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戦争法案反対!東京の戦争を知らない教員たち

2015年9月14日



井黒 豊さん(TOLDs=トールズ)

 2015年8月15日の敗戦記念日を前に、岡田明氏から1本の電話が入った。「加藤誠さんと共に、今、文案を練っている。戦争法案が強行採決され、このまま国会を通過してしまうのか。何とか自分達の想いを意思表示したい。」 私も想いは同様だったので、ひとつ返事で「やろう!」と話は決まった。
 メールのやり取りをしながら夜中に作業をし、当初は東京の公立高校の現職教員に声を掛けようという話だった。しかし、賛同者を募ると退職者も、私立校も、小学校・中学校・特別支援校も、他府県も、一般も…、あっという間に輪が広まり、あれよあれよという間に記者会見するに至った。
その後8月30日の国会前行動にも、TOLDsの看板を掲げて反対の意思表示をした。そこで初めて会う賛同者もいた。「TOLDs知ってます。」という一般市民もいた。

 私達は普通の市民であり、普通の教員である。特別な活動家でも思想家でもない。1000人を超える賛同者が声をあげてくれたが、そこにも1000通りの普通の人々の想いがある筈だ。語り始めれば、様々なニュアンスの違いがあるだろう。しかし、戦争法案には賛成出来ないという同じ想いを繋いで行きたい。一人でも多くの人々に「戦争を知らない教員たちからのメッセージ」を広めて行きたい。特に全国の先生達に。(詳細はTOLDsのブログ(http://tolds20150815.blogspot.jp/)参照) あらゆる矛盾のなかで、多くの犠牲を強いた戦争を経験し、我々の先輩教員たちが反省して「教え子を二度と戦場に送らない」と誓った日から70年。戦争経験者が減り続け、その反省が薄らいでしまっている現在、再び人間の尊厳を再確認して、「TOLDs大阪」とか、「TOLDs岩手」など、全国津々浦々で多数の教員がこのメッセージを胸に秘めてくれれば本望である。

 TOLDs記者会見に当たっては、選挙年齢の18歳引き下げに伴う、教員による政治教育のあり方に関して慎重だった。教育公務員として、「中立」の立場をどのように実現するか?である。様々な法律を検討し、特に人事院規則14-7(政治的行為)と、その運用方針については、すべての項目に関して当てはまらないことを確認し、発表に至った。以下は運用方針の中の一部である。

(1)したがってこの規則が学問の自由及び思想の自由を尊重するように解釈され運用されなければならないのは当然である。
(2)「政治の方向に影響を与える意図」とは日本国憲法に定められた民主主義的根本原則を変更しようとする意図をいう。
(3)日本国憲法に定められた民主主義の根本原則を変更しようとするものでない限り、本号(政治的目的の定義5-5)には該当しない。

 私たちは憲法前文や9条に込められた平和主義の精神に対して忠実であり、それを尊重し、教育活動したいと表明する。これは政治的中立どころか、ど真ん中のストライクである。また、人事院規則は憲法より下位の法令であり、その人事院規則が「憲法の根本精神を守れ」と書いているのだから、私たちのメッセージは法的に何ら問題ないと考える。
 これを「中立でない」と言うなら、一体何が中立だというのか。憲法尊重・擁護義務がある時の権力者に対して、一切の異論反論が言えない社会は恐ろしい。批判を避けて、市民が自制するということは、歴史の反省から逃げて過ちを繰り返すことに繋がるという危機感もある。表現の自由が保障されているこの日本で、誰か個人を誹謗中傷するのではなく、裸の王様に「間違っているんじゃないか」と意見表明することに対し、怖がる必要は全く無いのだ。そんな強い想いが根底にはある。

 何が正しいのか間違っているのか、神様でもない私たち人間には計り知れない。しかし、物事の進め方には人間社会のルールがある。まして、日本社会が法治国家であるならば、忠実に法律を守って行かねばならない。安倍首相達がどうしても法案を成立させたいのなら、まず憲法改正から進めなければならない。例え集団的自衛権に対して、賛否両論があるとしても、立憲主義を壊すようなことを一つでも許してしまえば、有力者や権力者による何でもありの無法社会になってしまうのではないか。

 今、参議院でも強行採決の声が聞こえている。憲法学者はじめ、関係専門家の間でも、大多数が「憲法違反である」と表明しているし、大多数の市民が「反対」の意思表示をしている。これらの声を無視して強行突破することが、本当に許されて良いのか。
 憲法第12条には、『この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。』とある。黙って傍観しているということは、子々孫々に対する我々大人の責任放棄にはならないか。
 仮に万が一、この戦争法案が強行採決されたとしても、私たちは、その後もずっと「戦争反対」の意思表示をし続けて行きたい。

井黒豊(いぐろ ゆたか)さんのプロフィール

1960年生れ、55歳 都立高校教員(数学)
政治・経済には無頓着だったが、石原都政による学校現場への日の丸・君が代強制を代表とする教育介入が始まり、第一次安倍政権による教育基本法改悪が強行されたことによって、目が覚めた。いよいよ日本社会が戦争に突っ込んで行くことを憂いて、基地問題・原発問題・TPP・戦争法案など、様々に意見表明をしている。

 



 
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