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自衛隊の高校生リクルートに注視を!!

2015年2月2日



永井栄俊さん(元東京都立高校教諭・立正大学非常勤講師)

———ブックレット『高校生をリクルートする自衛隊・自衛隊の手法を取り入れる教育行政』(2014年11月、同時代社から刊行)は、自衛隊が隊員確保のため、高校生などに様々な働きかけをしていることを明らかにしています。
 まず、小中学生の自衛隊での「職場体験」が広がっていることからお話していただけますか。
(永井さん)
 2000年から小中学生が地域の商店や企業とかで「職場体験」をするようになっているのですが、2002年に学校に「総合的学習」という時間が設けられ、「職場体験」の多くがこの時間に行われるようになっています。この「職場体験」を自衛隊で行うことが増えているのです。2000年には全国450校の生徒が自衛隊で「職場体験」し、その数は現在までに数千件になっていると報じられています。

———自衛隊が隊員を確保しようと学校への働きかけを強めている、と思われるわけですが、生徒たちの防災訓練もそのよう機会になっているようですね。
(永井さん)
 2011年の東日本大震災以降、人々の防災への意識が高まり、2012年、東京都教育委員会(東京都教委)は全日制のすべての都立高校で1泊2日の防災訓練を実施しました。その際に4つの高校で自衛隊員が招かれ、隊員による講演や災害救助活動のDVDの放映などが行われました。そして、2013年には都立田無工業高校の生徒が自衛隊朝霞駐屯地(埼玉県朝霞市)の隊内で、2014年には都立大島高校の生徒が自衛隊武山駐屯地(神奈川県横須賀市)で防災宿泊訓練をしました。
 自衛隊は東日本大震災の際に人命救助活動を行い、多くの国民がそれを評価しました。私は、自衛隊はいま、この東日本大震災を奇禍として隊員確保に向けたとりくみを強めている、と見ています。加えて、いま政府が集団的自衛権行使容認の閣議決定などによって自衛隊の海外派遣まですすめようとしていることも、最近の動きの背景にあると思います。この動きは急ピッチです。

———生徒に対する防災教育自体は否定されるべきでないでしょうが、やはり教育現場にはそれを自衛隊が担うことへの違和感のようなものはあるのではないでしょうか。
(永井さん)
 実は自衛隊は防災訓練プログラムを持っていません。隊内体験プログラムは持っていても、果たして生徒たちに適切な防災訓練ができるのか、という疑問を拭えません。
 ところが東京都教委は積極的に自衛隊との連携をはかっています。都教委はいま、生徒たちに集団的な規律を培わせることを重視しています。それがその背景の一つのようです。そのためには自衛隊の訓練がそれに適していると判断しているのだと思います。
 教育現場の中に、自衛隊だからという理由で連携は拒否できない、という雰囲気が広がりつつあることも懸念されます。
 学校現場に日の丸・君が代を強制する、東京都教委の10.23通達(2003年)以降、学校をめぐる状況が変わりました。それ以来、学校では平和についての教育をしづらい状況になりました。学説などで自衛隊は違憲とされていることを授業で生徒たちに教えたら教育委員会から指導を受けるような、そんな雰囲気になってしまっています。
いま、たとえば東京都の小中学校の合同の校長会があるのですが、最近ではそこへの自衛隊員の参加を認められ、自衛隊のPRの場が提供されるようになっています。高校にはここ数年自衛隊から自衛官募集のポスターが配られているのですが、今年度は高校の各クラスにカレンダーが配られた学校もありました。

———いま多くの高校生に自衛官募集のダイレクトメールが送られているそうですね。今年度は政府が集団的自衛権行使容認の閣議決定をした(2014年7月1日)直後だったので、多くの高校生がいずれ戦地に送られるのではないか不安を感じることになったと聞きました。自衛隊の活動に対する生徒たちの受け止めはどうなのでしょうか。
(永井さん)
 先ほど申した今年度の都立大島高校の自衛隊駐屯地での防災訓練では、訓練への参加を断った生徒が一定数いました。生徒、あるいはその保護者の中に不安や不信の気持ちがあったのだろうと思います。
 こうしたことも踏まえてなのだと思いますか、東京都教委は2015年度の予算を増やし、「都内の全公立学校の児童・生徒が保護者と共に、防災について家庭で学習できる『防災ノート』を作成・配布」することにしているようです。さらには全都立高校に生徒による「防災活動支援隊」を組織することにしています。各校での防災訓練においては自衛隊との連携の検討を促しています。こうした取り組みの中で自衛隊の隊員募集活動との連携がより強化されようとしているのです。
 私は生徒たちに平和を伝えたいがために教員になりました。ところがいま教育の現場はその逆の方向に動いています。なんとしてもこの動きを止めたいと思っています。

———こんにちの教育現場をめぐる急激な状況の変化には驚かされます。日本国憲法の重要な柱である平和主義の危機ともいえる状況をなんとか変えるために、今後とも連携させていただければと思います。本日はありがとうございました。


◆永井栄俊(ながい えいしゅん)さんのプロフィール

元東京都立高校教諭。
「許すな!『日の丸・君が代』強制 止めよう!安倍政権の改憲・教育破壊 全国ネットワーク(準備会)、立正大学非常勤講師。
「国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟」、いわゆる予防訴訟の原告団共同 代表もつとめた。






 
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