教員が集う 中高生のための映像教室 『憲法を観る』
 
 
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AKB48の総選挙を題材に憲法の授業を考えてみたら
〜一票の持つ価値を子どもたちと一緒に考える〜
2011年7月11日
春田久美子さん(弁護士)
 

 東京・武道館でクライマックスを迎えたアイドルグループ・AKB48の総選挙は日本のみならず韓国、マレーシア、シンガポールなどアジア中の若者が注目していたそうです。
  我が家の中学生の息子も、いそいそとCDを購入しているようでしたが、買ったのは1枚だけでした。聞けば、CD1枚につきファン投票の“選挙権1票”が与えられるらしいのですが、CDは何枚でも購入できるので、まさに、投票券(権)はCDの数だけ、何枚でもゲットできる仕組みだ、というのです。ですから熱狂的なファンになると自分の支持するアイドルを一位に推し上げるために、一人で数百枚ものCDを購入したとか、投票券(権)百数十枚がネットでまとめて十数万円の値段が付いてオークションに出されているなどの情報が飛び交ったりして、挙げ句の果ては偽造の投票券(権)も現れたとか現れなかったとか・・・。とにかく熱気ムンムンのお祭りムードはヒートアップして、社会現象といってもよいほどの興奮ぶりでした。
  確かに、よく考えられた仕組みです。プロ野球のオールスター以上に、純粋にファン投票のみで自分の立ち位置(ポジション)が変わり、センターに立てるかどうか、チームから外されてしまうかどうかが決まっていく・・・。投票されるアイドルの側はもちろん、投票するファンの子どもたちにとっても、リアルに自分の投じた票が結果となって、目に見える形で現れるのですから、ドキドキ・ワクワクするのも無理はありません。
  それでも私は、AKB48自体は可愛くて好きなので、このブームを“活かして”、逆に、子どもたちが、自分の頭で考える法教育の授業を組み立てられないか、考えてみました。例えば、こんな具合です。
『先ずは、選挙権について、憲法では、「一人一票の原則」が定められていることを思い出させます。
  次にその原則が確立されるまでの歴史的経緯に目を転じてみます。ときは明治時代。世襲の貴族院と国民から選挙で選ばれる衆議院。但し、選挙権があるのは年齢25歳以上で、お金持ちの男性だけ。女性には選挙権などなかった時代。その後、大正の時代に、男性に限り、ようやく25歳以上の全員に選挙権が認められたのを経て、完全な普通選挙が実現したのは太平洋戦争終了後の1946年、昭和の時代です。今度は、そもそも、選挙権は、一人一人の国民にとってどういう意味があるのかを考えてみます。大人でもなかなか投票に行かなくなっているので、子どもたちにはピンとこないかもしれませんが・・・。そして、21世紀の今。「一人一票」は現代社会において、新たな憲法問題を生んでいる。住む場所によって一票の持つ重みに格差が生じている。都会と地方で、その重み・価値に差が生じている。だから「一人一票」が原則とされていても、その実質は形骸化し、本当は、“一票”さえも保障されていない(例えば“0.2票”)状態が、恒常化している。何人もの大人(弁護士など)が裁判で闘って、平成23年3月、最高裁判所はとうとう違憲判決を出した。長い道のりであった。そして、裁判所は、長い間、是正措置を講じてこなかった立法府に注文もつけた(統治機構の問題にもなる)・・・・・』、こんな流れです。そして、授業のまとめの部分は、こうです。『そして、再びAKB48の総選挙。もしも「一人一票」の原則でこの選挙を行っていたら君は誰に投票したかな?一票しかないからこそ、その一票を誰に投じるのか、大切に思えてくるし、じっくり考えるかもしれないよね。たった一票しかないけれど、お金で買うことも出来ない自分だけの一票。その一票の持つ重みに違いがあったとしたら・・・?』 
  法教育を普及させるために、47都道府県にAKB48のメンバー一人ずつを広報大使に任命したらどうか、なんていうことも時々真剣に考える一弁護士が、かなり真面目に考えた、一つの授業のアイディアです。一緒に授業作りをやっていただける中学・高校の先生と出会えたら・・・の祈りを込めて。

 
【春田久美子(はるた くみこ)さんのプロフィール】
 平成元年       九州大学法学部卒業
 平成元年       住宅金融公庫に就職
 平成4年       司法試験受験に専念するため住宅金融公庫退職
 平成5年       司法試験合格
 平成8年〜      裁判官任官
 平成18年〜     弁護士登録(福岡県弁護士会・九弁連法教育に関する連絡協議会,法教育委員会等所属)
 平成23年3月    法教育推進協議会募集の法教育懸賞論文にて優秀賞受賞
              (論文は法務省HPに掲載)。
NHK『ぐるっと!8県九州沖縄』の法律問題コーナー、RKB毎日放送『豆ごはん』(ヒューマンバラエティ)等TV(テレビ)出演中。サガテレビの子ども向けサイト「さがっこレッスンナビ」に『くみこ先生の「ほう!」の授業がやって来た!』という法教育のコラムを現在執筆中。