教員が集う 中高生のための映像教室 『憲法を観る』
 
 
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『けんぽう』のおはなし
2011年5月9日
武田美穂さん(絵本作家)
 

―――武田さんはこのたび、井上ひさしさん原案の絵本『「けんぽう」のおはなし』の絵を描かれました。子どもたちに憲法のことをどのように伝えたらよいか、いろいろと考えて描かれたのではないでしょうか。
(武田さん)
  『「けんぽう」のおはなし』のテキストは、井上ひさしさんが実際に小学生向けにされた講演を、講談社の編集部でリライト&構成したものです。井上さんを敬愛する編集者の方々が、それは熱心に取り組まれました。依頼を受けて、私も講演のDVDをお借りして繰り返し観ながら、この素晴らしい井上さんのスピリットを伝えるには自分は何をすればいいのか?と考えました。まずは、「この本、難しい内容じゃないんだよ」と、発信すること、、、私は決して上手な絵描きじゃありませんが、ボクでも描けそう!という親近感をこどもに抱かせるにはうってつけです。そこだけは自信がありますので (笑) 。「面白そう!」と手にとってもらえれば、しめたもの。あとは、楽しんで読んでもらえるよう、編集者となんども打ち合わせして、キャラクターに素朴な疑問や意見を言わせたり、テキストにフキダシで合の手を入れてみたり。子どもの目線を意識しました。自然に「けんぽう」に親しんでほしいと思った。井上さんの講演も、そんなふうだったからです。
  多くの人から子どもに見せたいという声をいただき、嬉しく思っています。

―――武田さんは子どもたち、小学生たちと交流する機会も多いようですが、小学生たちの憲法についての理解をどのようにとらえていますか。
(武田さん)
  井上ひさしさんが強調しているように、「憲法は国が守らなければならないきまり」なのですが、その意味がなんとなくわかるのは小学校の5・6年生になってからではないでしょうか。小学校の低学年では、きまりの必要性がわかっても、国というものがなかなかイメージできず、「憲法は国が守らなければならないきまり」ということを理解してもらうことは簡単ではないと思います。
  そこで、小学生には、まずは人権ということを理解してもらいたいと思います。誰もが人として尊重されるということ、人と意見が違ってもよいということ、少数の意見であってもその人の身になって考えてみること、そして話し合ってみること、社会は人と人のつながりによって成り立っていること、お互いを尊重し合うためにルール=きまりをつくり守るということ、等々を小学生にはまずは理解してもらいたいです。そのためには、できるだけ身近なこと、友達とのことなどを考えてもらい、お互いに相手の身になって考えてみることの大切さを感じてもらうことが大事ではないでしょうか。
  こうして小学生たちが人権感覚を培っていき、そして中学生くらいからは、人々の人権を守るために憲法が存在するということ、憲法は国が守らなければならないきまりであり、したがって国民は人権を守るために憲法を活用できるということ、などが理解できるようになって欲しいと思います。
  私はいろいろな小学校から「出張先生(遊びの先生?)」をして欲しいと呼ばれ、そこで子どもたちと、もの作りやさまざまな交流をする機会があります。その時に感じることとして、子どもたちは本当に純粋で、たとえばハンディキャップを持っている友達にはみんながひじょうにナチュラルにさりげなくサポートするのです。子どもたちには相手の立場に立って考え、お互いに助け合う気持ちがあるのです。その感性をそのまま伸ばしてほしい。そのしなやかさをもって人権ということについての理解を深めてもらいたいです。
  逆に私どもの問題として、子どもたちに人権の重要性を「押し付けない」ように留意する必要があると思います。子どもたちは押し付けられると嫌になってしまうことがあるからです。できるだけ、子どもたち同士がディスカッションして理解が深まっていくようにサポートしたいですよね

―――武田さんには「中高生のための映像教室『憲法を観る』」をご覧いただきました。感想をお聞かせいただけませんか。
(武田さん)
  井上ひさしさんが言っていたことと実によく似た説明や問いかけ、フレーズがいっぱいあってびっくりしました。法律は国民が守らなければならないきまりですが、憲法は国民の人権を守るために国が守らなければならないきまり、だから憲法というものは国民の側にあるもので、国民が人権を守るために使えるツール、等々井上さんも強調していたことですが、そのことがこの映像教材の全体に貫かれていますね!
  なによりもいいところは、憲法のことを子どもたちに伝えていきたいという強い決意を感じたのですが、しかし決して結論を押し付けるのではなく、生徒たちに問題提起し、ディスカッションする素材を与える、という構成になっているところです。ミニコントのように高校生3人組の憲法についてのやりとりがはさまれていたり、お姉さんのユーモラスな問いかけなどが出てきたりして、生徒さんたちの目線に合ったものになっているところ
も、いいですね!

―――ありがとうございます。
  最後に、中学校や高校などでの憲法の教育に対する期待の声をお聞かせください。
(武田さん)
  いま学校の先生方はいろいろなご苦労をなさっていると思います。わたしたちの時代は、子どもたちは先生を尊敬していましたし、親もご苦労に敬意を払っていた気がします。それがだいぶ変わってきているのではないでしょうか。先生方が子どもたちを成長させていくことに喜びと誇りを感じる機会が減り、トラブルやプレッシャーをかかえて、職員室によっては息苦しい雰囲気もあるようです。
  でも、いろいろと大変だと思いますけれど、とても重要で、とてもとても素晴らしいご職業です。ご自分を磨かれて、誇りと使命感を持って頑張ってください!! 井上ひさしさんの『「けんぽう」のおはなし』、「中高生のための映像教室『憲法を観る』」、そして学校の先生方の憲法教育がうまくつながって子どもたちの理解が広がることを願います。

 
【武田美穂(たけだ みほ)さんのプロフィール】
イラストレーター、絵本作家。作品に『となりのせきのますだくん』(絵本にっぽん賞、講談社出版文化賞受賞)にはじまる「ますだくん」シリーズ、『ふしぎのおうちはドキドキなのだ』(絵本にっぽん賞)、『すみっこのおばけ』(日本絵本賞読者賞、けんぶち絵本の里大賞)、「おかあさん、げんきですか。」(後藤隆二・文、日本絵本賞大賞、読者賞)、「モモちゃんえほん」シリーズ(松谷みよ子・文)、「ざわざわ森のがんこちゃん」シリーズ(末吉暁子・文)などがある。