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教え子を再び戦場に送るな 〜教育実践とうたごえ〜

2015年5月25日



箱崎作次さん(東京都公立中学校 教諭)

 集団的自衛権行使を可能とする安全保障法案の審理が国会で始まり、18歳選挙権や改憲が迫る中、次世代を担う小中高校生に、平和や憲法の大切さをどのように伝えていったらよいのか、中学校の社会科教諭として38年間、子供たちに主権者教育を実践してきた箱崎作次先生にお話を伺いました。
 
―――昨年の7月1日、集団的自衛権の行使を可能にする閣議決定がなされ、いま、国会でその具体的法案の審議が始まったわけですが、子供たちの反応はいかがですか。

(箱崎さん)
 子供たちは当事者意識もあり、とても敏感に受け止めています。昨年の閣議決定直後には、「先生、ぼくたち戦争に行かなきゃならなくなるの?」という質問が増えました。9月に集団的自衛権行使容認について思っていることや心配なことを書いてもらったので少し紹介します。
 『「集団的自衛権は憲法に触れることなのに内閣だけで決定してしまうのは反則な気がする」という意見はもっともだと思う。憲法は国の最高法規なのに内閣で決めているのはおかしいと思う。よく考えてから行動して欲しい』(3年女子)
 『歴代内閣もずっと認めてこなかった集団的自衛権をなぜ認めたのか?確かに今はちょっと日本の周りで平和を脅かす動きがあるけど、それを集団的自衛権で守れるのか?と思う。もし変えるのなら閣議決定ではなく、憲法改正の手続きをとるべきだったと思う。国民投票したら認められないだろう、という気持ちがあったからだろう。これからもっと平和は脅かされるかもしれないが、その時平和を守るのは本当に武力なのか?国民は憲法にもっと関心を持つべきだったと思う。集団的自衛権が認められたのは政治に興味を持たない、投票に行かない大人のせいで、これから大人になる僕たちの人生が変わってくるから、もっと声を大きくして平和憲法を守る行動をして欲しい』(3年男子)
 『もし集団的自衛権を使ったら敵を増やすだけだと思う。平和を作るのは武器じゃなくて話し合いだと思う。日本は被爆国として世界に核の恐ろしさ、平和の大切さを世界に広めていく立場にあると思う。日本は平和憲法を海外に広めて、日本は絶対に戦争しない、させないという風にすべきだ。また自国の憲法すら政府は守ることができないなら、国民が平和を求める他の国々と協力してこの憲法を守っていくべきだと思う』(3年男子)
 『改めて戦争などしたくないと思った。国民の上に立つ人間が国民と真逆のことをしているのなら、その立場にいるべきでないと思う。憲法の3つの柱のうち2つの柱である「平和主義」と「国民主権」の両方を破ろうとしている。ある意味裏切ることになる。首相として国民が強く願う平和の維持・向上に働きかけて欲しい』(3年女子)
ほんの一部ですけれども、このような意見が上がりました。
 
―――生徒の皆さんに、平和の大切さや憲法の重要な部分がとてもよく伝わっている印象で大変希望を感じますが、先生は実際どのようにして教えていらっしゃるのでしょうか。

(箱崎さん)
 授業は毎時間プリントを用意し、生徒に質問しながら進めています。歴史はただ覚えることに価値があるのではなく、未来への指針にしてこそ価値があるわけですから、歴史から今の社会を見て欲しいということで、プリントの裏面には、新聞の抜粋など生徒に知ってほしい重要な時事問題などを載せて話をし、考える時間をつくるようにしています。
 もうひとつは歌です。私は1979年に三多摩青年合唱団の合唱に衝撃を受けて以来、『うたごえ』の活動を通じて社会に伝えたい、広めたいメッセージを合唱で伝えてきました。そんなこともあり、昨年の閣議決定後には、集団的自衛権行使に反対する『教え子を再び戦場に送るな』という歌と、改憲に反対する『日本国憲法 それは』という歌をつくり、福島第一原発事故の教訓から原発や核兵器に反対する『今 わたしたちは』という歌と共に、『今日本国憲法を歌う 三部作』として、教室で披露する他、全国各地の集会で歌っています。
 『教え子を再び戦場に送るな』という歌は、昨年の閣議決定後以来聞こえてきた素朴な質問や「わたしたちは殺したくも殺されたくもない」という中学生の声とビラまきをした時の体験をもとに作詞しました。というのも、8月30日に、東京都教職員組合北多摩西支部主催で「集団的自衛権行使容認反対」のビラまきをしたのですが、その時に「公務員がそんな政治的な活動していいんですか」と言ってきた人がいたのです。その時は咄嗟にうまく反論できなかったのですが、憲法99条には、公務員の憲法順守義務が規定されているわけですよね。平和憲法を守るのが教員の努めなはずなんです。ですから、多くの先生方の活動の一助になればと思い3番ではそのことを端的に歌詞にしました。
 『日本国憲法 それは』では、一番伝えたい憲法の本質を「日本国憲法それは人類英知の結晶。人が人として生きる権利と平和を守るもの。権力から私たちを守るかけがえのないもの。」という短いフレーズで表現しました。ポイントをわかりやすく音楽に乗せて歌うことで子供たちにもしっかり伝わるんじゃないかと思います。
 また、今年の3月13日には、学校の体育館で、卒業記念&東日本大震災復興支援コンサートを開催しました。戦争体験者のお話、生徒による「平和のメッセージ」のリレートークなどがあり、このようなイベントを通じてもいろいろと学び、感じてくれたと思います。
 その他、外部の方をお招きした特別授業や総合学習もたくさん行ってきました。昨年の閣議決定後だけでも、弁護士をお招きした集団的自衛権と憲法の特別授業や「軍隊をすてた国コスタリカに学び平和をつくる会」の会員でもある生物学者・森中定治氏をお招きした特別授業を行いました。このような授業で多様な見解を聞くことも、今の社会問題に関心を持ち、自ら考える力を養うのに有効だと思います。
 3年間の授業の感想では、「時々先生がつくった歌を聴いたりしたのが印象的です。選挙や集団的自衛権のことなどを詳しく解説してくれたのでよく分かりました。社会のできごとへの関心が高まりました。」とか「一年生の頃は社会が苦手でニュースにも興味がなく、政治のこともまったく知りませんでしたが、先生の授業やテストを受けるうちに、最近のニュースや政治に興味を持てるようになりました。公民を理解したり歴史を覚えていくのが楽しく、毎日ニュースを見たいと思うようになりました。また世界で活躍したいと思うようになりました。私が選挙権を持ったら絶対に選挙に行きます。そして尊敬できる人を選びたいです。」など、とても励まされる嬉しい内容が数多く寄せられたので、大変でしたが、いろいろやって良かったなと思っています。

