法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

事務局からのお知らせ

 

当研究所講演会で日本国憲法を多角的に検証

2006年6月1日

5月28日、法学館憲法研究所は講演会「日本国憲法を多角的に検証する」を開催しました。
講演会では、伊藤所長が挨拶し、主席客員研究員である浦部法穂・名古屋大学教授が講演しました。続いて、当研究所が出版した『日本国憲法の多角的検証 〜 憲法「改正」の動向をふまえて』に収録した論文の執筆者の方々にも発言していただきました。

■「公」って何? 〜憲法の「言葉」を吟味してみる(浦部教授の講演)

浦部教授の講演は、日本国憲法に示された「言葉」を深く吟味する重要性を説くものでした。憲法や法律の用語の多くは外国語を翻訳したものです。翻訳した時期には適当な日本語が存在していないものも多々ありました。いま普通に憲法や法律の言葉として理解しているものも、なぜその言葉があてはめられたのか、その言葉には本来どのような意味があるのかを考えてみるということでした。
「・・・国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、・・・最大の尊重を必要とする。」(憲法13条)
これは日本国憲法の人権規定の根幹をなす条文です。昨年自民党が公表した新憲法草案は、この中の「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に変えるものとなっています。
浦部教授は今日の憲法「改正」論議の焦点の一つである、このことをとりあげ、そもそも「公」という言葉とその意味を吟味されました。
多くの日本人は「公」という言葉を「私」という言葉と対比してとらえます。そして、「私」よりも「公」のほうが良いイメージでとらえられます。「公」=おおやけのためには人権が制限されてもやむをえないと考えられがちです。
ところで、「公」という言葉にはパブリック=「みんな」という意味で使われるだけでなく、「官」や政府、天皇制と結びつく意味で使われることもあります。その場合、政府の政策の実現のためには人権制限もやむを得ないと理解になってしまいます。
「公共の福祉」も「公益及び公の秩序」も抽象的な言葉であり、置き換えられたからといって別にどうってことはないと考えられがちです。しかし、そもそも「公」という言葉の意味を以上のように吟味した時、今日の憲法「改正」の意味が新たな角度から見えるようになります。
浦部教授のこうした問題提起は多くの参加者に、憲法とその「改正」について、より深く学び考えることの重要性を示すことになりました。


挨拶する伊藤真所長

講演する浦部教授

■私たちを取り巻く状況から憲法を深め、広げる

講演会では『日本国憲法の多角的検証 〜 憲法「改正」の動向をふまえて』収録論文執筆者の方々にも発言していただきました。
水島朝穂教授(早大。論文「この国の「憲法感覚」を診る」をご執筆)は、過日大阪地裁で出された「原爆症認定訴訟」判決が原爆被爆当事者の思いをふまえたものとなったことに触れながら、憲法の理念を社会に活かす「感覚」を身につける重要性などを語られました。
浦田一郎教授(一橋大。論文「国連憲章と日本国憲法 〜 武力行使への関わりを中心として」をご執筆)は、日本政府が憲法9条をどのように解釈してきたのかを歴史的具体的に検証しながら、国際情勢の変化などもふまえつつ、憲法9条の意義を理論的に解明し広げていく重要性などを語られました。
大久保史郎教授(立命館大。論文「人間の安全保障と日本国憲法」をご執筆)は、イラク戦争などのアメリカの動きに対する最近のヒスパニックの人たちや中南米の国々の反発などを紹介しながら、憲法の平和主義の考え方から日本政府のアメリカへの協調姿勢を危惧されました。
熊岡路矢さん(日本国際ボランティアセンター代表理事。論文「世界平和と国際協力NGO」をご執筆)は、世界各地の戦争被害者などに対するNGOの国際人道支援活動の経験を紹介しながら、戦地への軍隊の派遣はその活動に否定的な影響を及ぼすことなどを語られました。
山内敏弘教授(龍谷大。論文「国際社会における法の支配と民主主義の確立」をご執筆)は、武力紛争を予防するための国際条約とそれを活用して無防備都市宣言を追求する全国各地での運動を紹介しながら、日本国憲法の平和主義とその現実的意義を広げていく重要性などを語られました。


水島朝穂教授

浦田一郎教授


大久保史郎教授

熊岡路矢氏


山内敏弘教授

挨拶する西肇代表
講演会では最後に法学館憲法研究所の西肇代表が閉会挨拶を述べ、散会となりました。
今回の講演会は、憲法について多角的に、そしてより掘り下げた研究をすすめていく重要性、その成果を社会に広げる重要性が語られる場となりました。
参加者の皆さんの感想を、下記の通りいくつかご紹介します。

・現行司法試験受験生です。本日は憲法改正論議について、一人の一般人が何が出来るかを伺うために、愛知県から参りました。憲法の条文を読み直して、自分なりに考え、行動しようと思います。知性と行動が伴った方々のお話しを聞けた今日が、将来法律家になる私の転機となったと思います。

・どの先生方のお話しもすごくためになりました。

・戦後60年の日本をしっかり考えた上で、今後の日本、そして世界がどうしていくべきか考えることができました。憲法改正だけの問題ではないと強く感じました。

・今の日本の統治システムの在り方や、これからの憲法のことなど、重要な政治的決定は、ほぼ永田町と霞ヶ関で行なわれています。でもそのアリーナにいるアクターたちは、まるで憲法の本質をわかっていない。そこにいる人たちはどんどん国家主義者になっています。一般の方々にアピールするのも大事ですが、こうした活動や憲法の重要性を説くべきは、まず国会議員じゃないかと思います(・・・ムリなのかなぁ)。永田町は本当にヤバイ状態です。なんとか国会議員や役人に憲法のことをわからせる機会や方法はないですかね? 今後の活動に期待しています。

・「公」と「私」、特に自民党の新憲法草案に書かれている「公」の意味を知ることの重要性をひしひしと感じています。自民党案を更に読み解いていくつもりです。(浦部教授の講演について)

・法が解釈如何によるものである以上、「ことば」のもつ影響力は極めて強い。その点を論理的に再確認できた。(浦部教授の講演について)

 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]