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今週の一言

 

環境権と9条問題

2016年2月1日



小池信太郎さん(公害・地球環境問題懇談会 代表幹事)

1.国民の生命と平和なくらしを守る立場から、いまやるべきことは何でしょうか。 

 いま日本列島の夏は猛暑、冬は大寒波という地球温暖化(気候変動)に襲われています。スーパー台風が直撃、一昨年は広島の土砂災害、昨年は鬼怒川決壊という大規模災害をもたらし、多くの人々の生命が奪われ生活が根底から脅かされる非常事態です。いま地球温暖化を止めなければ、これからも多くの人々の生命が奪われ財産を失う被害が拡大、さらには人類生存の基礎を破壊する危機に直面することになります。
 安倍政権は「国民の生命と平和なくらしを守るためにあらゆる事態に備えをつくる」ために、「周辺事態の安全保障環境をふまえ、国際環境を考えたときに」という口実のもとに、立憲主義を踏みにじり、あの戦争法案を強行成立させました。私たちは「国民の権利を根底から覆す危機的な事態に対応する」ならば、「福島原発事故や大規模災害の深刻な被害に全力で対応し、人類生存の危機をもたらす地球温暖化を止めるべきである」と対策を求め、戦争法案に反対しました。
 いまやるべきことは、小選挙区制という選挙制度の弊害のもとで「形式上」の国会多数議席が国民多数の意思を踏みにじった「違憲の戦争法成立」は認めない、何はともあれ、まず戦争法発動を許さず、廃止をめざすために、公害被害者は全国民と連帯して、「勝つまでたたかい続ける」という公害裁判闘争の教訓を発揮すべきと覚悟しています。

2.これまで私たちが、憲法13条(幸福追求権)、25条(生存権)など憲法の規定と現行法制度のもとで勝ち取ってきた多くの成果を守り、発展させることこそ基本にすべきと考えます。

 <公害・地球環境問題懇談会とは>
 「公害・地球環境問題懇談会」(公害・地球懇)は、1990年誕生しました。結成に至る経過は、毎年世界的規模の行事となっているアース・デーの取り組みや、とくに公害・環境問題でたたかってきた全国各地の公害被害者団体・弁護団と連帯する「全国公害被害者総行動」を重ねる中で、公害被害者団体、住民団体、労働組合、農民団体、女性団体、医療団体、弁護士、学者・研究者、医師など幅広い団体や個人の結集によってつくられたものです。
 公害・地球懇は、「なくせ公害、守ろう地球環境」を共通の目標とし活動しており、そのことは、この組織がつくられた経過から見ての必然とも言えるものでした。それは、公害の原点と言われる水俣病や、最大の公害被害者団体のたたかいである大気汚染裁判闘争をはじめ、全国各地の公害被害者との連帯の中でつくられたことによるからです。「足元の公害の解決なくして地球環境は守れない」との立場を運動の基本にすえています。そして、公害や各地に広がる環境破壊の問題と地球環境を守る運動を統一的にとらえ、組織の誕生からずっとその立場を貫き、多彩な運動を展開してきました。

 <「三つの課題・三つの分野」の力の結集>
 公害・地球懇は、活動をより広範な人々の支持と連帯のもとに、有効にしかも迫力をもってすすめるために、つぎのような運動の在り方を強調し、実践してきています。
 それは、「三つの課題について、三つの分野の人たちが力をあわせる運動」、私たちはこれを「3×3の"大合流"」と言っています。
 三つの課題とは、
 @公害被害者の救済をはかる。
 A公害そのものをなくす。
 B環境破壊を許さず、住みよい、住み続けられる街・村をつくり、豊かな自然環境を子 供たちに手渡す。
 三つの分野の人たちの力の結集とは、
 @公害被害者の力。
 A弁護士、学者・研究者、医師など専門家の力。
 B労働組合・住民・消費者・女性・農民団体や広範な個人の力。
 おそらく、公害・環境問題にかかわって、こうした規模での"大合流"は、画期的なものであると自負しているところです。

 <革新都政のもとで勝ち取った成果が全国の成果につながる>
 1960年代、日本列島が「公害列島化」する中で、私たちは、胸に「青空バッジ」をつけ、「東京から富士山の見える日を増やそう」との思いを込め都知事選を闘い、革新都政を誕生させました。
 その都政は、広範な人々との約束どおり、まずはじめに、民主的学者の協力のもと「公害防止条例」をつくりました。その前文では素晴らしい三つの原則が謳われました。
 第1原則、全ての都民は、公害に侵されない権利を有する。
 第2原則、全ての都民は、豊かな自然を享受する権利を有する。
 第3原則、東京都民の自治組織である東京都は、その権利を保障する最大限の義務を負う。この義務を果たすため、あらゆる手段をつくして公害防止と絶滅をはからなければならない。
 これが全国に大きな激励と確信を与え、また、「公害国会」開催や、「環境庁」の設置へとつながりました。

