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自死遺族の想いと現在の活動

2017年2月6日



石倉紘子さん(こころのカフェきょうと 代表)

わたしは、30年前に夫を自殺で失いました。

夫は、職場の人間関係が原因でうつ状態に陥り、入退院を繰り返し、東京で自傷行為の事件を起こし、強制入院になってしまいました。
1985年1月に警察病院を退院し、4月には、青森のホテルの部屋で首吊り自殺をしてしまいました。
夫の父親は、夫が自殺したのは妻である私の責任だと言い、死に顔も見せてくれませんでした。

当時はその事実を受け入れることができずに、仕事にもいけず、カーテンを締め切り、死にたいほど苦しかった夫を救ってあげることのできなかった自分を責め、私をおいて逝ってしまった夫を責め、2回の自殺未遂でも死ぬことができず、ひたすらお酒におぼれ、泣き、わめき、自分の人生を呪う日々でした。
・なぜ、夫は私をおいていってしまったのか?
・なぜ相談してくれなかったのか?
・私が良い妻ではなかったからなのか?
・私と結婚しなければまだ幸せな人生を歩んでいたのか?
・なぜ死んだの?
なぜ?なぜ?なぜ?の繰り返しでした。
来る日も来る日もそのことを考えて眠れず、眠るためにお酒を浴びるほど飲み、泥酔して、泣いてやっと眠る日々でした。
そんな生活が半年ほど続き自殺未遂をして病院に運ばれ、54キロあった体重は36キロになってしまいました。職場の上司にもそういった状況を発見され、その後、点滴をしながら毎日泣く日が続き半年後にはまた自殺未遂を起こしました。
3日間眠り続け、あと数時間発見が遅れたら生きていなかったといわれました。枕もとで泣く母親の姿を見て母親より一日だけ長く生きてみようと思いました。
その後は、死ぬ気力もなくなりましたが、生きる気力もなくなりました。

夫の自殺については、職場の上司しか知りませんでしたし、自殺された妻であることを知られたくなかったし、又、自殺遺族であるという同情や偏見で見られたくないということがあり、人にもまったく話すことができませんでした。
逆に、わざと明るく振舞い、"明るく元気な保育士"を演じていました。又、夫の死について聞かれると「心臓の病気で急に…」、「急な病気で…」などと、とっさにその場を取り繕う嘘をついていました。

その後、私自身が、社会活動を始めたきっかけは、1995年1月に起こった阪神淡路大震災です。
テレビに映し出される画面を見て、じっとしていられない気持ちになり、日曜日ごとに神戸の仮設住宅に通うようになってからです。
仮設住宅でも、孤独死がとても多かったのです。時に、仮設住宅の住民の方から要望のあったカレンダーを届けた際に、その方が既に自殺してしまって数日後に発見された、又引き取り手もないということもありました。
また、自殺した人、遺された遺族への誤解、偏見、無理解、差別を痛切に感じる機会もありました。
住み慣れた住宅から、知人も友人も居ない仮設住宅に移り住むことを余儀なくされた方々のさびしさ、悲しさ、先行きの不安は、計り知れないものがあったでしょう。
そのときに感じたことは、夫の死も含め、自殺した人の死を決して無駄にしてはいけないということでした。

私は、夫を救うことができず、むざむざと死なせてしまった。そしてその辛かった人生すらも語ることをせず、私の死のときまで沈黙してしまおうとしている。夫の死に至るまでの生を語らなければ、夫はまるでこの世に存在しなかったも同然になってしまう。
うつ状態で必死に闘病生活を続けた夫について、私が生きているうちにきちんと語りたい。
そうでなければ、夫を2度死なせてしまうということになる。そんなことをしきりに考えるようになりました。

夫の遺書には、こう書いてありました。
「君と生きた10年間は本当に幸せだった。僕の分も長生きしてください。」
本当は、生きたかっただろうに優しすぎて、まじめすぎて生きられなかった夫の分まで長生きして、夫の死が無駄ではなかったことを証ししたい、と思うようになりました。

その数年後、「NHK テレビ クローズアップ現代」《自殺っていえなかった》−自死遺児たちの叫び−を見たときには、更に強い衝撃を受けました。
「自分の親は自殺した。そのことをずっと言えなかった。しかし、今、自分の親の自殺について語ることこそが、生きていくうえで大切!」といった意味のことを数人の学生が涙ながらに語ったのですが、そのときに、私は番組を見ながら、決意していました。

自殺遺族である私が、これから出来ること。
・自殺に追い込まれてしまった人たちのその苦しみを理解してもらうこと。
・不幸にも愛する人を自殺で失ってしまった遺族が抱えている問題について勇気を持って語ること。
・家族の自殺について知られることを恐れて社会の片隅で、まるで悪いことを仕出かしたかのようにひっそり暮らし、誰にも話せず、引越しや、離婚や、家族崩壊の中で更に 追い詰められている遺族の現実を、少しでも多くの人に知ってもらいたい。
・知られていないことから起こる偏見や差別を明らかにし、ひとつずつでも解決していくこと。
・一人で悲しみ、苦しみ、自分を責め、もがき苦しむ遺族が、語れない辛い思いや、自殺してしまった愛する人のことについて存分に語れる場所、泣いたり、悔しさをぶちまけたり、怒ったりできる、安心して語ることのできる場所を作ること。

