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映画『放射線を浴びたX年後2』 


花崎哲さん(「憲法を考える映画の会」)
                                                           

 この映画の前作『放射線を浴びたX年後』では、室戸の漁師たちを訪ねて、彼らと昭和30年代の原水爆実験の被害との関わりを解き明かしていくのは地元の高校教師と高校生そして南海放送のテレビスタッフだった。その続編であるこの作品では、前作を見た人たちが、漁師だった父親の早すぎた死を疑って、当時の同僚たちを訪ね、真実を明らかにしていくという展開をしている。社会的な問題をとらえて真実を明らかにしていこうとするドキュメンタリー映画では、こうした観客自体が次の映画の作り手になったり、その主役になっていくということが、ままある。

 この作品の主役、川口美佐さん(59歳)は、12歳の時に父と死に別れた。36歳の若さで死んだ父は「酒の飲み過ぎで早死にした」と言われてきた。が、川口さんはこの映画を見て、マグロ船に乗っていた父も同じように原水爆実験の犠牲だったのではではないかと考え始める。そして父を知る人、漁師仲間を訪ね、その真相を明らかにしていく。
 この映画から考えさせられるものはたくさんあるが、やはり見るものの気持ちに突き刺さってくるのは、「隠されていたものの大きさ」と「なぜそれが隠され続けてきたか」である。
 マグロを追って大海に出て行った屈強の漁師たち。彼ら南太平洋の漁場で原水爆実験を見た、死の灰をかぶったということをほとんど話さなかった。その事実を語ろうとしないまま、少なくない人数の人が癌で命を失っている。父親の航海記録を記した手帳が見つかる。口を閉ざした理由の「魚が売れなくなる」は、フクシマの原発事故の時の風評被害問題を思い起こさせる。放射能被害を浴びたことが子どもなど家族に及ぶと考えた漁師たちの船員手帳からその時の航海記録のページが破られている。何より国やアメリカ自体がそうした被害を隠蔽しようとしていた。
 福島原発事故の時にも明らかになった企業や国の隠蔽体質、安保法制の審議でも審議記録を残していない法制局、秘密保護法など軍事優先させようとする政治の中で隠蔽主義はますます強まっていく。
 娘が若くして死んだ父親の気持ちを推しはかっている。「無念」の一言だったろう。死の真実を明らかにすることは「誇りをもって死んでいきたい」という彼らの気持ちに答えること。核実験の火の玉を見た語った老漁夫は最後に、ひとり息子を41歳で癌で失ったことを話した。彼は「自分の被爆のせいではなかったか」といまだに自分を責めている。「いちばん大切なものをとっていかれた」と。
 「過去を記憶できないものは、同じ間違いを繰り返す」(ジョージ・サンタナヤ)、過去の真実を隠してはならない。困難な、そしてつらい思いを重ねながら、隠されているものを明らかにしていく映画の作り手に敬意を表したい。真実を明らかにしていく映像の役割を強く感じる。

上映案内は下記ホームページをご覧ください。
公式ホームページ

この映画は「自分たちで上映できる映画」です。
【問い合わせ】 ウッキー・プロダクション
〒102-0074東京都千代田区九段南4-3-3 シルキーハイツ九段南2号館606号室
TEL:03-5213-4933 FAX:03-5213-4934 Mail:yus@solid.ocn.ne.jp

【映画情報】

監督・撮影:伊東英朗
企画:大西康司 
構成:日笠昭彦
プロデューサー:小倉健嗣 
チーフプロデューサー:兵頭英夫
製作著作:南海放送
公開:2015年 上映時間85分
製作国:日本


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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