 <「ドイツは日本から学んだ」>
 最近「ドイツは日本から学んだ」という見出しの新聞記事を読みました。ベルリン社会科学研究センターのワトナー博士との対談記事です。博士は日本で都留重人、柴田徳衛、宮本憲一氏らのもとで研究し、帰国後、1985年にドイツで、「われわれにとってのモデル・・・日本の環境政策の成果」という報告書を出版したとのことです。博士は同書で、「日本の例から学ぶべきは、市民グループや環境政策にかかわる人々や関係組織が行政にたえず圧力をかけるときにのみ達成されるということだ」と。すなわち、日本の公害反対運動、革新自治体の成果が進歩的学者・研究者を通じて達成し、それがドイツに伝わったということだ、ということです。

3.環境権を「突破口」とする改憲の策動は許しません。必要なことは「環境基本法」を改正し、環境権・上位規定を明記することです。

 いま改憲勢力は「緊急事態の対処」「環境権の明記」などの加憲を主張しています。
 しかし、福島原発事故や大規模災害などの緊急事態は、「温暖化対策基本法」「災害対策基本法」など現行法制の改正、必要な立法で十分対応できます。
 環境権については、リオ地球サミットの合意に基づき「環境基本法」の制定が検討された1992年当時、私たちは環境庁長官に「国民と地域にかかわる環境権を明記すること」
「環境権及び環境保全政策を国及び自治体のすべての政策の上位に位置づけること」を申入れましたが、自民党・経団連の強い反対で骨抜きになった経緯があります。
 また「ストックホルム宣言」(1972年)「リオ宣言」(1992年)を基本に成立した
オーフス条約の規範(@情報を誰もが適切に入手できる「情報アクセス権」A政策決定に参加できる権利を保障する「政策決定参加権」B裁判による救済を受ける「司法アクセス権」)を「環境基本法」に盛り込むよう環境省に申入れしています。今年の第41回公害総行動(6月1〜2日)の政府交渉でも重要課題とするつもりです。
 いまからでも遅くありません。憲法を「改正」し環境権を加えるまでもなく、環境基本法を改正し、きちんと環境権・上位規定を明記しましょう。
 そして改憲勢力の主張は、「改憲の初手」「おためし改憲」の狙いが明白で、ほんとうの狙いが「9条改憲」にあることを見抜くことがきわめて重要と考えます。

4.私たちは今後とも「地球・共生・未来」を求め、「公害の根絶」をめざします。憲法を活かし、共同の力で「原発ゼロ・ストップ温暖化・再エネ普及」の運動を発展させます。

 リオ〜京都〜コペンハーゲン〜パリとCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)に代表団を派遣、一貫して取り組んできた公害・地球懇はCOP21合意の意義を感慨深くとらえ、高く評価しています。同時に、この合意と相容れない安倍政権の「原発・石炭依存」のエネルギー政策を転換し、極めて消極的な「CO2削減目標」を再検討し、「大口排出源規制」を強化する必要があると考えています。
 COP21は「気候変動とテロが人類の生存を否定し平和を脅かしていること」を同時に認識させてくれました。福島原発事故は「最大最悪の公害」であり、地球温暖化は「究極の公害」。そして戦争は「最大の環境破壊・人権侵害の公害」です。
 <いまこそ止めよう! 地球温暖化・原発再稼働・石炭火発建設・戦争法発動を!>
 憲法問題を最大の争点とする参議院議員選挙の直前に取り組まれる第41回公害総行動(2016年6月1〜2日)では、「なくせ公害、守ろう地球環境」の合言葉のもとにすべての公害被害者が団結し、「公害被害者の救済と根絶、平和を求める公害総行動」の成功をめざし全力を尽くします。

◆小池信太郎(こいけ しんたろう)さんのプロフィール

1934年東京生まれ。1963年から93年まで全農林東京都本部委員長をはじめ同労組諸役員を歴任。労働組合活動とともに約30数年間にわたって、カネミ油症事件、水俣病問題、大気汚染公害裁判闘争に携わり、1976年から取り組まれ今年第41回目をむかえる「全国公害被害者総行動」に第1回から参加。国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)元事務局長。現在、公害・地球環境問題懇談会(公害・地球懇 JNEP)代表幹事、特定整備路線・放射2号線の白紙撤回を求める住民委員会代表。




 
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