また、こんな思いも強く抱くようになってきました。
・自殺遺族がどのような問題を抱えているのか皆さんにわかってもらうことで自死遺族が少しでも、生きやすくなるのではないか。
・抱えている問題の解決に至るつながりを持つこと。
・遺族の自殺率は非常に高いのだけれど遺族の会を開くことで気持ちが少し軽くなり、辛いのは自分だけではないことを実感し、同じように辛い気持ちの遺族とつながることで少し気持ちが落ち着くのではないか。
・悲しみや耐えられそうも無いつらさのあまり後追い自殺をしてしまうことから、少しは、生きてみようという気持ちが起こるのではないか。
・自殺未遂者は自殺者の10倍以上といわれているが、その未遂者支援をすること、遺族支援をすることは、共に自殺予防にもつながるのではないか。
 などということでした。

多くの遺族は「自殺遺族には、幸せという言葉は無い、希望なんて無い、将来なんて無い!」ということを言います。
「決してそんなことは無い」ということも言いたいです。
生きていればこそ、感じられる人の優しさや、楽しさや、喜びや、時には、笑いあえることや、花の美しさや、自然のすばらしさなどが有ること、いつか癒されて前に進むことができること、などを伝えたいと思っています。
自殺する人は、「弱い人、まじめすぎる、几帳面すぎる、優しすぎる」とよく言われます。
それは悪いことでしょうか。

本当はとても大切なことではないでしょうか。
まじめすぎることを、からかわれたり、笑われたり、優しすぎることがまるで悪いことのようにはやし立てられる。
そしていじめにあい、自ら若いいのちをたってしまう、若い人の死亡原因のトップは自殺なのです。そんな社会が良い社会といえるでしょうか。
ここ数年間の若い人たちの自殺報道を見聞きするにつけ心が痛みます。

今の社会では、成果が第一と叫ばれるようになり、結果を出すことが一番の社会になってしまった、結果を出せない人は存在そのものを否定されてしまうなど、まるで生きる値打ちも無いような社会になってしまって、挙句の果てに、先進国の中で飛びぬけて高い自殺率になってしまったのではないでしょうか。
自殺もうつ病も、社会のあり方が起こしている問題だと私は思います。
勿論ひとつだけが原因ではないと思います。
健康問題、経済不安、就労問題、高齢化社会、育児困難さや少子化社会での先行きの不安や、地域社会での人間関係の希薄さなど、様々な問題が絡み合って死に追い込まれてしまうと思います。

このようなストレスの多い社会の変化の中で、うつ病になり自殺に追い込まれてしまう人があとをたちません。日本では、ここ数年自殺者が減ったとはいえ一日約70人の人が自殺しているのです。
うつ病についての理解も不可欠です。
時には、怠け者といわれたり、わがまま病といわれたり、辛いうつ状態の人に対して更に追い討ちをかけることばかりです。
このような社会にあって誰にでも起こりうる問題として自殺問題について考えなければ今の深刻な事態が解決しないのは明らかです。
また、このような社会でストレスを多く抱え、まじめであればあるほど、優しければ優しいほど傷つき、生きにくい社会を、まじめこそが大切、優しいことが人として大事、とされるような社会を求め、心優しい人間関係を築いていきたいものだと実感させられます。

こころのカフェ きょうと 

・毎月 第2土曜日午後1時15分から「分かち合いの会」ハートピア京都 参加費500円(4月、9月、12月は他のイベントを行いますのでありません)
・毎月 第1、第3木曜日午後1時半から3時半フリースペース 
 京都市こころの健康増進センター(中京区壬生仙念町3リハビリテーション推進センター2階)参加費200円
・12月初めに、年1回の遺族交流会 コンサート 講演会 対談を行います。
・年1回、京都市 京都府 こころのカフェきょうと 他の民間団体と共催のイベントを行います。
・年に1回、市民とともに学ぶ研修会 遺族とともに学ぶ勉強会などを行っております。
・また遺族の抱えている問題についての伴走支援なども行っております。(賠償金 借金のこと 相続のことなど諸々の抱えている問題について専門家紹介の際について行く、 支援など。)
・電話での情報発信も行っております。(090-8536-1729 午後6時から9時まで 他)

これをお読みくださる皆様が同じ時代を生きるものとして自死遺族と共に、また生きにくさを感じ日々辛い気持ちを抱えた方々と共に歩んで下さることを心からお願いしたいです。

※ 1998年ごろに急激に自殺者が増えたのですが、そのころ親御さんを自殺で亡くした子どもさんのグループが自殺という言葉に違和感、嫌悪感を持ち、自分たちのことを「自死遺児」というようにしたということを読んだことがありますが、その後遺族の中にも自死という言葉を使う方々も増え、現在では、都道府県でも公用語として「自死」としているいくつかの行政があります。
私の場合は、現在は「自死自殺」と併記したり、また、亡くなった夫も通常、「自殺」を使っておりましたので使い分けるなどしております。

◆石倉紘子(いしくら ひろこ)さんのプロフィール

1944年1月12日長野県生まれ
1962年 東京都職員として大田区役所税務課勤務
1974年〜2004年3月まで 保育士として30年勤務
1985年4月  夫を自殺で亡くす
1995年  阪神淡路大震災ボランティア
2003年  神戸分かち合いの会スタッフ
2004年4月  立命館大学文学部心理学科入学 学内サークル「いのち、こころ、死について考える会」設立 代表
2006年2月 「こころのカフェ きょうと」(自死遺族サポートチーム)設立代表
2008年3月  立命館大学卒業
2008年4月  華頂短期大学 幼児教育学科 保育学科 非常勤講師として勤務

現在 京都府自殺対策推進協議会 京都市自殺対策総合推進会議 委員・相談員。
自殺実態白書2008・2012作成(調査員)。
内閣府自殺対策ガイドライン作成委員。
全国自殺対策総合支援センター副代表。
社団法人全国自殺対策民間団体 運営委員。 



 



 
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