中161位(列国議会同盟の調査・2014年6月1日現在)。先進国の中で最下位というだけでなく世界各国の中でも最下位レベルです。
 地方議員では11.6%(全国フェミニスト議員連盟の調査・2013年)
 これでは女性の声が政治に十分に届いているとはいえません。

 女性の声が政治に反映されることの大切さは何でしょうか。
 ジェンダー平等を人権の観点だけではなくその必要性を強く感じたのが、福島第一原発事故後の原発に関する数々の世論調査でした。各世論調査を詳しくみてみると、男性と女性で明らかに傾向の差異が現れています。脱原発を求める人の全体的な割合は変動するのに、ジェンダーによる傾向だけは変わらないのです。常に女性のほうが男性よりも脱原発を望んでいます。その差は大きいときには20ポイントにも上ります。

 実際、3.11以降に女性たち、とくに50歳以上の方たちから「わたしは原発反対なのだが、夫は『そうはいっても経済が・・』『原発の技術を高めればいい』と脱原発派にならない」という声をたくさん聞きました。
 
 この傾向の差異はどこからくるのでしょうか。政治の場でジェンダーバランスがとれれば政治は変わるのでしょうか。日本とは大きく異なり女性議員が国会で約45%を占め、出生率が高く高福祉の社会として知られるスウェーデンでは何が違うのか。これらの疑問を少しでも解くため2012年の夏スウェーデンに行き、各政党の女性団体やジェンダー関連のNGO、研究機関にインタビューを行いました。

 驚いたのは、インタビューに応じてくれた方たちが男女の傾向の違いを共通の認識としてもち、そのうえでジェンダーバランスが必要だ、とおっしゃっていたことです。
 たとえば穏健党の女性組織副代表(当時)は、「すべての人がそうというわけではないけれど」と前置きしたうえで、男性の傾向として女性よりも@競争を好む Aリスクをとりたがる B縦社会を作る(女性は横の広がりを作る) C短期的な利益を求める(女性は、現状が将来の世代にとっても好ましいかどうかという長期的な視点から利益を考える)などの違いがあると話してくれました。だからこそ、政治的意思決定の場でジェンダーバランスが必要だと。そしてスウェーデンのほぼすべての政党でジェンダーバランスをとること(ほかにも世代と地域バランスが要請されています)が義務として定められている、と。
 そしてスウェーデンでは法律によるクオータ制はないけれども、各政党の女性組織が党を超えて連帯して自分の所属する党の候補者名簿を男女交互にさせているため政治におけるジェンダー平等に近づくことができるといいます。

 日本でも、「政治家と政策研究会」(上智大学法学部教授・三浦まりさんが代表)がおこなった日本の国会議員を対象とするアンケート「国会議員の政治意識と政策志向調査」で、男性は「権力志向」「集金力」「組織への忠誠」などが強く、女性は「他者への共感」や「倫理観」、「ネットワークづくり」などが強いという傾向が表れています(より詳しくは、ウェブマガジン「マガジン9」に連載したコラム「女性と政治と社会のリアルな関係」をご覧ください 。

 そしてこれらの傾向は、政治の結果にも具体的に反映されてきます。ドイツを脱原発に導いたドイツ政府原発問題倫理委員会の委員であり『女性が政治を変えるとき』(立教大学名誉教授五十嵐暁郎さんと共著・岩波書店)の著者でもあるベルリン自由大学教授ミランダ・A・シュラーズ(Miranda A Schreurs)さんもその著書のなかで、女性の政治と男性の政治の違いについて述べています。

 女性の政治は環境、福祉、医療、教育、文化、人権、平和などの「ソフト」な政策が中心で、その中核にある価値は生活、生命、人生である。これらは脱工業化時代に典型的な政策で、コミュニティー全体の利益を増進する。対して男性の政治は公共事業などの「ハード」な政策が中心で、高度経済成長期の時代を背景とし、利益や利権を争奪、党派的な利害関係に根差す。
 だからこそ、大災害からの復興や脱原発、エネルギー政策など、将来の社会にとって重要な課題を考えるときに、女性がリードする政治に注目すべきと。

 そして政治で環境や福祉、人権、教育、平和などについて比重が置かれるということは、国民の幸福度も増します。スウェーデンは他の北欧諸国とともに世界でもっとも幸福度の高い国としてランキングされています(たとえば、OECD/経済協力開発機構)の「幸福度ランキング/Better Life Index」)。
 
 ではどうすればスウェーデンのようなジェンダーバランスを達成して幸福度の高い社会にすることができるのでしょうか。
 インタビューした方たちからそろって、「ネットワークをつくること。それなくしてはなにもできない。まず自分の属するコミュニティー、組織のなかで。そして次にそれを超えて連帯するんですよ」と激励してくれました。彼女たちは意識して連帯し("Our solidarity" という言葉を多くの人から聞いた)、ネットワークを広げ続けています。

 わたしもできることからはじめよう、そう思って環境保護団体グリーンピース・ジャパンとしてグリーン・ウィメンズ・ネットワークをたちあげました。すでに動き始めている人たちとつながり、まだ声をだしていない人によびかけ、つながって一緒に変えていこう、と。

 そして11月には「もういいかげんにしてオッサン政治!怒れる大女子会」(マガ9学校) を一緒に行うことができ、大きな反響を得てその後有志によるFacebook「怒れる女子会」がはじまり、全国各地でスピンオフ会が開催されたりしています。グリーン・ウィメンズ・ネットワークや怒れる女子会にかかわっていらっしゃる方で、新たに来年の統一地方選に立候補される方もいます。

 小選挙区制度や立候補に多額の供託金が必要なことなど、女性やマイノリティーの声が政治にきちんと反映されない壁はありますが、ネットワークをひろげて身近な地方自治から変えていくことで国の政治にも影響を及ぼし、暮らしを大切にする政治が実現すると思っています。

 女性が動けば変わる(もちろん賛同してくださる男性も大歓迎です!)。
 つながって変えていきましょう。

 ぜひ、怒れる女子会のFB、そしてグリーン・ウィメンズ・ネットワークにご参加ください。




 
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