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今週の一言

 

誰もがセキララに,自分の言葉で憲法を語ろう

2015年9月28日



金杉美和さん(弁護士)

 2015年9月19日,日本国憲法は一度死んだ。ここ1年余り,誕生以来かつてないほど蹂躙され続けてきた憲法だったが,ついに一度殺されたのだ。本来それを尊重し,擁護する義務を負っているはずの,国会議員らによって。

 安保法案に関しては,そもそもの始めから,酷いことだらけだった。2014年7月1日に強行された,集団的自衛権の行使容認への憲法9条の解釈変更は,「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」とする1972年の政府見解自身にも反する大転換。にもかかわらず,「法の番人」として1972年の政府見解についても参事官レベルから長官以下幹事全ての決裁を経て審議決定した当の内閣法制局は,この解釈変更については前日の6月30日に審査を依頼され,翌7月1日に「意見なし」と電話で回答したのみ。閣議決定について検討し,審議し,意思決定した過程は公文書には何ら残されていない。「首相がお決めになったことなら何でも従います」と,フリーハンドを与えてしまったに等しい。
 磯崎首相補佐官は「法的安定性は関係ない」と言ったが,まさにこれが政府の本音なのだろう。時の政府によって憲法解釈がこうも簡単に180度大転換されてしまうのでは,権力を縛って個人の生命・自由・幸福追求の権利を守ることを目的とした憲法は,骨抜きだ。今日は「憲法違反だ」として国の責任を追及できたことが,1ヶ月後には「それはOK」となってしまうのだから,おちおち安心して暮していられない。
 偏向度合いによって報道・世論調査も色々だけど,少なくとも国民の過半数が本国会での成立に反対していたにもかかわらず,採決を強行。9月17日の参議院特別委員会では,15日に中央公聴会,16日に地方公聴会を開催したにもかかわらず,それを受けての締めくくりの総括質疑をすっ飛ばし,いきなり採決に。採決手続きは,まず委員長が表決を求める前提となる「問題」を「宣告」し(参議院規則49条),これにより特定された議案に対して個々の議員が表決する・・・はずだが,委員長が問題を宣告した(と推測される)場面では,与党議員が委員長の周囲を取り囲み,委員長が問題を宣告したことは映像では確認できない。委員長の姿自体が見えないんだから,当然表決をする委員たちからも問題が宣告されたことは視覚ではわからない。ましてや音声では,議事録でも「発言する者多く,議場騒然,聴取不能」なんだから,誰にも聞こえてない。これで,公開の場で,特定の問題を宣告して,当該議案に対して個々の委員の意思の表明たる表決がなされた,とは到底言えない。「なんか,よくわかんないけど,とにかく賛成。とにかく議決されたの」と強弁してるわけで,これで議決が存在したと主張されては,悪いけど小学校のホームルーム以下である。

 呆れることだらけの安保法案事変だったけど,大きな成果もあったと思う。それは,あまりに政府・与党のやってることが酷すぎて,なんだけど,多くの人が,自分の言葉で,憲法を,立憲主義を,政治を,語るようになった,ということ。

 私も偉そうなことを今は言っているが,26歳のとき,伊藤塾で司法試験の勉強を始めるまでは,何にも考えないヒトだった。法学部でもなく,選挙にも行かず(恥ずかしいけどホント),社会にも関心がなかった。
 でも,伊藤塾長から憲法の講義を受けて,目からウロコが落ちた。セピア色の濃淡で見えていた社会に,鮮やかな色がつき,輪郭がくっきりと描かれ・・・「ああ,今まで見えてたものは,そういうことだったのね!」と,全てが変わった。
 そして今は,その感動を,伊藤塾長ほどじゃないけれど,憲法の伝道師のそのまた弟子くらいには語り伝えたいと思い,自分の言葉で語っている。

 8月5日には,そんな自分にこそ伝えられる憲法の本をと思い,拙著「〜まだ気づいていないあなたと語る〜セキララ憲法」も出版した。それこそ赤裸々に,自分の言葉で,私が伊藤塾で憲法に目覚めた経緯や,憲法を通して見える世界を,自分なりに語っている。

 そして私の周りでも,いろんなヒトが,憲法について語り始めた。保育園のママ友。仕事を持ちながら,「ママの会」のデモや勉強会に参加している。京都では,弁護士有志が立ち上がり,「怒れる女子と男子の勉強会」,法案成立後は「激!怒れる女子会」というゆるやかな会をつくった。今まで政治的なこと,憲法の運動には全然関係のなかった若手弁護士や,いわゆるブル弁(失礼)と呼ばれてもおかしくない弁護士が,怒りの声を挙げている。

 2015年9月19日,一度死んだ憲法が,不死鳥のごとく,より強く,よりしたたかによみがえるかどうかは,今後の私たちにかかっている。私たち市民が,それぞれが自分の言葉で,自分が理解した「憲法」を,その価値を,赤裸々に語っていくこと。そして,それを司法に,或いは政治に,つなげていくこと。そのために,私自身も大いに語っていきたいと思う。

◆金杉美和(かなすぎ みわ)さんのプロフィール

略歴
京都市右京区太秦で出生。3歳から富山県で育つ
1993年3月 富山県立高岡高校卒業
1993年4月 大阪大学文学部入学
大学時代は体育会航空部の活動に明け暮れる

1999年3月 2年留年の後,大阪大学文学部文学科を卒業

子どものころより空に憧れ,大学時代はグライダーで日本各地・オーストラリアなどの空を飛び回る。操縦教官の国家資格も取得し,一時はエアラインのパイロットを目指すも受験に失敗。
フリーター生活をしていた2000年11月,社会に貢献したい,常に自分自身を向上させられる仕事に就きたいと決意し,一念発起して司法試験に挑戦
受験時代は京都の受験指導校(伊藤塾)に通う

2002年11月 司法試験合格 1年間の実務修習を京都で経験
2004年10月 京都法律事務所 入所
2005年,2010年にそれぞれ男の子を出産し,現在2児の母

日弁連刑弁センター幹事,法廷技術小委員会委員など,刑事弁護活動や弁護技術の講師活動に取り組むとともに,自由法曹団の弁護士として,憲法学習会や憲法カフェなどの講師活動も積極的に行っている。




 
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