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薬害防止と全国薬害被害者団体連絡協議会の活動

2016年11月7日



花井十伍さん(全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人、大阪HIV薬害訴訟原告団代表)

 全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)は、薬害被害者団体によって構成される連絡協議会です。現在、10薬害12団体が加盟しており、本連絡協議会の目的は薬害根絶です。
 クスリ‥医薬品には必ず副作用があり、医薬品の副作用被害を完全に無くすことはできません。しかし、薬害は別です、薬害は単なる副作用被害とは異なり、本来医薬品として販売すべきではなかった、用法・用量が適切に表示されていなかった、市販後に判明したないし生じた新たなリスクに対する対応が遅れたなど、人災であって、かつ個人的な被害ではなく、社会的に広がった被害を私たちは、薬害被害と呼んでいます。
 薬害という言葉の成立するきっかけとなった被害が、サリドマイドによる胎児被害とキノホルムによるスモン被害です。
 サリドマイド剤は、1957年にドイツのグリュネンタール社が発売した鎮痛催眠剤で、日本では大日本製薬が1957年には睡眠薬「イソミン」、1960年には胃腸薬「プロバンM」として販売しました。1961年11月18日、サリドマイド販売後、それまで見る事のなかった奇形児が増加していることをドイツのレンツ博士が発表(レンツ警告)、ドイツでは11月25日サリドマイドの回収が決定しました。日本では、科学的根拠が無いことを理由に、1962年9月13日まで販売中止、回収が行われず、被害が拡大しました。
 キノホルムは、1934年頃から武田・チバ社が、「ヴィオフォルム、エンテロ・ヴィオフォルム」として輸入またはライセンス製造していた整腸剤です。本来アメーバ赤痢の治療薬として戦地で使用されていた殺菌剤でしたが、戦後整腸剤として市販薬や置き薬としても販売され、1950年代頃からスモン(SMONsubacute myelo-optico-neuropathy)病の原因となり被害が拡大しました。
 サリドマイドは初めて国、製薬企業を被告として争った損害賠償訴訟に発展しました。スモンも国、製薬企業を相手取った訴訟が提起され、これら運動において、薬害根絶という単なる被害救済を越えた、目標が掲げられるようになりました。
 以降、血液製剤へのHIV(ヒト免疫不全ウイルス)やHCV(C型肝炎ウイルス)混入やヒト由来乾燥硬膜への異常プリオン(クロイツフェルト・ヤコブ病原因タンパク質)混入など、生物由来の製品への病原体混入事件も一様に薬害訴訟として、国、企業を相手取った訴訟に発展しています。
 サリドマイド以来、薬害被害と訴訟は現在まで絶え間なく連続しており、現在は、HPVワクチン(子宮頚がんワクチン)による副反応被害が提訴され、係争中になっています。こうした事実からも、薬害は繰り返し生じていると言えます。
 薬害訴訟の多くは、和解による解決が図られてきましたが、和解時には、繰り返し厚生労働大臣(旧厚生大臣)が、再発防止策を講じることを約束してきました。その具体化の取り組みとして、薬事法と関連法が改正されてきました。サリドマイド、スモンの時代には、副作用報告義務も国の回収命令権限も定められていませんでしたが、スモンを契機として、1979年の薬事法改正によって、副作用報告義務、国の回収命令、緊急命令権限、再審査制度など近代的薬事法の基本骨格が法制化しました。
 HIV、ヤコブの和解を受けては、生物由来製品、特定生物由来製品の規定が設けられ、感染症に対する監視強化がなされた。薬害事件は、国の薬事行政を見直すきっかけとしての役割をも果たしてきたと言えます。
 しかし、一方では薬害は繰り返される現実から、薬害の経験は、薬事行政だけの教訓として矮小化されてはならないことも示唆しています。肺がん治療薬「イレッサ」(ゲフィチニブ)やHPVワクチンは、少なくとも、国際的にも遜色のない審査体制の下で承認された医薬品であり、誤解をおそれずに言えば、規制基準を十分認識しつつ、企業の販売戦略によって、過剰な販売拡大を画策したものであるとの指摘も可能です(この「過剰な」の部分こそが筆者の薬害であるとの意見表明にあたる)。
 また、こうした企業戦略の具体的方法論として、専門家集団に研究資金等を提供することにより、少なくとも、研究デザインの上では自社に利益をもたらす可能性のある論文が多く発表されるような環境をもたらすとともに、現場の医師へ提供される重要な情報源を医療情報担当者(MR)が多くを占めることになどによって、専門家の自律的合意形成に深く関与することが行われているように見えます。こうした現実は、医薬品の供給を営利企業が行っている限り、当初から存在した構造的問題であるとも言えますが、近年の製薬企業のグローバル化の流れによって、より明確な形で顕在化した問題であると言えます。
 これら現状認識の下、私たちは、フォーラムの開催や、厚生労働省、文部科学省との協議を通じて、薬事行政のみならず、医療制度全般に対してさまざまな働きかけを行うことによって、子どもたちを薬害の被害者にも加害者にもしないために、薬事行政のみならず、医療政策一般についても活動を行っています。

全国薬害被害者団体連絡協議会

◆花井 十伍(はない じゅうご)さんのプロフィール

 1962年長野県に生まれる。同年血友病と診断され、血液製剤の無い時代からクリオプレシピテート製剤、濃縮製剤へと血液製剤の技術革新を体験しながら育つ。輸入血液製剤によりHIVに感染。1994年大阪HIV薬害訴訟原告団加入。1996年より、血友病患者、血液製剤由来のHIV感染者のケア・サポートを目的としたNGOである「ケアーズ」に加入。1997年から、大阪HIV薬害訴訟原告団代表。1998年中央薬事審議会企画制度特別部会臨時委員、2002年「血液製剤の製造体制の在り方に関する検討会」委員。1999年から「全国薬害被害者団体連絡協議会」代表世話人。2000年「ネットワーク医療と人権(MERS)」設立、同年から理事。2003年薬事・食品衛生審議会血液事業部会委員、同年同部会運営委員会委員。2004年医薬品医療機器総合機構審査・安全業務委員会委員。医薬基盤研究所運営評議会委員。2009年再生医療の制度的枠組みに関する検討会委員。2011年中央社会保険医療協議会委員他。
1996年 血友病HIV患者サポートNGO「ケアーズ」
1997年 大阪HIV薬害訴訟原告団代表
2000年 特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権理事

研究業績
HIV診療支援ネットワークを活用した診療連携の利活用に関する研究(分担研究)
HIV感染予防個別施策層における予防情報アクセスに関する研究(分担研究)

<著書>
輸入血液製剤によるHIV感染問題調査研究 報告書 輸入血液製剤によるHIV感染問題調査研究委員会 編 特定非営利活動法人 ネットワーク医療と人権
薬害が消される 全国薬が被害者団体連絡協議会編 さいろ社 
環境と人権 木野茂 編 東京教学社
以上共著

<論文>
地方における陽性者のライフストーリ研究(共著)
(厚生労働科学研究費補助金 エイズ対策研究事業HIV感染予防個別施策層における予防情報アクセスに関する研究報告書:主任研究者服部健司<群馬大学大学院医学系研究科>)

<所属学会>
日本エイズ学会
日本社会学会
日本生命倫理学会
医学哲学倫理学会



 



 
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