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子ども虐待死ゼロを実現するための緊急ネット署名にご賛同ください

2016年5月2日



後藤啓二さん (弁護士・NPO法人シンクキッズー子ども虐待・性犯罪をなくす会代表理事) 

 今年に入り異常なほど子ども虐待死が続きます。虐待死させられる子どもは統計上年間100人程度とされていますが、病院等での見逃しがあるため日本小児科学会の推計では年間350人程度にも上るとされています。
 私が代表を務めるNPO法人シンクキッズは、2014年夏から、日本ユニセフ協会、全国犯罪被害者の会(あすの会)を共同呼びかけ人とし、日本医師会、日本小児科学会等多数のご賛同を得て、子ども虐待死ゼロと虐待を受ける子どもを可能な限り少なくするための法改正を求める署名運動を実施し、2015年末までに35,000人の署名と要望書を安倍総理大臣らに提出しました。求める改正の概要は次の5点です。

1 児童相談所・市町村・警察の虐待情報の共有と連携した活動の義務付け
2 学校・市町村・警察が連携した所在不明、不登校等の児童の保護の義務付け
3 児童相談所の一時保護を子どもの命を最優先に判断することを義務付け
4 望まぬ妊娠等子育て困難な妊産婦を医師が市町村に通報する制度の整備
5 虐待を受けた子どもへの精神的な治療・カウンセリングの無償実施

 現在の子ども虐待に対応する行政の取組はありえないほどずさんですが、中でも最も信じられないことは、欧米では当然の児童相談所と警察との虐待情報の共有すらできていないことです(下図ご参照)。

                
                    

 現状は、警察は把握した虐待案件は児童相談所にはほぼ全件情報提供していますが、児相は把握した虐待案件を警察にはほとんど情報提供していません。虐待情報の共有ができていないのです(高知県を除く)。そのため次の問題が生じています。

1 児相の把握している家庭について110番が入ることは多いが、現状では児相から情報を得ていないため、警察官が家庭に駆け付けた際に親から「夫婦喧嘩」と騙され虐待を見逃してしまい、直後に子どもが殺害される事件も発生するなど(東京都葛飾区虐待死事件等)、住民からの貴重な通報が死蔵されている。また、家出・深夜はいかいの子どもを警察官が保護した際も、同様の問題が生じている。
 さらに、このことにより警察が110番対応、家出等の子どもの保護等の警察活動を通じて把握した虐待家庭・被虐待児の状況を児相にフィードバックできず、児相が正確な虐待リスクの把握ができない状況を自らもたらしている。

2 児相の職員に対して親が面会拒否した場合、虐待家庭の所在が不明の場合にも、児相は警察に連絡せずそのまま放置するため、虐待死に至る事案が多数生じている(群馬県玉村町虐待死事件、大阪市マンション内2児放置餓死事件等)。

3 さらに、情報共有が実現した場合でも、児相は児童福祉司1人当たり140件もの案件を抱え、多くのケースで家庭訪問すらできず、児相が知りながら虐待死させられた子どもが10年で150人に上り、警察が知りながら虐待死を防げなかった事案も少なくないことから、児相、警察、市町村が連携して家庭訪問し、子どもの安否確認、親への指導支援を行わなければ、虐待死はもちろん虐待のエスカレートは抑止できない。なお、「189」が活用されればされるほど、児相が案件抱え込みを続けるならば、益々家庭訪問すらできないケースが増えるだけ。

 以上のことから明らかなように、虐待死・虐待のエスカレートを防げない大きな原因は、児童相談所が態勢がなく、夜間・土日は対応しないにもかかわらず、案件を抱え込み、警察等関係機関と情報共有の上連携して活動せず、かといって自ら家庭訪問し子どもの安否確認と親への指導支援を行わず、危険な状況にある子どもをほったらかしにしていることにあります。

