教員が集う 中高生のための映像教室 『憲法を観る』
 
 
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難民の一人ひとりの支援に携わって
2010年8月2日
石川えりさん(認定NPO法人 難民支援協会)
 

【憲法で当たり前に守られている権利が守られず、日本へ逃れてくる人がいる】
 「自分の信仰を守りたかったが、その宗教は政府からは禁止されていた。」
 「軍人が支配する政府で、民主的な選挙は行われていない。自由のない政府を変えるため、民主主義を実現するための新しい憲法を作っていたら、身に覚えのない罪で逮捕されてしまった。」
  「国の大多数とは違う民族で、違う宗教を信仰していた。そのためか、国籍法の改正により国籍を奪われてしまった。自分には戻る国がない。」
  これは、昔の話ではありません。日本ではないですが、今、現在世界で起きていることです。日本国憲法で保障されている人権の多くが守られず、命の危険すら脅かされている人たちが世界中でまだ数多くいます。そして、その中で少なからずの人たちが日本へ保護を求めてやってきています。その数は2009年で1388人・47ヶ国に上りました。隣国のアジアのみならず中近東、アフリカなど距離的にも遠い国からも、少なからずの人が日本へ助けを求めてやってきています。日本は難民条約に加入し、こういった他国での人権侵害から逃れてきた人に保護を提供する仕組みを持っていますが、昨年「難民」として認定を受けたのは30人。まだ数は多くないですが、難民に準ずる地位の保護を受けた501人と合わせて、531人が保護を受けています。

【日本で難民が直面する壁】
  東京・四ッ谷にある私たち難民支援協会の事務所にも日本へ逃れてきた人たちが多く訪れます。1999年に団体が立ち上がってからこれまでに40ヶ国・約2,500人が支援を求めて事務所へやってきました。私たちは日本に逃れてきた一人ひとりの人たちの訴えを聞き、日本で難民として保護が得られるよう支援をしています。具体的な支援は法律面での支援、生活面での支援となり、法律面では個々の難民認定手続きに寄り添い、認定が受けられるようにするための書面作成、手続き段階に応じたアドバイス、弁護士との協働も含まれます。また生活面では医療・職業・住居といった最低限のセーフティーネットが保障されるよう確保する支援となります。事務所には体調不良で倒れてしまった難民の人が乗っている救急車から電話があることもありますし、またその日に泊まることができる安宿の情報もストックしてあり、ホームレス状態にある難民の人が来てもその日のうちに宿を確保しています。

難民アシスタント養成講座の様子

  支援の中で一番大変なのは、難民として認定を受けるまでの待っている間の支援です。認定を受けるまでは在留資格も安定せず、生活保護は準用されず、国民健康保険への加入が認められないが、就労が許可されないという人たちも多くいます。外務省が実施している生活支援金はありますが、額も受給者も限定的であるため、受給から漏れてしまう人は一切のセーフティーネットがない状態となり、非常に困窮してしまいます。民間で支え続けるには限界もあるため、難民の結果を待っている人たちへの最低限の生活保障は制度的な解決が切望されています。
  例えば、事務所には難民の結果を待つ家族で子どもに満足な食事を与えることも、生活を維持することもできない状況に陥った人、あるいは単身者で家賃が払えなくなり今まで住んでいたアパートを出なくてはならなくなった人等が相談に来ています。言葉も通じず、日本に関する知識もなく、全くの頼れる人もいない中で暮らしている人も多く、その中で生活していくことは簡単なことではありあません。
  外国人である難民の人たちは残念ながら、日本国憲法で保障されている権利が必ずしも外国人の人たちも平等に受けられるわけではありません。しかし、一人ひとりのかけがえのない人権を守る、命の危険がある出身国には引き渡さないということは、ここ日本でこそできる活動です。一人ひとりの命・安全を守っていく、その活動は日本国憲法の精神の実現でもあるのではないでしょうか。

 
【石川えり(いしかわえり)さんのプロフィール】

東京都出身。上智大学卒業後、企業勤務を経て2001年より難民支援協会に職員となり、主に調査・政策提言の分野で国内外にて活動を行ってきた。難民問題にはルワンダにおける内戦等を機に関心を深め、同協会には設立前よりボランティアとして関わった。2008年1月より現職。
2009年11月より半年間の産休・育休を経て2010年5月より復帰。
共著として、『支援者のための難民保護講座』(現代人文社、2006年10月)、『外国人法とローヤリング』(学陽書房、2005年4月)ほか多数。