法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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「公権力による個人のプライバシー侵害にどう抗するか」
――公共訴訟研究会(3/24)

2012年4月2日


 法学館憲法研究所は、進行中の重要な公共訴訟において憲法の理念を実現するために、浦部法穂顧問など憲法研究者と当該訴訟の弁護団の方々が議論する公共訴訟研究会を開催しています。3月24日に開催した第5回研究会のテーマは、いわゆる「ムスリム違法捜査事件」でした。村井敏邦当研究所客員研究員(刑事法)、関連する裁判の弁護団、公安警察のあり方に関心を寄せる弁護士の方など多くの方々の参加も得て、活発な議論をしていただきました。

 この事件は、新聞報道で記憶しておられる方も多いと思われますが、2010年の10月に警視庁公安部外事第3課のものとみられる国内に居住する人を中心としたムスリム(イスラム教徒)に関する捜査資料114点がインターネット上に流出した事件です。114点は、ファイル交換ソフトのWinnyを通じて全世界に拡散しました。流出した資料には顔写真や氏名、電話番号等を含む詳細な個人特定情報、信仰、家族の情報や日常行動などのセンシティブ情報が大量に含まれています。さらに深刻なのは、イスラム教徒というだけで「テロリスト」容疑者として捜査対象になっていたことです。詳細は、弁護団の山本志都弁護士の報告「イスラム教をテロのインフラと決めつける公安警察」をご覧ください。

 当日は弁護団から、東京地裁に提起した国家賠償請求訴訟の概要の説明の後、憲法上の3つの権利侵害について問題提起がありました。
 第1は、ムスリムだけを対象とした、ムスリムであることを理由とする情報を網羅的に調査収集し、秘密裡に組織的・継続的に保持した行為が信教の自由を侵害するということです。第2は、極めてセンシティブな本件情報の収集、保存・管理及び漏洩がプライバシーの権利を侵害するという問題です。第3は、ムスリムであることのみを理由とする包括的で網羅的な捜査について、14条違反の問題とすることが適切かです。

 信教の自由の侵害については、信教の自由に対する圧迫、干渉の効果や信仰に関する情報を国にみだりに収集・保管されない自由について意見がかわされました。
 プライバシーの権利の侵害では、モスクに出入りすることなどに関する公道上の個々の監視情報であっても長期間継続的に収集され名寄せされて保存・管理されているという状況にいかに対応するかなどの議論がありました。
第3の14条違反の主張についても、アメリカの判例との違いも踏まえて独自に主張することについての適否について意見交換がありました。

特に9.11事件以後、安全、安心、テロ対策という名の下で、国家による個人の情報収集活動が活発になっています。2007年には、イラク戦争への自衛隊派遣に反対する活動をしていた市民の氏名などの情報を自衛隊の情報保全隊が集めていたことが発覚し、この事件について先日の3月26日、仙台地裁において人格権を侵害し違法であるという判決がありました。このような中でムスリム違法捜査事件の重要性と、私たち市民の1人ひとりが「安全」と「自由」の問題について真剣に向き合わなければならない時代になっていることを強く認識させられる研究会でした。(法学館憲法研究所事務局)

 以前の研究会の模様はこちら@AB




 

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