教員が集う 中高生のための映像教室 『憲法を観る』
 
 
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憲法教育と生活実践
2011年3月21日
脇田吉隆さん(神戸学院大学総合リハビリテーション学部専任講師)
 

  私は現在、大学で「憲法」「法学」を学生に教えている。そこでは専門的に「憲法」を学ぶ法学部生ではない学生を対象にした「憲法教育」を行っている。今回その授業計画と教科書の紹介を行うことによって、「憲法教育」の新しい視点を伝えたいと思う。
  まず、学生には第1回目の講義において「みんなでルールを決める」ので必ず「シラバス(授業計画)」を読んで出席することを伝えておく。講義のルール作りにその構成員である学生が参加していることを意識づけ、みんなで「憲法」を学んでいることを確認する。
  「シラバス(授業計画)」の「授業の概要」には、『私たちは一人一人の人間として社会で毎日の生活をしている。その中には法律と無縁と思われるものもあるが、実は法律に関係することは意外と多い。私たちは国家や社会の中で生活しているのであるから、その構成員として一定のルールを定めて生活している。日常生活におこる社会問題を社会現象として捉え、その法律・憲法問題を法・憲法現象として捉えて、具体的な社会現象を法学的・憲法学的に解決することが求められる。それによって憲法を学ぶ対象と方法が明らかになる。 まず憲法学をどのような方法で学ぶかを理解し、次に日常生活と法の関わりの中で、憲法とは何か、その基本原理は何かを学び、日常生活に起こる具体的な憲法現象を挙げて法学的・憲法学的に解決する方法を学ぶ。さらに、日本国憲法の基本原理、人権問題、平和主義、統治機構についての基本的理解と問題解決方法を学ぶことにする。』と書いてある。「到達目標」としては、『この授業では一人一人の個人が持っている「平和な社会で自由で豊かで幸せに暮らしたい」という要望を憲法学的に実現すること。』と書いてある。

  教科書として、播磨信義・上脇博之・木下智史・脇田吉隆・渡辺洋編著『新・どうなっている!?日本国憲法』[第2版](法律文化社)を使用している。この本は、憲法が置かれた歴史的・社会的状況に照らして学ぶというアプローチを持った「一風変わった」特徴をもっており、「これまでの憲法の学びかたは、憲法の条文や重要事項の暗記に重点が置かれていたのではないだろうか」と指摘し、「暗記中心の教育は、単につまらないだけでなく、憲法の理解という点でも重大な問題を抱えている。これまでの教育がおきざりにしてきた、一つひとつの条文の背後にある歴史的事実、社会的現実について、できるだけ具体的資料に基づいて解説している」と、さらに「日本国憲法の理念を生かすために長く困難な裁判や運動に取り組んだ人々の姿をおさめている」と「はしがき」に記されている。
  毎回の講義では「みんなで考えよう」としてレポート課題を出す。たとえば第1回目であれば、「これまでの学校教育とこの科目の講義の進め方の違いについて」について書いてもらう。学生のレポートには、「授業の進め方を決めるのは学校の先生の仕事だと思っていた。自分たちはそれに従い、守らなければならない。この授業では学生の意見を聴いてくれて取り入れてくれる。これまでの学校の授業とは違う。」また「試験はマークシート方式ですか。論述式ですか。暗記していれば合格点が取れますか。」という質問には「みんなが書いてくれているレポートが評価され、定期試験では、その『不断の努力』(憲法第12条)によって、単位が取得することができる」と答えている。毎回の講義での学生とのコミュニケーションによって、学生と到達目標を確認することに努めている。講義の受講生がたとえ10人でも200人以上であっても、15回の講義で全員に「みんなで考えよう」のレポート課題を書いてもらっている。定期試験前にはそれに評価点をつけて返却している。そのことによって学生は自分の評価点を確認することができ、定期試験の取り組みにも役立つと考えている。
  私の「憲法教育」としての大学の講義の一端を紹介した。その発展という意味で、新しい視点として「憲法(学)の生活実践」を紹介する。
  日常生活に起こる具体的な憲法現象(問題)を憲法学的に解決するためには、教科書の「はしがき」にあるように、『これまで知らず知らずのうちに受け入れていた知識や「常識」をいったんすべて疑い、事実に照らして検証し、自分の頭で考える。自己の考えを確立する。納得できない点は受け入れない。納得できたとき受け入れる。』という憲法教育の方法を確立し、教育実践しなければならない。さらに、私は日本国憲法の普遍的理念を私たちの日常生活に生かしていく『不断の努力』(憲法第12条)によって実践しなければならないと考えている。私はそれを「憲法(学)の生活実践」と呼んでいる。

 
【脇田吉隆(わきた よしたか)さんのプロフィール】
1953年8月生まれ。神戸学院大学法学部、大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学、神戸学院大学等の非常勤講師を経て、現在、神戸学院大学総合リハビリテーション学部専任講師。