長崎への原爆で夫を亡くした老女には兄がいた。兄は戦前にアメリカ・ハワイにわたり、事業を成功させていた。兄の息子、つまり老女の甥が長崎を訪れ、老女の夫が原爆によって亡くなったことを知る・・・。
話はこのように展開していきます。
いまアメリカ人の多くは、広島・長崎への原爆投下は戦争の終結のためにやむをえなかったと考えているようです。もちろん当時の日本が朝鮮や中国、アジアを侵略していったことを、まずもって反省することが大事ですが、しかし一般市民を大量かつ無差別に殺し、深刻な放射能被害を広げた原爆投下もまた批判されるべきでしょう。それは理性的に生きようとする多くのアメリカ人も同意することではないでしょうか。この映画に登場した老女の甥のように。
この映画はアメリカの人々とも戦争について率直に語り合う重要性とその観点を提供してくれているように思います。
ハワイの富豪から"おこぼれ"を得ようとすることに腐心する大人たちと違って、子どもたちが戦争と原爆の歴史を風化させてはならないと考えるようになっていく、その対比なども観る者に強烈でした。
【映画情報】
製作年:1991年
上映時間:98分
監督:黒澤明
出演:村瀬幸子、井川比佐志、茅島成美、リチャード・ギア、ほか
<法学館憲法研究所事務局から>
9月15日(土)、「平和と憲法 − "武力なき平和"のリアリティ」と題して水島朝穂氏(早稲田大教授)が講演し、当研究所の浦部法穂顧問(=神戸大学名誉教授)と対談します。こちら。原爆の投下と日本の敗戦を経て制定された日本国憲法。この憲法の最大の特長である平和主義の考え方についての第一人者の話を多くの方々に聴いていただきたく、ご案内します。関連情報。
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