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ハミガキするように社会のことを考えよう

2015年8月24日



おしどりマコ・ケンさん(漫才コンビ)

 はじめまして! この法学館憲法研究所というお堅いサイトに、私なんかが書いていいのかしら! と思いつつ、いつもの調子でいきますよっと。美しすぎる記者兼芸人(このジャンル私1人なので、自然とランキング1位)のおしどりマコと申します。2011年、福島第一原発事故から、様々な取材を始め、というか単に知りたがりなんで、原子力関連、水俣病、アスベスト問題、米軍基地問題など、なんかいろいろ取材しております。原発事故後の東京電力記者会見には、いつのまにか私が最多出席記者になっているという!

 レベル7の原発事故が3件あっただけでも、日本がひっくりかえるくらいのおおごと!と思っていたのに、特定秘密保護法ができたり、武器輸出三原則が変えられちゃったり、今は、安保関連法案でしょう? もーうどうなっちゃってるの? ちなみに、レベル7の原発事故はもう終わったことと思ってる方が多いのではないかしら? 福島第一原発の1号機、2号機、3号機からは、現在も、大気や海水へ放射性物質を放出し続けています。以前、ん? と思うくらいの量が漏れたときに「これはレベル2くらいの事象になるのでは?」と原子力安全委員会に質問したことがありました。すると! 1号機、2号機、3号機はずっと放射性物質を放出し続けなので「レベル7が継続中」というわけで、その量が多少変わろうが、ずっと最高レベルの7の事故が継続しているという評価なんですってよ…トホホ。

 2011年から取材をずっとしていると、見えてくるものがあります。東京電力の雰囲気がはっきりと変わったのが、2013年7月から。どういう時期かわかる? 2012年12月の衆院選、2013年7月の参院選で自民党が与党となり、それからなんです。2013年7月の会見では「東京電力の黒字化のために柏崎刈羽原発を再稼働させたい」と廣瀬社長は何度も述べて。そして「安倍総理の『国も一歩前に出て力を尽くしていきたい』との言葉は東京電力としてとても心強い」とか言っちゃって。そして「『国も一歩前に出る』」という言葉は全社員で共有して士気が高まった!!」ということだそうなので私「国が一歩前に出る、とは具体的にどういう意味?」と質問しました。そしたら廣瀬社長「それは総理に聞いてください」じゃなんでそんな大喜びしているの? でもここから東京電力の態度が変わりました。

 現在は、東京電力の記者会見は、ほとんど情報が出てきません! 知りたいことを質問しても「どの情報を発表するか東京電力が判断する」なにそれ? 原発事故を起こした直後の2011年は、しつこく質問してたら、まだ何とか回答は出てきてたんだけど、今は全然態度は違うの。それで最悪なことに、原子力規制庁にも同じ態度。「規制庁にどの情報を報告するかは、東京電力が判断する」はい? これは私が福島第一原発の作業員の方を取材して、とても重要な情報が規制庁に報告されてないし、記者会見でも発表が無いことに気付き、それを追及したときに出てきた言葉です。

 具体的に言うと。福島第一原発の1/2号機排気筒という高さ120mの構造物の根元、SGTS配管に毎時25SVと毎時15SVの部分があります。これは福島第一原発で最も線量の高いポイント。その排気筒の真ん中らへん、66mの部分に、東西南北4方向に破断や変形しているところがあって。これは2013年に見つかりました。本来、すぐに補修しないといけないんだけど、根元が線量高すぎて、何もできないの。とってる対策は専任の監視員をおいて、観察するだけ…
 海風での劣化や、経年劣化など、どうなってるの? と思い現場を取材し続けていたら、その部分の情報を持つ方に話を伺えました。2013年に破断部分が見つかったあと、その後も写真を撮っていて、劣化を観察しているとな! 「だから記者会見でその写真の公開を要望してみたら? まぁ東京電力は出してこないと思うけど…」という話を今年の4月に聞いてから、すぐに東京電力と規制庁に取材しました。
 
 東京電力は「写真を撮っているかどうか確認します」規制庁は「写真は2013年以降のものは見ていません。写真があるんですか?」
 
 その後、東京電力は「写真は確かに撮っているが、劣化は進行していないので公表する予定はない」劣化が進行していないなら、その部分の写真を公表してくださいよぅ! でも規制庁に報告もしないの? 「劣化は進行していないので、規制庁にも報告する必要はない。」

