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「ひきこもりのない社会をめざして 〜 KHJ全国ひきこもり家族会連合会の取り組み」

2017年3月27日



伊藤正俊さん(NPO法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会 共同代表)

 1999年12月に産声を上げたKHJ全国ひきこもり家族会連合会(以下KHJ)は、今年2017年で発足から18年となりました。当初からの活動目的である、ひきこもりを制度の狭間の問題と考えて社会に訴え、支援の枠組みを作っていきたいという思いとともに、同じ悩みを持つ家族が集まり社会的に孤立せず互いに助け合う事を目的として、家族会の開催を行ってまいりました。全国の家族会同士が連携し、情報を共有し、ひきこもりに関する理解促進のため、研修会や講演会を継続してきた結果、ひきこもりは誰もが起こりうる社会問題として認識されるようになりました。
 厚生労働省はひきこもりを、「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて概ね家庭にとどまり続けている状態」とし、時々は買い物などで外出することもあるという場合もひきこもりに含めるとしております。ひきこもりは、状態像であり、病気や障害の名前ではありません。その背景も要因も一人ひとりさまざまです。ひきこもり状態から抜け出せない背景に、障害があるのか、疾病があるのかが、家族会でも話題になりました。病気にしたくないという思いと、障害の枠組みに入りたくない、入れたくないという思いなどが交錯してきました。本人や家族のそのような流れの中で、わたしたちは、ひきこもる子どもを何とかしたいと立ち上がってきました。
 2017年3月現在、KHJでは、全国60支部が連携し、家族会の開催、居場所、講演会、研修会、地域との連携、行政への働きかけ等、多様な取り組みを行っております。その取り組みのひとつに、ひきこもりの実態に関する調査研究活動があります。
 図1は、当会の理事であり、徳島大学大学院総合科学研究部准教授で、認知行動療法、CRAFTを研究している境泉洋氏の資料です。家族会の会員を対象に2004年から継続しているアンケート調査をもとに現状と課題を提示したいと思います。

 図1

 このグラフは本人の年齢と初発年齢の推移を表していますが、ご覧の通り初発年齢が下がっており、本人の平均年齢が高くなっていることがわかります。
 この背景には様々な要因があると考えられますが、学齢期の出来事に影響があると考えております。家庭での出来事、学校での出来事、地域社会での出来事などが複雑に絡まった社会的な状況があるのではないかと推測することができます。また、困難な状態になった時の支援体制が追い付いていない事を表していることにも気づかされます。
 医療サービス、福祉サービス両方の支援体制もまだまだ十分とは言えないでしょう。KHJ共同代表であり、精神科医である中垣内正和が「ひきこもり外来」を掲げた医療サービスを行っていますが、ひきこもりに特化した外来数は、全国から見ても十分とは言えません。また、福祉サービスの中でひきこもりに関する正しい理解と支援を提供している団体も少数であると思います。障害が疑われない方々のための支援サービスももっと必要であると思います。

図2

 次に、ひきこもり状態が長引いて回復に時間がかかっているということが、図2の「ひきこもりの平均期間」のグラフで示されています。それに伴い、両親も高年齢化している傾向が「親の平均年齢」のグラフからわかります。
 それぞれのひきこもりのうち、有効な手立てがなかったものからは、長期化と高齢化の問題が見えてきます。親の高齢化の問題は、経済的な問題(年金生活)と体力や気力(衰え)の問題の両方がのしかかり、解決を難しくしています。
 平成28年9月、内閣府の「若者の生活に関する調査報告書」のなかで、ひきこもり54万人という数字が発表されましたが、その数字は、ひきこもりの全体像を正確に示しているか、調査の手法に問題はなかったかという疑問を残すものでした。
 KHJでは平成28年度に、厚生労働省からの委託事業「長期高年齢化に至るプロセス調査・研究事業」のもと、全国の家族会を対象に40代以上の長期高年齢化の事例の聞き取り調査を行うとともに、生活困窮者自立相談支援窓口を対象にアンケート調査を行いました。
 現在、「50・80問題」(本人の年齢が50歳、親の年齢が80歳)という深刻な問題が浮上しています。家族会に集う親も高齢化し、待ったなしの相談が寄せられており、40歳以上の実態調査と対応策の検討が全国で求められていました。結果として、内閣府調査では把握しきれない長期高年齢化の現状に光を当てるものであったと思います。
 家族会の事例調査からは、非常に困難なケースが多く報告されました。ひきこもり期間が長期に渡ることで対応が益々困難になることや、支援が途絶してしまっている現状、家族内で複数の困難を抱える事例に対し、社会資源や制度をどのように利用できうるかなど、さまざまな問題が話し合われ、新たな気づきが沢山ありました。(本研究事業の報告書は、4月中に、当会のホームページに掲載される予定です)。
 家族会に参加されている方々はたいへん学習熱心です。そのことが支援力の向上や社会的啓発になったりしていますが、自分の子どもだけを見ていても、なかなか回復に向かわない、というところがこの問題の奥深さでもあります。ひきこもりを家族の問題として、家族の問題だから、家族で解決しようとする「自己責任論」が潜在的にあるかもしれません。世間体や他人の評価が気になり、家族全体が社会から孤立し、その孤立からも目をそらしながら生活をしてしまう。もはや家族だけでは抜け出せない膠着状態がつづく。KHJではこれまで「ピアサポーター養成研修事業」を継続し、ピア(=仲間)同士で、家族だけの膠着状態に第三者の風を入れること、相互に支え合いつながることが大切であると考え、実践してまいりました。
 また、生活困窮者自立支援法の施行のもと、「地域におけるひきこもり支援ガイドブック」を発行し、有識者と共にこれまでの15年間の取り組みから蓄積されたノウハウを収めました。

