教員が集う 中高生のための映像教室 『憲法を観る』
 
 
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長崎県弁護士会での取組み
2011年11月14日
森永正之さん(弁護士)
 

 私は、長崎県弁護士会の憲法委員会に所属しております。
  憲法教育の関係では、法教育委員会と合同で、一昨年度から、中学校に出かける出前講義に取り組んできました。
  出前講義の形式としては、まず、憲法に関する導入講義を行い、その後、各クラスに分かれ、事例検討を行ってもらいました。事例は、いわゆるエホバの証人輸血拒否事件を題材に、患者の側と医師の側に分かれて意見を出し合ってもらいました。双方の立場から活発な意見が交わされました。また、別の中学校では、消費税の税率について、一律であるべきか、所得に応じて代えるべきか等の問題を検討してもらいました。意見が一方に傾く中、反対意見を述べることはなかなか心理的に難しいところがありますが、挙手をして一人だけ反対意見を述べた生徒もおり、感心しました。ただ、いずれの中学校も弁護士と中学校の個人的なツテを頼りに行っておりますので、弁護士会と教育会で協力関係に立っているというところまではいっておりません。
  今年度は、8月に、法教育委員会が単独で、中学生を対象として公募したジュニア・ロースクールを開催しました。ジュニア・ロースクールでは、法教育についての導入講義を行ったうえで、長崎市内で花火の使用を禁止しようとするルールが制定されようとしているという設定で、賛成派・反対派に分かれて、意見を出し合い、最終的に互いが納得できるルール作りを行うというロールプレイを行いました。活発な意見が交わされたとのことでした。

憲法教育において取り組んでいただきたいテーマ
  ところで、中学生に対する憲法教育ではありませんが、長崎県弁護士会の憲法委員会では、大分県弁護士会の協力を得て、憲法の討論劇を行ったことがあります。テーマは憲法改正、憲法9条を中心とするものでした。
  当時、憲法改正という言葉が毎日のようにマスコミなどを賑わしていました。
  憲法改正といえば、一般に憲法9条の改正の是非が問題となりますが、私がそれ以上に気なったのは、憲法は国民をも拘束するものであるという考えや、国民に対し憲法尊重擁護義務を課そうという考え方等が表明されたことです。
  日本人は、どこか「お上の言うとおり。」と思ってしまうところがありますから、偉い人が、そのように言えば、「まぁ、そのようなものか。」と考えてしまいます。そうすると、安易に「改正してしまいましょう。」ということにもなりかねません。
  しかし、もともと憲法は、国家権力が濫用されやすいことから、国家権力を拘束するために生まれてきたものです。そして、憲法を支える理念の立憲主義は、法の支配の原理と密接に関わっていますが、法の支配は、専断的な国家権力の支配(人の支配)を排斥し、権力を法で拘束することによって、国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理です。この憲法の特質は、国家権力を拘束することにあり、そのため日本国憲法も国家権力を行使する者に対して憲法尊重擁護義務(99条)を課しています。
  このような憲法の生い立ちや特質を学んでいれば、憲法は国民をも拘束するものであるという考えや、国民に対し憲法尊重擁護義務を課そうという考え方が出てくるはずがありません。国家権力を行使する者の、今後もずっと権力の座にいて、自らが都合がよいようにやりたい、そのような思いが反映されています。
  ところが、この憲法とはなんぞやということは、人が生まれ成長する過程で自然に身につくものではありません。憲法は人類が長年をかけて得た英知であり、それはまず、学校で学ばなくては、契機すら与えられません。その意味で、憲法を知る契機を与えることができる立場にある、教育、特に義務教育に携わる中学校の先生方の役割は重要です。
  憲法とはなんぞやというテーマは、憲法教育において、是非取り組んでいただきたいテーマの一つです。

 
【森永正之(もりなが まさゆき)さんのプロフィール】

2002年弁護士登録
長崎県弁護士会憲法委員会所属