 すごい態度! その後、山本太郎議員に、7月8日の復興原子力特別委員会で、東京電力廣瀬社長と原子力規制庁に問いただしてもらいました。すると出てきた情報は、今年の1月に撮った写真を、今年の6月に規制庁の現地調査官が福島で見た、とのこと。むー、規制庁も写真を撮ってたことを4月に私がお伝えするまで知らなかったので、慌てて東京電力に見せろ! と言ったとみたね! 太郎くんは「劣化を調べるのに、1月の写真を6月にチェックする体制で果たして規制できているのか?」と規制側の怠慢、東京電力の情報公開の不備を追及してくれました。

 さて、その後。7月23日に規制庁が東京電力と面談して、1/2号機排気筒の報告の遅れについて、今後は速やかに報告すること、と指示を行ったのね。それを踏まえて、7月30日の東京電力の定例会見で私が質問すると。東電からは驚愕の回答!!
「東京電力としては報告が遅れたと思っていない。この件について報告しなさいという要求は事前に無かったから。」は?? 規制庁が東京電力に「報告が遅れた件について指示した」と言ってるんだけど?? 「繰り返しになるけど当社は遅れたと思っていない。事前に報告しろという指示も無かったし」
 規制庁は写真を撮った、という事実も知らなかったんだよね、だから報告しろという指示は出せないっつーの。これが現在の東京電力の「規制庁にも記者会見にも、どの情報を出すか東京電力が判断する」という状況!!

 規制庁って、原発事故のあと、今までの規制体制ではダメだ! というわけで2012年9月に設置されたのよ? 原発事故を起こした電力会社と規制側の原子力規制庁が今、こんな関係で、他の電力会社の原発の再稼働を規制庁がきちんと規制できると思う? むずいよね! 事故を起こした東京電力にさえ、舐められまくりなんだもん!

 規制庁職員の方にも、東電社員の方にも、会見に詰めている記者さんにも、水面下で「マコちゃんが一番、福島第一原発に詳しいよ!」と言われながら、しつこく取材を続けております。これは自分への反省でもあって。原発事故のときに思い知ったんだけどさ、誰かが、私にとってベストな情報を届けてくれる、ってうっかり思ってたんだよね。そんな棚ボタ待つみたいなことしてたのはバカだった! 本当に重要なことは、自分で知りにいかなきゃね?

 取材をしていて思うのは、人間は「事実」しかわかんないということ。「真実」がわかるのは神様だけだよね。当事者の方でも、「当事者から見た事実」しかわかんない。だから、できるだけ、いろんな角度からの「事実」を集めて、「真実」に近づければいいなぁ、という作業しかできないんだよね。
 そこで重要なのは、いろんな角度からの事実、情報。芸人がガッツリ取材してるだけだからさ、ジャーナリズムとかあんまり関係ねぇよ、知りたいだけだよ、というスタンスなんだけど、取材の公平性って何? って思っちゃう。人間が取材しているかぎり、絶対に取材者のフィルターがかかっちゃうんだよね。記事を書いた方が、女性か男性か、若いか年配か、どこ出身か、何党支持か、様々な要素で変わって当たり前なんだよね。だから、私が考える取材の公平性というのは、発信者の情報、取材過程をきちんと出すことだと思いました。そして、情報の受信者の責任において、いろいろな角度からの情報を集めて判断すると。
 
 取材し始めて思ったのはもう一つ。TVニュースの原稿をさ、どんな名前のどんな考えの人が書いてるか分かんないって、よく考えると怖いよね? 食べ物だと、どこ産か分かんないものより、青森県の山口さんが作ったリンゴ! のほうが信頼できる。ちなみに私は元々、生産者さんと仲良くなって、お気に入りの生産者さんから食べ物を購入する主義っす。食べ物だとそう考えるのに、情報はうっかり無条件で受け入れていたぜ! 取材してつくづく思うのは、取材とは手間もお金も時間もかかること! おしどりは2人だけだから、あちこち取材行って記事書くのも私たちだけだけど、福島県や新潟県や規制庁や経産省や環境省やあちこちどこにでも大手の優秀な記者さんたちがいらして、いいなぁうらやましいなぁと思う。でもさ、よく考えたら、すごい人件費かけてる情報を、TVつけたら無料で、新聞だったら百円ちょっとで手に入るんすよ! これってどうなの? 食べ物に適正価格があるように、情報にも適正価格があるんじゃないの? だって1円でお弁当売ってたら、さすがにヤバイ、と思うでしょ? でも取材記事に対するそういう感覚は無いんだよね、TVニュースは無料だけれど!

