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増え続けるコンビニと日本におけるフランチャイズ問題

2017年3月6日



中村昌典さん(弁護士)

 統計によれば、日本のコンビニエンスストア(以下「コンビニ」といいます)の店舗数は2016年9月時点で5万6000店を超えたそうです。都市であれば、どこにでも複数の店舗があります。すぐ近くにコンビニがない地域の方が珍しいかも知れません。

 24時間開いていて当然。いつでも食べ物や飲み物、生活必需品を購入できる。コピーやチケット購入、宅配便の手配など提供するサービスも多彩というコンビニは現代日本人にとっては日々の生活を営む上で無くてはならない存在だと思われていることでしょう。
 今日では、公共料金収納の取扱や住民票発行などの自治体の業務、災害支援、犯罪防止など、コンビニが社会のインフラとして様々な公的役割を担うことをも期待されています。
 しかし、普段忘れていませんか。コンビニの1店舗、1店舗を経営しているのは、チェーン本部ではなく、個人事業主である加盟店主であることを。24時間年中無休の上に、わずかな手数料と引き換えにこうした社会のインフラ的業務まで担っている加盟店主は大変疲弊しています。
 
 最近の実情を知って頂くために、筆者が受けた相談をいくつか取り上げてみます。

・同じ道路沿いのわずか500メートル先に同一チェーンの新店を出店された。計画を知って、「同じ商圏内の顧客の取り合いになる」と訴えたが、本部は聞く耳を持たなかった。新店が開店するとすぐに売上高が15%も減少し、その影響は現在も続いている。しかし、本部は「オーナーの営業努力が不足しているからだ」と全く取り合わない。

・売上高が低く、人件費を抑えるために日頃からオーナー自身が長時間シフト労働に入っている。最近は時給単価も上がり、人材を募集するのも困難である。連休があるとアルバイトが休みを取り、シフトに入ってもらえない。自分でシフトに入り続けて30時間も家に帰れないこともあった。ひと月の勤務時間は厚労省の過労死の基準を遥かに超過している。生命の危険を感じるので、限界が来た場合には臨時に、地方のため来客がほとんどない夜間の5時間ほど店舗を閉めて睡眠を取りたいが、本部は顧客の利便性を優先し、夜間閉店を認めてくれない。

・長年、本部の指導に従って真面目に経営をしてきた。本部が推奨する仕入先からの推奨商品とは別に、独自の仕入先と商品を開拓し、現金仕入れで販売してきた。地域のお客様には喜んでもらえていると自負しているが、本部担当者はこの独自仕入れ商品について、「チェーンイメージに合わない」「契約違反の可能性がある」などとクレームを付けている。もうすぐ契約更新時期なのだが、「契約更新できない」などと言われている。更新によってようやくチャージ率が下がり、利益をもう少し出せるようになるのだが、納得がいかない。

 このように、本部による締め付け、過密出店による競争の激化と売上減少、人材難や人件費増大による利益減、増え続けるサービスによるシフト業務の増化・難化など、コンビニ店主の置かれている状況は、大変厳しいものとなっています。

 コンビニは他の業態と比較して売上高が大きい(平均的な売上高の店舗でも年間1億8000万円超)のですが、必要となる固定費も大きいため、加盟店主に残る営業利益も多くの場合は年間せいぜい400万〜500万円程度です。しかもこれは加盟店主が1日10時間、店主の配偶者などの家族が1日6時間程度、毎日計16時間のシフト労働を行ってようやく出せる利益の額です。休みを取るためにアルバイトを使えば、その分人件費が増え、店主の利益減に直結します。人件費を削るために、コンビニ店主自身が毎日深夜、長時間シフト作業をしていることも決して少なくありません。

 コンビニには食品廃棄の問題もあります。1店舗から、売れ残った弁当やおにぎりなどの食品が毎日2〜3万円分も廃棄されています。フランチャイズ本部がこのような過剰とも思える発注を店舗に指導するのは、「お客様がいつ来店しても、必ず欲しい商品があるように」とのことです。便利さの追求も行き過ぎるとどうなるのか、消費者の側でも立ち止まって考える必要があるのではないでしょうか。

