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映画『広河隆一 人間の戦場』


花崎哲さん(「憲法を考える映画の会」)
                                                           

 フォトジャーナリストの広河隆一さんは、パレスチナ、チェルノブイリ、福島を取材しながら、多くのジャーナリストが写真を発信する機会であるDAYS JAPAN誌をつくり、その編集長を勤めてきた。さらに、取材した先で困難な状況にある子どもたちを引き取ったり、その傷ついた心身を安らげる保養施設をつくり、子どもたちを招くことにも力を尽くしている。

 広河さんが「カメラマンである前にジャーナリストとして、ジャーナリストである前に人間として」行動するきっかけになったことに1976年パレスチナの難民キャンプで出会った男の言葉がある。イスラエル兵に子どもを殺されたその男が、広河さんに「何でいまごろ来たんだ」と涙を流して叫んだ。
「ああいう時に外国人のジャーナリストがいたら息子が殺されるのを止められた。おまえがいてくれたら息子は死なずにすんだかもしれない。」
 その時からジャーナリストは事件が起こった時にそこに行って撮影するのではなく、そうした事件を起こさせない抑止力になることを広河さんは胸に刻む。

 1982年、レバノンの難民キャンプでレバノン右派民兵による虐殺が起こされた。イスラエル兵がキャンプを包囲する中でそれは起きた。虐殺が起きたとき、ジャーナリストを難民キャンプの中に入らせなかった。キャンプの中からは一方の側からの銃声しか聞こえない恐怖。「ジャーナリストがいたらそんなことにはならなかった」の声が耳に響く。「行かなくてはならない」と頭では思っても、体が「行きたくない、行くな」と反応し、体が折れ曲がるほど苦しい。おなかは痛くなる、脂汗は出る、体は「行かなくて済む」理由を探している。しかし行かない理由は見つからない。
 キャンプ内に入ったとき、行くのを遮る兵士の銃の安全装置を外す音が突き刺さる。とらえたものは路上の子どもの死体。年寄りの死体。「死体にしかシャッターを切れなかったことほど、ジャーナリストにとって悔しいことはない。ジャーナリストが徒党を組んで難民キャンプに入っていれば何か変わっていたのではないか。」

 イラクでの戦争の惨禍の中にあって、またチェルノブイリや福島で放射能に心身を痛めつけられた子どもたちが少しでも安らげる場、保養施設に招くことに力を尽くしている。
 広河さんのそうした行動は「ジャーナリストの役割を超えている」とも言われる。「ジャーナリストは見た者をありのまま伝える。介入するべきではない」と。
しかし広河さんは「ジャーナリストである前に自分は何かと問われれば人間です」と話す。
 「日本国民として」とか、A社やB社、C社として考えると、「国の利益のために」とか「会社の利益のために」ということになってしまう。まずそれ以前に人間としてどう見え、どう感じるか。世界中の人間が持っている生きる権利、幸せに生きる権利、健康に生きる権利、人間の尊厳、それらを守るために憲法があり、民主主義という方法をつくってきたはずだ。
 しかし政治家は権力を持つととたんに変わってしまう。そうした権利がどこに引っ張られているかを知るためにも「知る権利」がある。

 目の前で死んでいった子どもたち、それを見ながら何もできなかった悔しさ、このままでおくものかという気持ち、だから人に呼びかけて救援する。伝えようとする。また救援を続ける。広河さんの中で写真を撮ること、伝えること、救援することがまっすぐにつながっている。
 広河さんが40年以上も、さまざまな生きることの困難な場、人間の戦場を歩いて、人々に接して得た言葉の一つ一つが今の私たちの迷いに応えてくれる。監督の長谷川さんはそれをわかりやすく引き出してくれる。
 2015年12月19日(土)より新宿K's cinemaにて公開中、ほか全国順次。

 

【映画情報】
監督:長谷川三郎
撮影:山崎裕
音楽:青柳拓次
製作:守屋?生子
プロデューサー:橋本佳子
製作:ドキュメンタリー・ジャパン
配給:東風

『広河隆一 人間の戦場』公式サイト


 
                                                           


<「シネマDE憲法」関連情報>

「憲法を知ることは、リアルと普遍の間を何度でも行き来すること——『映画で学ぶ憲法』」志田陽子さん(武蔵野美術大学造形学部教授)



 

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