―――先生は、昨年から9条改憲に関するアンケートをされたということですが、ご紹介いただけますでしょうか。

(箱崎さん)
 政府が改憲を狙う中で、3年後には選挙権をもち、憲法改正の国民投票に関わるかもしれない、昨年3年生だった生徒、約200名を対象に改憲についてどう思うかアンケートを行いました。
 昨年11月に行った調査では、「9条を変えない」と答えた生徒が79%、「9条を変える」と答えた生徒が16%だったのですが、過激派組織ISによる日本人殺害事件直後の2月に行った調査では「9条を変えない」と答えた生徒が59%に激減し、「9条を変える」が38%に急増しました。しばらくして、先ほど紹介した森中氏をお迎えした特別授業を企画したところ、その授業の後(事件から1ヶ月後)の調査では、「9条を変えない」が69%になり、「9条を変える」が27%となりました。
 生徒はニュースに敏感に反応しますが、その時に様々な意見に触れ、学び、考える機会をもつことができるかどうかが非常に重要だと思います。

―――若い先生方へメッセージをお願いします。

(箱崎さん)
 最近は、自粛ムードもあり、政府と異なる多様な意見を紹介する内容の授業や歴史の真実や平和の大切さを教えるのが難しくなってきていると思います。今後ますます厳しい状況になっていくでしょう。そこで重要なのは、やはりまわりの先生方の理解、協力、保護者や地域の支援を得ながら、学校内で自由に意見を交換でき、創造的な発想が大事にされ、みんなでより良いものを作り上げていく雰囲気を作っていくことだと思います。力を合わせていきましょう。

[教え子を再び戦場に送るな]
   作詞 箱崎作次 作曲 佐藤香
1.先生 シュウダンテキジエイケンって何なの
本当に この国の平和と私たちを守ってくれるの
いつか 戦場に行かされることはないの
私たちは 殺したくも殺されたくもないのです

2.先生 日本は憲法で戦争をしないと約束したよね
どうして よその国が起こした戦争に日本が加わるの
お友達の国だから 一緒に戦うの
私たちは どこの国とも戦争したくないのです

3.先生 政府に反対することして大丈夫なの
大丈夫 これは憲法にそった行動なのです
九十九条「公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う」
だから 平和憲法を守るのが私たちの務めなのです
今私たちは先人たちの志を受け継いで 立ち上がる時
※教え子を再び戦場に送るな と  戦場に送るな と

楽譜と本人の歌入りCDをご希望の方は下記へ連絡ください.
s_hakozaki@hotmail.co.jp

 

◆箱崎作次(はこざき さくじ)さんのプロフィール

1954年秋田県横手市に生まれる。1977年東北大学理学部地学科地理教室卒業
1977年中学校教諭(社会科)となる。1979年三多摩青年合唱団入団。1982年ニューヨークで開かれたSSDU(国連軍縮特別総会)へうたごえの代表団として参加。
1994年〜1997年 日本人学校の教員派遣試験に合格し、ドイツ・フランクフルトで勤務。
帰国後、東京都公立中学校で教鞭をとる。
イラク戦争時や東日本大震災時の教育実践など、度々新聞などで紹介されている。また、日本・中国・韓国で共同編集した「未来をひらく歴史―東アジア3国の近代史」を全国で初めて公立中学校で使用。同教科書を使用した市民学習会(全20回)の主催なども行った。
現在、教育実践の他、『うたごえ』の活動や全国各地の集会にオリジナルの歌で出演するなど積極的に活動している。


<法学館憲法研究所事務局から>
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