教員が集う 中高生のための映像教室 『憲法を観る』
 
 
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憲法教育は大事だけど難しい
2011年1月31日
坂田洋介さん(弁護士)
 

1、私は、東京弁護士会の憲法問題対策センターという委員会に所属しています。委員会内において弁護士の諸先輩方が高尚な議論をしている横で、私は「市民、高校生、中学生に憲法を教え伝える」部会でのみ力を注いできました。
九条の会といえば一般的に、その参加者の平均年齢はかなり高めです。しかし、本当に憲法のことを分かって欲しいのは、今後の社会を担う若者です。
しかも、昨年5月に国民投票法が施行され、憲法改正の手続が整っている以上、この「憲法を教え伝えること」は急務です。しかし、これは予想以上に大変な作業です。

2、この部会では、これまで5校(いずれも中学校)で憲法出張講座を行いました。
  これまでこの講座では、(1)表現の自由とプライバシー権等(石に泳ぐ魚事件)、(2)表現の自由に関する取材・報道の自由と秘密(西山記者事件)、(3)法の支配、人格権(ハンセン病患者隔離政策事件)を扱ってきました。
  この講座で子どもたちに伝えたかったことは、「人権の大切さ」、「法の支配(憲法は国民ではなく国家権力を縛るものであること)」です。
しかし、これがなかなか難しい。子どもの反応はかなりシビアです。子どもは、分かる内容、興味が持てる内容であれば反応は良く、素直で鋭い反応をします。前記のAの事件は、沖縄返還における日米間の密約を暴露した記者が刑事処分を受けた事件ですが、この密約を外交上の秘密とするのはおかしい、国民に公開し、議論することが当然という意見が子どもの多数でした。
他方、一度でも難しい、聞いても分からないと思ってしまうと、聞いて理解しようという気持ちがなくなり、反応が悪くなります。この同じAの事件を別の学校でも再度取り上げましたが、いろいろと内容を補充した結果、分かりにくかったらしく、子どもの反応はすこぶる悪くなりました。
もっとも、程度の差はあれ、子どもたちに「人権の大事さ」を伝えることはできたと思います。

3、しかし、「法の支配」をどれだけ理解してもらえたかは疑問でいます。というのも、「憲法を守らなければならないのは国民ではなく、国です。憲法は、国民が国に守らせるために作ったルールです」、「あなたは国に対して、憲法を護りなさいという権利があります」と言っても、狐につままれたような反応です。社会科の先生も意外と知らなかったりします。
  この法の支配は、今後の憲法改正問題を考えるにあたっての基本であるため、どうしても理解してもらいたい原則です。
  しかし、子どもにとってはそれだけでは抽象的すぎるため、なかなか理解が及ばないかもしれません。
  そこで、前記(3)のハンセン病患者隔離政策事件という具体的事案を扱いました。この事件では、国が必要性がないことを知っていながら、ハンセン病患者を隔離し続けたことが人格権(幸福追求権、憲法13条)を侵害したとして国家賠償を認める判決がでました。これは、国が法律に違反したのではなく、憲法に違反したという内容なので、これを題材に法の支配の内容及びその必要性を説明しました。

4、この憲法出前講座は微々たる活動ですが、決して無駄でないと信じています。知り合いに学校の先生がいましたら、この講座のことを伝えてください。私までご連絡いただければ、直ぐに対応します。

東京北法律事務所 114-0022 東京都北区王子本町1−18−1 北法ビル
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弁護士 坂田洋介

※本稿は、東京北法律所発行の「東京北法律ニュース2011年第30号新春号」に掲載された原稿を同法律事務所のご了解の下、補正し転載したものです。

 
【坂田洋介(さかたようすけ)さんのプロフィール】
2000年  東北大学卒業
2000年  司法試験合格
2002年  弁護士登録
2002年〜 原爆症認定集団訴訟弁護団
2004年〜 日の丸・君が代強制事件弁護団
2007年〜 東京弁護士会憲法問題対策センター