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羽田増便問題を考える

2016年8月22日



秋田 操さん(羽田増便による都心低空飛行計画に反対する東京連絡会 共同代表・「品川区民の会」代表)


航空機騒音を計測(大田区城南島の上空。2016年7月24日)

南風時の飛行コース図 国交省による修正案
出典:国交省ホームページ『羽田空港のこれから』V2.1追補版より(PDF)

羽田増便による低空飛行ルートに反対する品川区民の会のデモ
(2016年6月19日)

 国土交通省は2014年7月、「首都圏空港機能強化技術検討小委員会中間まとめ」なるもので都心低空飛行ルートを設定することを発表しました。この内容はあくまで技術的検討であって、航路下の環境問題、安全問題とくに新航路でどれだけリスクが増えるのかについての検討、羽田空港をめぐる飛行コースの歴史的経緯についての検討はありませんでした。増便の必要性についても、あいも変わらずの「国際競争力強化」「東京を世界一の都市に」「経済発展」のためであり、東京オリンピック・パラリンピックの2020年を期限として最大限に利用しています。

騒音問題の前史—1960年代から
 この羽田空港による騒音問題には、忘れてはならない前史があります。1960年、国内線にジェット旅客機が導入され、ひどい騒音問題が発生しはじめ、大田区、品川区、東京都などが騒音対策委員会を設置、国に強く騒音解消を働きかけました。1965年には、国が航空会社に、東京モノレールから内陸に航路をとらないよう指導。「品川区史」によると、1973年の1年間で南大井4丁目の浜川小学校で5420回の騒音を記録、このような違反飛行が繰り返され、たたかいが続きました。江戸川区でも1971年3月突然航空機騒音が発生、飛行差し止めの裁判を区長、区議会、住民が起こした結果、運輸省が軽減対策を講じて裁判は取り下げられるということもありました。
 その後、再び騒音問題を起こさないということで羽田空港は沖合移転し、今日まで6000フィート以下で内陸に航路をとらないルールが守られてきました。
 今日の東京の空は、いろいろ問題はあるものの、一応静穏が保たれているのは、このような歴史的経緯があります。今回の羽田増便都心低空飛行計画は、過去のいきさつを無視し、法的に都心に航路をとることが禁止されていないとする無謀なものです。残念なことに国が騒音問題で約束したことが、ほとんど証文に残っていないのです。当時は政府・運輸省は、運動に押され時間はかかったけれどある程度聞く耳をもって都・区・議会・住民側の要求を聞くことになったのでしょう。住民側としても、今日のような国・国土交通省の態度は、想定外であったのかもしれません。

住民を無視した「丁寧な説明」
 まず、問題なのは国・国土交通省のスケジュールにもとづく住民の意見を締め出す一方的な手法です。2014年8月に「首都圏空港機能強化の具体化に向けた協議会」(首都圏の関係都県、特別区長会長、航空会社、学者、航空局長などで構成)を結成し、同月に第1回会議を開催。ここで安藤東京都副知事は、「世界一の都市・東京を標榜する都として、また、2020 年のオリンピック・パラリンピックの開催やその後を見据えると、羽田空港の機能強化は必要不可欠であると考えている。」と述べました。特別区長会・西川会長(荒川区長)は、「 首都圏空港機能強化は、東京オリンピック・パラリンピック開催を控えた中、特別区をはじめ地域の振興を考える上でも大きな課題と認識。 今後、関係自治体の住民が安心して暮らせるような結論を導くために、丁寧な説明、協議をお願いする。23 区のエゴを言うつもりはない。」と述べています。この流れの中で、国土交通省は、関係区と協議を繰り返し進めました。こうして1年たった昨年7月から、丁寧な説明とする住民説明会を第1フェーズ、第2フェーズと2段階で開催。この説明会は、「フェイス・トゥ・フェイス」で説明員が参加者に説明し、住民をバラバラにするものでした。朝日新聞8月13日付の社説でも「もっと多くの人に周知するため、大きな会場での会議方式の説明会も必要でないか。」と指摘しています。「教室型の説明会を開け」と要求しても全く応じていません。こうして自治体を取り込み、住民を包囲しバラバラにする作戦で一貫しているとしか考えられません。

都心低空飛行の異常
 また、飛行ルートの異常さの問題もあります。南風時では着陸機が2本のルートで1時間当たり44便が午後4時間にわたって羽田空港A、C滑走路に着陸。板橋、豊島、練馬、中野、新宿、渋谷、目黒、港、品川、大田各区を低空飛行。同じく南風時に、B滑走路からの離陸便が大田区、川崎市とコンビナートの低空を飛行。北風時には、C滑走路から8時間にわたって1時間22便の離陸便が荒川に沿った航路をとり、江東区、江戸川区などを低空飛行するというものです。
 このような都心の密集地帯に低空飛行することで環境の悪化は計り知れないものがあります。東京の空が曲がりなりにも静穏であったことにより、その空のもとで住民の生活と命の安全の環境が保たれてきたことが水泡に帰します。
 この航路により騒音の問題、落下物の危険、大気汚染、航空機の事故の危険などが考えられますが、国土交通省は、新ルートによるリスクについては、検証していないとしています。環境悪化、命と生活の危険にたいする国・国土交通省の無責任さが現れています。

自治体は住民の声を聞け
 この7月28日4回目の「協議会」開催され、「国及び自治体は、羽田空港機能強化の必要性について認識を共有した。」とする確認文書が発表され、「環境等に配慮した方策」という実施計画を自治体が評価、予算措置も理解と書かれましたが、住民の意見は全く反映されていません。

先人の残した東京の空を守る
 この都心低空飛行計画は、圧倒的都民が知りません。これが広く伝われば真実、正義がどこにあるか、はっきりします。先人の30年間の長いたたかいで今日の東京の空があります。必ず多くの都民、住民がたたかいに立ち上がり、この無謀な計画を止めることになると確信しております。

◆秋田操(あきた みさお)さんのプロフィール

1938年生まれ 77歳 京都市出身 大田区6年 品川区37年在住
羽田増便による都心低空飛行計画に反対する東京連絡会 共同代表
羽田増便による低空飛行ルートに反対する品川区民の会 代表



 



 
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