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『考えてみませんか 9条改憲』

2017年3月27日



久保田 貢さん(愛知県立大学教員)

 国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)に行った時のことです。JR駅から公園に向かおうとするバス停は長蛇の列。外国からの旅行客も多くいました。なぜこれほど観光客で賑わっているのか、にわかには理解できず、満員のバスに乗りました。
 到着してわかりました。4月末、ちょうどネモフィラの咲きほこる季節なのです。入口からかなりの距離を歩いて、丘に立ちました。美しい…多くの人が訪れるのにも合点がいきました。


国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)

ひたち海浜公園「歴史ギャラリー」

 かつて日本陸軍飛行場であったこの地は、戦後、アメリカ軍が接収し、アメリカ軍水戸対地射爆場として訓練がおこなわれていました。誤射事故が多く、事故で犠牲となった人もいます。住民の粘り強い返還運動で、1973年に返還。「平和の象徴として公園を整備したい」という住民の要望で一部が公園となりました。今は四季折々、さまざまな草花が咲いています。
 公園で働く人たちに、米軍射爆場であったことを示すものはないのか、と尋ねましたが、要領をえません。ようやく、案内係の一人が、「歴史ギャラリー」がある、と教えてくれて、そこに向かいました。当時の写真や返還までの経緯、不発弾などを展示しています。十分とはいえないまでも、この地の歴史やたたかいがわかる部屋です。しかし残念なのは、このギャラリーを訪れる人が少ないこと。美しい花々の公園ができるまでに、被害と返還闘争の苦難があったことを、どれだけの人が知っているのでしょう。
 同じことは、他の地でも感じました。現在も米軍の施設があるにもかかわらず、周辺住民もよく知らずにいた、という所も。東京の中心、青山霊園の隣にも大きな米軍専用施設があります。多くの人は、気付かぬままに素通りしているのではないでしょうか。
 新島(東京都新島村)には、「誓いの塔」があります。1966年ぐらいから、先の水戸射爆場を移設する計画があり、新島島民はこれに反対し、全村民が結集して反対するシンボルとして、「誓いの塔」を建てました。村の各戸から抗火石を一つずつ持ち寄り、費用も出し合い、完成させました。1968年10月15日の除幕式では、村民1700名が集まり、米軍射爆場絶対反対でたたかう誓いをしました。いま、この塔にはたくさんの男女の名前が刻まれています。観光客が「誓い」を別の意味(「愛の誓い」)でとらえて、書き込んだのでしょう。この塔を見た人に、茨城から伊豆諸島につながる基地反対闘争の歴史、新島島民の思いが、伝わっているとよいのですが…。
 基地や基地とのたたかいを明らかにしていかないと、平和主義の問題、沖縄の問題は理解できないのではないか…わたしが『考えてみませんか 9条改憲』(新日本出版社、2016年12月刊行)を書きながら、ずっと考えていたことです。

「誓いの塔」(東京都新島村)

 前著『知っていますか?日本の戦争』でお世話になった懇意の編集者から、次に依頼されたこの企画は、「9条2項原理主義の本をつくりませんか」という、いささか突拍子もない提案から始まったものでした。日本は、憲法第9条2項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」を堅持していく、それをわかりやすい入門書として書くことには賛成でしたので、この提案を引き受け、取り組み始めました。わたしの力点は、憲法前文とセットで平和主義を強調すべきであること、戦後の日本全国の基地反対闘争を再確認する必要があること、平和主義の思想的系譜と世界情勢との関係を明らかにすること、という三つでした。執筆しながら、北海道から沖縄まで、いくつかの米軍・自衛隊の基地・演習地や返還地、9条の碑などを訪れ、写真におさめ、本書で解説しました。国営ひたち海浜公園も新島「誓いの塔」もその一つです。
 執筆途中、沖縄でアメリカ元海兵隊員による悲惨な事件がありました。辺野古のみならず、高江や南西諸島での基地建設も緊迫してきました。この沖縄の基地問題(と本土の関係)もとりわけ重視しながら、また平和主義の解釈もわたしなりの見解も盛り込みながら、多くの人がわかりやすく学ぶことができるように、本書をつくりました。
 9条の会など、いくつかの学習会でテキストにしていると聞き、とても嬉しく思っています。この書を手がかりに、憲法第9条、平和主義について、深めていただければ幸いです。

◆久保田 貢(くぼた みつぐ)さんのプロフィール

東京都立大学卒業(史学専攻)
南山高等中学校男子部教諭を経て、現在、愛知県立大学教員(教育学)

【主な業績】
『考えてみませんか 9条改憲』(新日本出版社、2016)
『知っていますか?日本の戦争』(新日本出版社、2015)
『ジュニアのための貧困問題入門』(平和文化、2010)
「新自由主義イデオロギーの浸透する学習指導要領」(『前衛』2016年12月号)
「教育改革と教育学研究者の責任−大学改革と教員養成を中心に−」(日本教育学会『教育学研究』74(4)、2007 )
「新学習指導要領における『持続可能』概念についての研究」(唯物論研究協会『唯物論研究年誌』第15号、2010)
 ほか


<法学館憲法研究所事務局から>

久保田貢さんには、以前当サイトで「 ちゃんと知りたい!日本の戦争 」(2006年10月30日)で登場いただいています。


 



 
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