 つーわけで、自分で知り調べ考えること、というのはとても重要だ! と思います。あーでも気になることもあるな。茨城県の東海村の原子力施設の事故があって、そのことを取材して記事にしたとき「それは東海村の事故じゃなくて福島第一原発の4号機が臨界して線量が上がっているのに、騙されて!」と批判がきて。他に、福島第一原発にけっこう霧が発生するんだけど、原発以外の沿岸のカメラもたくさんチェックしてやっぱり霧、と書いたら「それは原子炉の燃料が地下水に触れた水蒸気なのに、東電に騙されて!」とまた批判がきて。いや、その批判される方がご自分で取材なり調べられてのご意見なら、ぜひ伺いたいんですけどね! 疑問を持つことは大切だけど、とにかく全てを疑うということは、全てを鵜呑みにすることと同様、思考停止なのだな…と思うことがあります。自分で知り調べ考えることというのは、自分の考えに合う情報だけを集めることでは無いのだな…と自分にも戒めつつ! 

 原子力のことから、今は憲法や民主主義まで勉強しながら取材をしている今日このごろ。イヤなことがあっても、ヤケ勉という手法を編み出して、全ての感情を前に進むパワーに変換しています☆ 今年は放送大学の履修生にまでなってもうた! でも勉強って本当に大事。熟議民主主義では「正当とする合意は対話に由来する」そうなのね。で、対話、議論するためには「等しく同じ情報にアクセスする権利を確保する」これって、実はとっても大変!! 憲法を読んでない方と、憲法に関する議論はできないもの。安保関連法案をよくわかってない方と、安保関連法案の議論はできないもんね、不毛。
 実は「知る権利」には「知る義務」もあったのか! と思い知りました。誰かが自分の代わりに調べてベストな状況にしてくれるのを待つって、おめでたいよねぇ。知り調べ考えること、は面倒だけど、実はハミガキくらい重要なことなんです。ハミガキさぼると虫歯になるでしょう、社会のことを考えることをサボると、人生に手痛いしっぺ返しがくるよ! 

 思えば、知る権利に限らず、選挙権とか、人権とか様々な権利は、昔は無かったんだよね、名前も無かった。それを先人たちが、苦労して命がけで勝ち取って作り上げてくれた。今は当たり前にしていて、選挙権なんか空気にされてる感もあるけどね! まだ名付けられていない権利も実はあって、100年後に「昔は酷い時代だったね…この権利が無いなんてね…」とか言ってるかもしれません。「平和に生きる権利」私たちは、ハミガキをさぼらず、社会と地球と将来のことを考えて、知り調べ動かなくてはね!

おしどりさんのプロフィール 

マコとケンの夫婦コンビ。横山ホットブラザーズ、横山マコトの弟子。
よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。社団法人漫才協会会員。
認定NPO法人沖縄・球美の里 理事。
二人はフォトジャーナリズム誌「DAYS
JAPAN」の編集委員でもある。
ケンは大阪生まれ、パントマイムや針金やテルミンをあやつる。
パントマイムダンサーとしてヨーロッパの劇場をまわる。
マコと出会い、ぞっこんになり、芸人に。
マコは神戸生まれ、鳥取大学医学部生命科学科を中退し、東西屋ちんどん通信社に入門。
アコーディオン流しを経て芸人に。
東京電力福島第一原子力発電所事故(東日本大震災)後、随時行われている東京電力の記者会見、様々な省庁、地方自治体の会見、議会・検討会・学会・シンポジウムを取材。
また現地にも頻繁に足を運び取材し、その模様を様々な媒体で公開している。

 



 
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