 この「ひきこもり支援ガイドブック」は、医療、教育、社会、福祉など、様々な角度からひきこもりに携わってこられた研究者の方々にも執筆いただき、論理的且つ実践的な対応に役立つものとして、支援者の方からも非常に高い評価をいただき利用されております。
 長期高年齢化が進むなか、「地域の在り方」をどのように考えるかは、重要な視点であると考えます。それは、医療サービスや福祉サービスだけの視点ではないでしょう。支援の場ではときに、仕組みを作れば回復できると思ってしまい、仕組み作りに没頭し、そこに乗った人たちは回復できたとし、仕組に乗れなかった人は面倒見きれないと外してしまうことがあるように思えます。そうしたことは本人やご家族を落胆の闇に落としてしまいます。行政の枠組みに頼るだけではなく、制度の狭間にあるものを、民間の力を発揮し、関係機関と連携しながら創っていく姿勢も大切であると考えます。それぞれの問題に対して個別に解決を考えることだけではなく、この社会全体で横断的に考えることが重要であると思います。
 私たちの世代(親世代)は物の乏しい時代を経験したことから、経済を最優先課題として取り組み、そのお陰で物質的には豊かになり「幸福感」を満たしたような気持ちになりました。反面「親による子どもへの虐待」「解決しないいじめ」「過重労働」「地域の崩壊」「貧困の格差」など社会問題は山積みしています。そんな社会の息苦しさのなかで、生きる気力を失うほど消耗しつくし、社会から自分を撤退させ身を守るために「ひきこもること」を選択するのは生存の権利だと思います。しかし、その期間が長期に及ぶにつれ社会生活に復帰することが並大抵のことではないことも認識しています。
 「地域共生社会」という言葉のとおり、この息苦しい社会の一面が、「人々の幸せ」を考える社会に変えていくために、私たちの意識も変えていく必要があると思います。それは、足元にある自然や営みを大切にする社会であり、人と人が助け合い、人のぬくもりを感じ合える地域の在り方であると思います。
誰もが夢や希望を持ち、自由と平等が保障される社会を目指し、この街で、この国で生きててよかったと思える地域社会をつくる事に寄与できるよう、私たちも進んでまいりたいと考えています。
KHJ全国ひきこもり家族会連合会

◆伊藤正俊(いとう まさとし)さんのプロフィール

経歴
1991 年 山形県 米沢市で「登校拒否の子を持つ親の会」サークルあすなろを始める。
1995 年 鳥山敏子主催の「賢治の学校」を米沢で立ち上げる。(大人の学び)
1997 年 青少年育成国民会議 主催「大人が変われば子どもも変わる。」提言に応募 。
    採用されNHK朝の「おはよう日本」で取り上げられる。
1998 年 全国ボランティアフェスティバル山形大会で「不登校」分科会のコーディネーターを務める。
1998 年 不登校親の会山形県ネットワークを民間8 団体で立ち上げ、事務局長に就任。

団体歴
2002 年 NPO 法人全国ひきこもりKHJ親の会、に山形県から初めて参加 。
2003 年 米沢市内に一軒家を借り、体と心のセンター(から・ころセンター)を開設。
2006 年 山形放送主催 愛の事業団 「愛の鳩賞」を受賞。米沢ソロプチミストから表彰 。
2006 年 から・ころセンターを民間団体から特定非営利活動法人として活動を始める。
    代表理事に就任 。
2006 年 引きこもりの若者の「居場所」を開設する。「からん・ころん」の広場 。
2014 年 NPO 法人全国ひきこもりKHJ 親の会 理事に就任。
2008 年 山形県教育庁から「訪問支援員事業」の委託事業を受ける。
2010 年 山形県健康福祉課から「就労支援事業」の委託事業を受ける。
2014 年 山形県地域福祉課から 地域の絆つくり育成事業の委託事業を受ける。
    「キッチンから・ころ」レストラン事業(地産地消・家庭の味) 。
    高齢者向け「健康宅配弁当」(地産地消・家庭の味) 。
2015 年 就労継続支援B型事業所を開設。
2016 年 NPO 法人全国ひきこもりKHJ 親の会 代表理事(地域福祉担当)に就任。

現在に至る。

主な取組
① 悩み相談(面談)電話相談。家庭訪問。
② 若者の「居場所」開催。 月曜・水曜・金曜日午後から開催。
③ 家族会の開催(学習会、研修会、自助グループ)
④ 民生員・児童員の方々に講演。(保健所主催)
⑤ 保護司の方々に講演。
⑥ 山形県 生活困窮者 相談員研修の講師。
⑦ 就労継続支援B型事業所 管理運営 サービス管理責任者。



 



 
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