 私どもは、これまで、厚生労働省、警察庁や東京都、愛知県・名古屋市、大阪府、神戸市等の児童相談所や警察の幹部と直接面談し、法改正と児相と警察との情報共有と連携しての活動を求め、知事らあてにも要望書を提出してまいりました。
 これらを受け、政府も官邸に「児童虐待防止関係省庁副大臣会議」を設置し、私も同会議で上記法改正の意見を述べるなど対策が進むと思われましたが、本年3月29日に政府から国会に提出された改正案には、児童福祉の理念の規定や子育て困難な妊産婦について医療従事者等からの通報の努力義務(これは私どもの要望の記4に当たります)など評価される点もありますが、肝心の子ども虐待死を防ぐための対策が欠落しています。
 一つの機関だけで子どもを虐待から守ることなど到底できません。児童相談所と市町村、警察が情報共有し連携して、可能な限り虐待家庭を訪問し、子どもの安否確認と親からの相談にのり必要な指導支援をしなければ、いつまでも殺される子どもの数は増えこそすれ減ることはありません。この改正案のままでは児童相談所はあいかわらず案件の抱え込みを続けることとなり、子ども虐待死はもちろん子ども虐待のエスカレートにも効果があるとは到底思えません。そこで、最低限の規定として、児童虐待防止法に、

児童相談所長は、通告を受けた虐待案件について、当該案件の児童の現在地の警察署長(以下「警察署長」という。)に通知するものとする。

との規定を設け、児童相談所と警察との情報共有と連携しての対応を制度として整備する必要があると考えています(情報共有ができれば、自ずから連携して活動することになると考えております)。
 本来は、政府案に盛り込んでいただきたかったですが、署名活動と直接面談しての要望活動を行っても、厚生労働省、警察庁から拒否された上は、国会で修正して追加してもらうしかありません。

そこで、私どもは、緊急ネット署名

「子ども虐待死ゼロを実現するため、児童相談所と警察が情報共有し連携して活動する法律を作ってください」

を4月22日から実施しています。下記URLシンクキッズのホームページをお開きいただき、中ほど(スマホの画面)又は上部左側(パソコンの画面)にある「緊急ネット署名をお願いします」ボタンをクリックの上、ご賛同いただきますようお願いいたします。http://www.thinkkids.jp/

◆後藤啓二(ごとう けいじ)さんのプロフィール

昭和57年4月警察庁入庁。内閣法制局参事官補佐、警察庁生活安全局理事官、大阪府警察生活安全部長、愛知県警務部長、内閣参事官(安全保障・危機管理担当)等を歴任し、平成17年警察庁退職。
 現在、後藤コンプライアンス法律事務所代表、NPO法人シンクキッズー子ども虐待・性犯罪をなくす会代表理事として、企業・官庁・病院・学校などのコンプライアンスやリスク管理、反社会的勢力対策等の企業法務のほか、子ども虐待・児童ポルノ問題等に取り組むとともに、「全国犯罪被害者の会(あすの会)」幹事として犯罪被害者の権利の確立、支援に取り組む。

 警察庁勤務時、ストーカー、DV、トラフィッキング、子ども虐待等子どもと女性を守るための対策を警察が積極的に取り組むことを打ち出し、ストーカー規制法、児童ポルノ禁止法、「大阪府安全なまちづくり条例」、「大阪府迷惑行為防止条例」、「愛知県安全なまちづくり条例」等の立案・制定・その実現に向けた運動に携わるほか、暴力団対策法の制定、風俗営業等規制法、道路交通法の改正等に携わる。
 弁護士になってからは、全国犯罪被害者の会(あすの会)の顧問弁護団の一員として、犯罪被害者の司法参加等を定めた刑事訴訟法の改正に向けた取組に携わる。内閣府男女共同参画会議女性に対する暴力部会、東京都青少年問題協議会の委員を歴任し、第三次男女共同参画基本方針の策定や子どもの性行為等を描いた漫画の販売を条例で規制することを内容とする答申の策定に関与。このほか、経済産業省、外務省、警察庁の各委員会の委員を歴任。自治体等からの相談に応じている。






 
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