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中学・高校での憲法教育について議論(龍谷大学にて)

2010年5月24日

  龍谷大学法情報研究会で中学・高校での憲法教育について議論する場が設けられました。以下、その報告です。
 当研究所はDVD「中高生のための映像教室『憲法を観る』」の製作に協力し、その普及をすすめていますが、中高生に憲法の考え方を広げていくために読者のみなさんからもご意見などをいただければと思います。
(法学館憲法研究所事務局)



 2010年5月13日、龍谷大学法情報研究会で中学・高校での憲法教育について議論する場が設けられました。研究会では、DVD「中高生のための映像教室『憲法を観る』」を観賞していただいた後、この教材の内容とその趣旨、中学・高校での憲法教育への期待などについて、要旨次のような報告をしました。

 「ほとんどの国民は、憲法を学ぶのは中学・高校までである。大学では、法学系学部や教員養成系学部の学生は憲法を学ぶが、他の学部の多くの学生は憲法を学ばずに卒業していく。中学・高校での憲法の教育は大変重要である。
 中学生・高校生の多くは憲法の三大原理や平和主義のことなどの知識を身につけている。しかし、憲法の勉強では条文などを暗記することはあっても、憲法の基本的な存在意義などを学び考える機会はあまりない。そこで、「人権」「権利」を主張してばかりいることはわがままだと、少なくない生徒たちが思っている。あるいは、少なくない生徒たちは“憲法は一番重要な法だから、みんなが守らなければならないルール”と間違って理解している。

 実際の中学「公民」の、ある教科書の記述に即して、中学・高校での憲法教育の現状の問題点を3点指摘したい。
 第一に、憲法の存在理由や役割についてである。教科書には、憲法は権力者が守らなければならないものだと書かれているが、一方で憲法には様々な解釈があるということが、9条を例に紹介されている。憲法にどのように書かれていようとその解釈は多様だとされたら、憲法が権力者を縛るものだという理解にはなりづらい。そもそも憲法を守らなければならないのは国民ではなく権力者なのだということ(=憲法の権力制限規範性、「立憲主義」)がどのように伝えられ、生徒たちはどのように理解しているのであろうか。
 第二に、権利・自由についてである。教科書には、「公共の福祉」のために国民の権利が制限される場合があるということが強調されている。憲法は自由の基礎法であり、「個人の尊重」の考え方がその価値の基本にあることが、生徒たちに正しく伝わっているのであろうか。
 第三に、刑事裁判の役割についてである。某教科書には「疑わしきは、被告人の利益に」という考え方が書かれているが、その趣旨についての説明がない。「たった一人でも社会や国の犠牲になってはならない」という憲法の考え方の真髄を理解する上で、被疑者・被告人の権利の意義についての理解は不可欠だと思われるが、この点は生徒たちにどのように伝わっているのだろうか。

 中学・高校での憲法教育にはこの他にも検討課題がある。教育の場で、自由や民主主義などの憲法価値が生徒たちに「強制」されることの是非とそのあり様について様々な議論があり、整理される必要があろう。生徒たちが「強制」されたと感じ、憲法の考え方が正しく伝わらない状況があるとすれば改善を期待したい。
 司法制度改革が進む中で、最近学校で「法教育」が展開されている。生徒たちがルールや法というものについて考える場として重要だと思うが、そのことで憲法教育の重要性が相対化されてはならない。憲法教育の充実の中で「法教育」の効果も上がるのではないか。
 憲法教育が平和主義の教育に偏重しているとの指摘もある。中学高校教員養成における憲法教育についても改善・充実が求められるのではないか。

 以上のような問題意識をふまえ、DVD「中高生のための映像教室『憲法を観る』」は中学・高校での社会科等の授業で生徒たちに観てもらうものとしてつくった。これは憲法についての多くの知識を身につけてもらうのではなく、次のようなことが生徒たちに伝わることを重視するものとした。
・憲法の基本的価値に「個人の尊重」の考え方があるということ。
・憲法は国民の人権を守るために権力者が守らなければならないものとして定められているということ。
・国民の人権を守るために憲法は活用できるものだということ、活用すべきものだということ。

 憲法の考え方については生徒たちの関心事や具体的な問題を通して伝えていきたい。経済や地理の教育などとの連携も大事だろう。とりわけ歴史教育の中で憲法の基本的な考え方を正しく伝えることは重要ではないか。
 中学・高校での憲法教育は、すでに多くの中学・高校教員が精力的に進めておられる。その教員の方々との連携を広げていきたい。」

法学館憲法研究所
事務室長  大川 仁


 

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