 筆者は、あるコンビニ店主がフランチャイズ本部から「繁盛しているお店を任せる」と勧誘されたものの、勧誘時に人件費が実際には月120万円掛かっているのに、月70万円でできると騙され、蓋を開けてみると全く利益が出ない店舗だったという事件を受任したのを契機として、15年以上、フランチャイズ問題に加盟者代理人の立場で取り組んで来ました。少なくない交渉案件や訴訟事案を引受け、セブン−イレブン仕入代行報告請求事件(最判平成20年7月4日判時2028号32頁)や見切り販売妨害独禁法25条訴訟事件(東京高判平成25年8月30日判時2209号10頁)などの勝訴事案も積み上げては来ましたが、フランチャイズ加盟者が置かれている状況は当時より良くなったという実感が全くありません。繰り返し、同種の問題や被害が発生しています。

 問題があるのはコンビニに限りません。フランチャイズはあらゆる業態に広がっています。筆者が相談を受けた中で覚えているだけでも、ラーメン店、ファーストフード、居酒屋、串焼き屋、カフェ、パン屋、イタリアン、パソコン教室、学習塾、個別指導塾、保育園、幼児教育、子ども向け英語教育、デイサービス介護、マッサージ、掃除、ビル清掃、靴修理、鞄修理、美容室、金券ショップ、放置自転車回収、貴金属買取、接骨院等があります。真の意味でのウイン−ウインを真面目に目指しているフランチャイズ本部なら良いのですが、立派なのは加盟希望者に対するプレゼン資料だけで、とても成熟したビジネスとして確立しているとはいえないものや、既存店の平均的数値とはかけ離れた夢のような売上高や利益を示して勧誘するものなど、詐欺的なフランチャイズ本部や、そこまではいかないとしても志の極めて低いフランチャイズ本部がいくらでもみられます。

 会社勤めを卒業して起業すること、とりわけフランチャイズ加盟により起業することは、一国一城の主を目指す「夢のある行動」と理解され、さほどリスクの高い行為であるとは理解されていないようです。しかしながら、フランチャイズ加盟を失敗すると、投資したお金だけでなく、仕事(前職)も費やした時間(労力)も失い、場合によっては本人の健康や良好な家族関係も失うおそれがあります。消費者問題を取り扱う弁護士であれば誰でも、高齢者を中心とする投資詐欺被害の深刻さを知っていると思いますが、フランチャイズ被害は投資詐欺被害よりも、一層重大な消費者被害となりうる問題です。

 加盟者が多数いるフランチャイズチェーンにおいては加盟者の共通利害に関わる、チャージ率や契約内容の改訂などは、加盟者の正当な代表を通じて当事者で協議するのが望ましいはずですが、日本におけるフランチャイズ業界にそうした風土が全くありません。契約書には対等とか共存共栄とか謳っていても、フランチャイズ本部の本音としては加盟店主とは対等ではなく、支配し、従属させる対象と考えているためと思われます。
 
 前述した詐欺的な本部や志の低い本部であっても、決してフランチャイズ市場から排除されることはありません。くりかえし、加盟者の被害を発生させています。その原因の一つは、日本にはフランチャイズを実効的に規制する法律がないことが挙げられます。
 日本弁護士連合会は、筆者もその一員である消費者問題特別委員会の独禁法部会のメンバーを中心に、これまでアメリカ合州国、韓国、オーストラリアの法制度の実情を調査してきました。いずれの国でも、フランチャイズ規制を導入することによって、フランチャイズ業界に対する信頼が高まり、全体としても繁栄に繋がっている実情を見ることができました。我が国においても、フランチャイズ店主の当たり前の権利を当たり前に守れる、誰もが安全にフランチャイズに加盟できる土壌を整備する法律(加盟事業規制法)が必要ではないでしょうか。
 日弁連は、昨年のオーストラリアの調査結果を踏まえて2017年4月7日午6時から、霞が関の弁護士会館1701号室において、日本におけるフランチャイズ法規制を考えるシンポジウムを開催する予定です。是非、皆さんにもフランチャイズを巡る問題に関心を持って頂ければと思います。

◆中村昌典(なかむら まさのり)さんのプロフィール

弁護士(東京弁護士会所属)。中村法律事務所 所長
リンク先 http://nakamura-law.cool.coocan.jp/
1994年  京都大学法学部卒業
1997年  弁護士登録(49期)
1997年〜 東京弁護士会消費者問題特別委員会委員
2016年             同委員会委員長       
2011年〜 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会(独禁法部会)監事

コンビニ・フランチャイズ問題弁護士連絡会事務局
著書 「失敗しないフランチャイズ加盟〜判例から読み解く契約時のポイント」
    日本加除出版 
共著 「フランチャイズ事件処理の手引き」民事法研究会 
取材協力「クローズアップ現代+「好調」コンビニに"異変"あり」2016/11/17放送
    



 



 
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